第54話 ゴブリンのボス
「ゴブリンは合体なんかせん!」
「ありゃ【ホブゴブリン】じゃ!!」
「ゴブリンより、めちゃくちゃ強いぞ」
「わしらも、若いもんと一緒に早よ逃げときゃよかった」
「ここで死ぬんかのう……」
あちこちの草むらの中から、おじいちゃんおばあちゃんの声が聞こえた。
散り散りになって隠れても、アドバイスをくれる良い人たち。
そして、おじいちゃんおばあちゃんが、何かに気付いた。
「あのベスト……パン屋のお兄ちゃんの服じゃ」
「奥さんに刺繍してもらったと、言っとったな」
「首飾りは冒険者の兄ちゃんがつけっとたもんじゃないかの?」
「南の方の街のデザインじゃと説明してくれたのぅ……」
「まさか……あいつら……」
「「「「「待ち伏せして、先に避難した住民を殺しとる!!!!」」」」」
悲鳴に近い声で「もういい」「もういい」「逃げよう」という叫び声でいっぱいになった。
それを聞いて笑顔になる【ホブゴブリン】。
恐怖を煽るために、襲った町の人のモノを身に着けてるんだわ。
なんて性格の悪いヤツなの!!
「危ないから、その場から動かないでください!!」
武器を持つ魔物と戦うのは初めてだから緊張するけど……不思議と負ける気はしない。
マシロ王国の王妃様が呼び出した【巨大な黒い牛】の方が怖かった。
「身体強化!」
わたしは〔身体強化〕の魔法を唱えたあと、【ホブゴブリン】に向かって跳び上がった。
そして、跳んだ勢いを利用しながら、腰につけた〔シーガルスホルムの剣〕を引き抜いて切りかかる。
すると、割れんばかりの雷鳴が轟いて〔シーガルスホルムの剣〕に雷が落ちてきた。
(これを、そのまま叩き込む!!)
雷が暴れるように落ちて来たので、重さがあるように錯覚しながら、【ホブゴブリン】の頭に剣を振り下ろした。
こん棒で防御されても、構わない。
それなら、こん棒に叩き込むだけ!!
「ぎゃぁっわわわわわわ、わわわわわわわわわ!!!!!」
雷が【ホブゴブリン】の体を駆け巡る。
ガクガクと大きな体が揺れたあと、【ホブゴブリン】は黒焦げになって倒れた。
後には、濁った緑色の魔石が転がっていた。
「「「「「ふぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
「お嬢ちゃん! 強いのう!!」
「ワシは今、神の奇跡を見たぁ!!」
「さすが勇者パーティーのメンバーじゃ!!」
「一人でワシらの護衛を任されるわけじゃ!!」
「ありがたや、ありがたや……」
おじいちゃんおばあちゃんが、草むらから出てきて喜んだ。
待って!
まだ普通のゴブリンを全て倒してない……と思ったら、フェンが全て魔石に変えてコロコロ転がして遊びながらかき集めてた。
目が合うと、フェンは得意そうに走ってきてシッポをふった。
どうやら、ほめて欲しいみたい。
ええ、ほめます! ほめますとも!!
わたし一人じゃ、おじいちゃんおばあちゃんを守りながら戦うのは無理だもの。
「ありがとうフェン!!」
「ウォン!!」
フェンの首に抱きついてほめると、フェンは抱っこしやすいぐらい小さくなった。
「神獣じゃ! 神獣じゃ!」
「ほうじゃのぅ」
「翼が生えとったもんのぅ」
「初めて見たわい」
「ありがたや、ありがたや……」
みんながフェンを〔神獣〕だと拝み始めた。
いえいえ。
黒い翼をしているでしょう?
本当は、〔神獣〕じゃなくて【魔獣】です。
魔王に仕える【漆黒の羽交いフェンリル】って名前だそうです。
と、心に思いつつ、なんか言うに言えなかった。
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【ホブゴブリン】
HP 10000 攻撃力 3209
MP 1198 防御力 746
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