第40話 思わぬ事態
ソラル王子は強かった。
体当たりしようとする〔巨大なスライム〕をかわし、確実にダメージを与えていった。
そして、〔巨大なスライム〕が、ほんの少し光って全回復しようとするところを、私が〔グンラウグの剣〕で攻撃して邪魔をする。
〔巨大なスライム〕は、王子とわたしが二回ずつ切りつけただけで倒せた。
(王子さまがいると違うな)
初めて戦った時は、ものすごく時間がかかったのがウソのようだった。
慣れない〔かかとの高い靴〕で思うように動けなかったけど、王子のおかげで早く倒せた。
すぐに〔巨大なスライム〕の魔石を拾い、ソラル王子に渡す。
「……え?………………僕がもらっていいの?」
何を驚いているのだろう?
王子のおかげで早く倒せたんだし、王子に渡すのは普通だよね?
「はい。
瘴気を浴びて、また魔物になったら困るし持っててください」
もし、山分けにするにしても、この場合、魔石をどうするかは王族の人が判断するよね、きっと。
わたしは早くフェンを助けに行きたいから、今は魔石の山分けなんてどうでもいい。
(まだスライムがたくさんいる)
舞踏会場にいる人はずいぶん減った。
これなら、やれる!
「同時展開! ライト!!」
呪文を唱えると、30本以上の〔光の柱〕がスライムたちに降り注いだ。
スライムの核が見える。
「同時に一突きよ!!」
光が細くなり、スライムたちの核を突き刺した。
コロコロコロコロと魔石に変わるスライムたち。
マクラフィッシュを倒すために覚えた技が役に立った。
「この魔法はいったい……」
ソラル王子が驚いていた。
そうでしょう。そうでしょう。
わたしも、最近知ったんだもの。
「これは、勇者さまの得意技です」
胸を張って教えてあげた。
勇者さまは、スゴイのよ!
「_____勇者ガイツは、こんなことも出来るのか。
いや、でも、これ〔勇者〕の技だよね?
それって、つまり君は____________」
「さぁ!
みんなでフェンの所に行きましょう!!」
舞踏会場のスライムを全て倒したので、ソラル王子と騎士のひとたち、そしてフィリアさんとバルコニーへ戻った。
「ウォオ~ン!」
そこでは、まだフェンが【ミクマリ卿】と空で激しく戦っていた。
ぶつかり合う度に、空気を伝って振動がくる。
これが、魔物同士の戦い!
「おぉ、漆黒の!
お主の飼い主が戻って来たわ!!
もう、このくらいで良かろうよ?」
そう言って【ミクマリ卿】が、わたしの前に降りて来た。
「おい、わしにもくれい」
目を閉じ、左下を向いて「しょうがないな」といった雰囲気で、【ミクマリ卿】が何かを要求してきた。
右手を差し出してきて、「ほれほれ」と指だけ動かして催促している。
「漆黒の羽交いと出会ったときに、何かやったんじゃろ?」
上機嫌で催促するから、すぐに食べ物だとわかった。
「お肉ですか?
今、持ってないのでパーティー会場から持って___」
「違う違う! 甘いモノじゃ」
「〔ウイロウ〕ですか? どうぞ」
わたしは左手首に巻き付けていた〔包み紙〕を外し、【ミクマリ卿】に渡した。
それには〔ウイロウ〕が包まれていた。
王族が開く舞踏会。
きっとこれから先、一生縁がない。
だから、一生分たくさん食べる気だったわたしは、食べ疲れた時〔ウイロウ〕を食べて回復をしながら限界以上に食べるつもりで、手首に〔ウイロウ〕を隠し持っていたのだ。
「うぬ。爽やかな甘さじゃ」
満足そうに〔ウイロウ〕をほおばる【ミクマリ卿】。
「マシロ王国の〔もみじ〕のお菓子もおいしいが、それとはまた別のおいしさじゃ」
【ミクマリ卿】の後ろでは「それ僕の」と言いたげなフェンが、おすわりして、右腕をちょいちょいと動かしていた。
***
魔族の少女が近くに来て緊張が走る中、一人だけ別の事を考えている者がいた。
(……魔石を贈られるって、こんなにドキドキするのか)
マシロ王国では、自分が倒した魔物の魔石を渡して愛を誓うという行為がある。
普通は男性から女性に送るものなのだが、アイビーから魔石をもらったソラル王子の胸は高鳴りっぱなしだった。
自分も闘いに参加しているので、愛を誓う行為かどうかは微妙なところなのに、ドキドキしすぎて、そのことに気づいてない。
(あまりに自然に渡されるから、魔石を受け取ってしまった。
それって、つまり_________)
みんなが青い顔をしている中、ソラル王子だけ顔が真っ赤だった。




