第41話 それでも王妃は笑う
「これは、どういうことですか! ミクマリ様!!
あなた様を魔法陣で召喚したのは、私です!!」
王妃様が、バルコニーの下の庭から叫んだ。
【ミクマリ卿】は、そっぽを向いた。
「わしは、甘いものをくれた〔小娘〕の言うことを聞く」
「な!? そんな!!
あなた様を召喚するために、三月もの間、〔水〕に生ごみを混ぜ続け、黒くなるまで腐らせたというのに!!」
うわぁ。
魔族召喚って、準備が大変なんだね。
そこまでしないと呼び出せないんだ。
「お、お前なぁ!
そもそも、そこが間違っとんじゃ!!
誰が、そんな〔汚い水〕を貰うて喜ぶよ?
〔菓子〕の方が、えぇに決まっとろう!!」
魔族から正論がきて、その場にいた全員が「そうだね」と納得した顔をした。
汚い水をもらって、嬉しい人なんかいない。
「嘘よ!
だって、古文書に書いてある通りにしたのに!!」
王妃様、取り乱してる。
きっと、古文書の解読にも時間を費やしたんだろうな。
「その〔古文書〕が間違うとんじゃ。
そもそも、わしは〔水をキレイにする能力〕を持っとる。
地域によっては、わしを〔神〕と崇める所もあるんじゃで?
水を浄化するのは、汚い水が好物じゃけい……じゃぁない!
〔キレイな水辺〕が好きじゃけいじゃ!!」
ふらふらと、よろめく王妃様。
魔導書を解読し、三ヵ月も準備したのに失敗に終わるとなると、確かにショックだよね。
王妃様はドレスが汚れるのも気にせず、地面に伏せた。
「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!」
指でガリガリ、ガリガリ土を引っ搔いてる。
黒い手袋をしているとはいえ、爪は大丈夫かなと思うほどガリガリ掻いてる。
そして、王妃様は両手で草を握りしめ、汗をかいた顔を無理やり笑顔にして言った。
「これも、想定内よ。次の手に移るだけ……」
静かに立ち上がる王妃様。
手や膝についた土が、パラパラと落ちる。
「古文書には、【ミクマリ卿】は〔天邪鬼〕な性格とあった。
『守ってほしい』と言ったときは守らず、『倒してほしい』と言ったときは倒さない。
でも、時々、願いを叶えてくれる______。
ここ300年ぐらい、誰も【ミクマリ卿】を呼び出せた者はいなかったから、久しぶりの召喚を理由に願いを叶えてくれると思ったが……仕方ない」
王妃様の言葉に反応して、黒いローブを着た魔法使い達が移動し始めた。
【ミクマリ卿】を呼び出すための魔法陣から少し離れた所に、もう一つの魔法陣。
「出でよ! 【アッフェクトゥス・オーロックス】!!」
魔法陣が光る。
黒い煙が魔法陣から溢れ出し、煙の中から巨大な〔黒い牛〕が現れた。
〔大きいスライム〕より、はるかに大きい真っ黒の体。
森の木より大きい角。
あふれ出る瘴気。
空気がビリビリするほどの存在感。
ここに立っているだけで、足が震える。
「なんだ! この巨大な魔物は!!」
「木よりも大きいのか!!」
「俺たちなんか、踏まれて終わりだ!!」
「角が、コイツの強さを物語っている!!」
「もう、〔死〕しか見えない!!!!」
騎士の人達が、驚きながらも、震える手で剣をかまえる。
王妃様は、ぎゅっと手を下の方で握りしめた。
「私が乗っ取る城が壊れるから、この事態は避けたかったが……〔ソラル王子の暗殺〕は必ず成し遂げなければならない!!
行け!
【アッフェクトゥス・オーロックス】!!
城が壊れても構わない!
全て! 全て、踏みつぶしてしまえ!!!!」
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【アッフェクトゥス・オーロックス】
HP 120000 攻撃力 11020
MP 1450 防御力 3460
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