第55話 アムールさんとお別れです
「パパン!! ママン!!」
夕方、ゴブリン行軍を倒した勇者さまたちが、隣町に避難したわたしたちを迎えに来た。
傷だらけのアムールさんは、両親と感動の再会だ。
「アイビーちゃん。
あたしの両親を隣町まで連れて来てくれて、ありがとねぇん♡」
両親に抱きついていたアムールさんが、今度はわたしに抱きついてきた。
いや、抱きしめられて足が浮いたので、抱っこされたと言うべきかな?
さすが〔武闘家〕、筋力があるなぁ。
少し離れた所に立っていた勇者さまが「ただ、連れて来ただけだぜ? 大げさだな」と、ボソッと言うと、一緒に避難したおじいちゃんおばあちゃんたちが「お嬢ちゃんは、がんばってくれた」と言ってくれた。
「ワシらの方にもゴブリンが現れたんじゃ!」
「お嬢ちゃんが、がんばってくれた」
「しかも、連れとる犬には翼がある」
「神獣じゃ」
「みんなで、神の光を見た」
「あ~、わかった。わかった。
そっちにもゴブリンが出たのか」
大興奮で話すおじいちゃんおばあちゃん。
次々に話すから、勇者さまは対処するのがめんどくさいみたい。
勇者さまたちが頑張ったので、アムールさんの実家のある町は無傷ですんだ。
でも、早くに避難した人の半分以上が【ホブゴブリン】たちに殺されたので、町の若者が減った。
わたしたちは生き残った数名の若者と合流し、みんなで町に引き返した。
「復旧作業は王宮からの使者が行う予定だ。
俺たちはダンジョン攻略を急がねばならないから、これで失礼する」
「ねぇ……勇者さま……あたし、ここに残るわ。
若者が激減した町に、パパンとママンを置いてけない。
また、魔物が来ないか心配なの」
「そうだな。
アムールはここに残るといい」
「え!? ガイツ、良いの!?
せっかくの王宮からの新メンバーなのに、お別れするの?」
「いいんだ。エスメラルダ。
ゴブリンは絶滅させたが、家族を心配する気持ちもわかる」
「うわぁん!
ありがとう!! 勇者さま♡」
わたしたちはアムールさんを町に残して、ダンジョン攻略の拠点となる山小屋に戻った。
帰りは占い師のジージエおじいさんの魔法陣が使えるので、とても楽だった。
山小屋に戻ると、勇者さまは食堂の椅子に「ドカッ」と勢いよく座った。
そうとうお疲れなんだね。
「あ~、疲れた!
翼の模様が入ってるだけで〔神獣〕と呼ばれるなんて、めでたい犬だな」
よく見れば、勇者さまも服が破れている所があった。
激しい闘いだったに違いない。
やっぱ、ゴブリンの本体は多かったよね。
(そうだ、魔石!! 戦いの後は、山分けだ)
わたしはズボンの左右のポケットに手を入れた。
「勇者さま!
わたしとフェンが倒した魔石____」
「そっちもゴブリン出たんだったな。
俺らより、ずいぶん早く隣町に避難できたということは、そんなに数いなかったんだろ?
その、ポケットの中の魔石一個が、お前の取り分だ」
「いえ、敵は一匹ではありませんでした」
「雑用係のレベルで、何匹も倒せるわけが……そういえば……途中、雷が鳴ってたな。
それが、たまたまゴブリンに落ちたのか。
ラッキーだったな。部屋に帰れ」
ゴブリンの魔石40個を出そうとしたら、勇者さまに食堂から追い出されてしまった。
(……もらって良いの?)
振り向くと、占い師のジージエおじいさんさんが笑顔で顎を「クイクイ」と動かして、「早く部屋に戻ればいい」と合図してくれたので、素直に部屋に戻った。
「___せっかくアムールがいなくなったのに、雑用にも分けたら取り分が減るじゃねぇか」
「___あぁ、それで武闘家が残るのをあっさり許可したのね?
ガイツったら、相変わらず頭の回転が速いのね」




