第52話 マジメにしているんですけどね
二日かけて、アムールさんの実家のある町に着いてすぐ、勇者さまが指示を出した。
「いいか、俺たちはゴブリンを迎え撃つ。
その間に、雑用係が町の人達を逃がすんだ」
なんと、今回はわたしも連れて来てもらえた。
誘導係なら危険は少ないだろうというのと、人手が足らないから。
いつも留守番だったのに、お役にたてる機会が出来て嬉しい。
「ギリギリの戦いだ。みんな気を付けて挑んでくれ!」
勇者さまがみんなに気合を入れて、みんなで「はい」と答えた。
ギリギリの戦い……でもきっと大丈夫。
勇者さまは強いんだもんね!
「勇者さま、〔正義の星屑〕でゴブリンを蹴散らしてください!!」
「おい、勝手に魔法を作るな。そんな魔法はねぇよ。
マジメにやれ!!」
怒られてしまった。
ちゃんと言ったと思ったけど、魔法の名前を間違えたかな?
あ!
勇者さまは〔正義の星屑〕なんかより、もっと強力な
魔法を使うんだわ!!
そうよ!
だから、弱い魔法を知らないのよ!!
この場にいることが誇らしい。
勇者パーティーのみんなと、仲間として一つの作戦に参加できる。
それは、“勇者さまのお役に立ちたい”という夢が、最上級で叶った証。
「アイビーちゃん。
あたしのパパンとママンをよろしくね♡」
「はい! 頑張ります!!」
わたしは高鳴る鼓動を抑え、気合を入れて返事した。
アムールさんに、わたしと同じ絶望なんか味わわせない。
必ず、アムールさんのお父ちゃんとお母ちゃんを隣の街に連れて行く。
そう強く決意した。
「さぁ! 行きましょう!!」
わたしは、町の裏の道で先頭に立った。
アムールさんの生まれた町は、草原に囲まれた平地にあった。
山の中にあるわたしの住む村と、ダンジョン攻略のための拠点となる山小屋近くの町とも違う。
でも、道は町の人が知っているし、ゴブリンの群れは勇者さまたちが倒す。
わたしは速やかに逃げられるよう、お手伝いするだけ。
フェンもいるし、不安はなかった。
(平地だから、早く逃げられそう)
ほとんどの人が、わたしたちが着くまでに避難していた。
なので、30人ぐらいの人数で移動となる。
一人では逃げられない高齢のおじいちゃんおばあちゃんや、お店が心配で最後まで決断できなかった人、ゴブリン行軍が進路を変えるのを願っていた人たち。
「こどもに誘導してもらうのか……」
「年寄りばかりで不安な旅じゃのう」
「勇者さまが何とかしてくれる」
「しかし、普通の魔物の群れとは違うぞ?」
「ワシら死ぬんかのう……」
お年寄りは移動に時間がかかるのに、不安のせいでさらに足取りが遅い。
この速度で逃げ切れるか心配になってきた。
「みなさん! 大丈夫です!!
うちの子が、勇者パーティーを連れて来て戦ってます!!」
「なんと、アムールが帰って来たのか!」
「そりゃ頼もしい!!」
「泣き虫じゃが、力だけは強かった」
「立派になったのう」
「えぇ、息子をもったのぅ」
息子?
「ちょっと待ってください。
アムールさんは女性ではないのですか?」
女性らしい話し方なので、女性だと思っていた。
驚いて質問すると、みんな「どっからどう見ても男じゃろう」と言う。
「まぁ、あなたはいい子ね。うちの子は男よ」
アムールさんのお母ちゃんに優しく肩を叩かれた。
間違いなく、アムールさんは男だそうだ。
「大丈夫かいの?」
「だまされやすい子じゃ」
「こんな子について行くんか」
「不安しかないのう」
「アムールが魔物を倒すのを祈るしかない」
ただ付き添うだけだと思ってたのに、なんか難しい。




