第50話 洗濯にはコツがあります
「アムールさん。落ち着いてください」
「こ、これが、落ち着いてなんかいられますか!!
マクラフィッシュは、通常一匹や二匹しか現れないのよ?
多くても四匹だわ。これは異常事態よ!!」
「大丈夫です。
ここでは、これが通常です」
わたしは洗濯ものを河原に置いた。
そして、アムールさんを落ち着かせるため、笑顔を意識して説明する。
「コツがあるんです」
気合を入れ、魔法を発動させた。
「ライト同時展開!」
空からおりてきた三十以上の光の柱が、マクラフィッシュを一匹ずつ照らす。
(見えた! マクラフィッシュの核!!)
「そこよ!!」
次の瞬間、光がマクラフィッシュの核を攻撃して、川にいたマクラフィッシュを全て魔石に変えた。
「…………え?」
「ほら! マクラフィッシュなんて、一突きです」
「ひ、ひと……一突き?
そう言われると、そんな気になるけど…………。
______今のを一突きって言うのかしら?」
わたしは、振り向いてアムールさんに笑顔で言った。
心配ないですよと。
「放っておくと、また魔物になりますから、魔石を回収してから洗濯です」
説明しながら、川に沈んだ魔石を回収していく。
フェンは、河原に落ちた魔石の回収をしてくれた。
呆然としていたアムールさんも、途中から手伝ってくれた。
二人で拾うと、やっぱ早いね。
あっという間に回収し終えた。
「アイビーちゃん!!
あなた、めちゃくちゃ強いのね!!
こんなこと出来る人、初めて見たわ!!」
「これは、勇者さまに教えてもらったんです」
「教えてもらって出来るものでもないわよ?
アイビーちゃんスゴイわ♡」
アムールさんに「ぎゅぅぅっ」と抱きしめられた。
人を褒めるのが上手い。
勇者さまなら、きっと余裕でやってのける何でもないことなのに、大げさに褒めてくれる。
それから、わたしたちは洗濯を終え、山小屋に戻った。
また、スライムがどこからかやってきて、山小屋の結界に弾かれていたので、アムールさんが〔かかと落とし〕で倒してくれた。
「もう、アイビーちゃん凄かったんだから♡」
夜ごはんの時、アムールさんがまた褒めてくれた。
「マクラフィッシュなんて、一突きよ!!
明日からのダンジョン攻略も、アイビーちゃんに期待しちゃうわ♡」
「おぉ!
アムール殿も、アイビーちゃんの魔物退治を見たんじゃのぅ。
わしの時はスライムじゃったが、実に手際が良かった」
「マシロ王国に行った時も、アイビーさん大活躍でした」
ジージエおじいさんとフィリアさんも褒めてくれた。
(これは、もしかして、もしかすると!
明日から、みんなと一緒にダンジョンに行けるんじゃないだろうか?)
ついに、冒険のお手伝いをする日が来たと、胸がドキドキした。
「ダンジョンにガキの雑用係なんか連れてかないぞ?」
勇者さまの返事は厳しいモノだった。
「マクラフィッシュやスライムを手際よく倒したからって、連れて行くわけないだろう」
行けると思ったのに。
やっぱり、わたしは、まだまだなんだ。
「ちょっと待って!
本当に凄かったんだから!!
ズドンッって仕留めていったのよ!?」
「ほうじゃほうじゃ!
アイビーちゃんの剣さばきは、わしをはるかに上回るものじゃ!!」
「アイビーさんは、足手まといになんかなりません!
立派な戦力です!!」
それでも、勇者さまの考えは変わらなかった。
「ダメだ」
「そうよ。
山小屋に来て強くなったかもしれないけど、雑用係ちゃんは、まだ若いんだから経験が足りないわ。
ダンジョンの最深部には、魔族の【キンタイ卿】がいるのよ?
魔物と違って、魔族は知能が高くて危険なんだから!
歴代の勇者たちも倒せない強敵なのに、危なすぎるわ」
エスメラルダさんも反対みたい。
もっとお役にたちたかったのに残念。
フェンは、あくびをしながら床をゴロゴロ転がって、興味なさそうだった。




