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第39話 手を貸してください


「良い飼い主を見つけたのぅ」



 楽しそうに笑う【ミクマリ卿】。

 人差し指をクルクル回して、大地から空にのびる水柱をあやつり、こちらに向けてきた。

 それを、フェンがさえぎる。



「ウォンウォン!」


「小娘、お主に‟逃げろ“と言うとるぞ?」



 通訳してくれなくったって、わたしにもわかる。

 いちいち【ミクマリ卿】が、フェンの言葉を訳してくるのが腹立たしい。



「わかったわ、フェン!

 わたしが一緒なだけではダメなのね?

 騎士団の人か、誰かを応援に連れてくる!!

 待ってて!!」



 幼いころ、村が魔物に襲われた時の事を思い出す。

 両親のいない世界で、一人だけで生きていくことになるかもしれない不安。

 じゃぁ、一緒に殺されるなら安心かと考えても、魔物の爪で無惨むざんに引き裂かれて死ぬのを想像すると、怖くてたまらなかった。

 フェンに、そんな思いをさせたくない。



(ただ一緒に戦って、二人とも死ぬんじゃダメだ。

 どちらか片方が生き延びるのもダメ。

 あの子を一人になんかするもんか!)



 舞踏会場に戻ると、いろんな所に散らばっているスライムから逃げ惑う人でいっぱいだった。

 フィリアさんが、みんなを外へ誘導してるけど、混乱して聞いてない人もたくさんいた。



「すみません!

 庭に魔族が出たので、手を貸してください!!」



 腰から剣をぶら下げている、騎士と思われる人に声をかけた。



「お嬢さん! 今は、それどころではない!!

 スライムが合体し始めているんだ!!」



 見ると、スライムは人を襲うだけでなく、合体しようと重なり合っていた。



「わかりました。

 〔()()()()()()()〕を倒したら、手を貸してください」


「え? ()()?」



 わたしは左手で、ドレスのそでまくり上げた。

 右腕には〔グンラウグのつるぎ〕を装備してある。

 腕を「スッ」と振って、剣を回転させ、右手で握る。



「き、君、ドレスの中に隠し武器を!?」


「〔巨大なスライム〕と戦うのは、三回目です。

 わたしも加勢かせいします! 〔身体強化〕!!」



 わたしは自分の体に〔身体強化〕の呪文を唱えた。

 騎士の人が何に驚いているのか、いまいちよくわからない。

 考えるのは、あとだ!



「さぁ! あなたも!!

 〔巨大なスライム〕の体当たりに備えて〔身体強化〕を!!」



 ソラル王子にも〔身体強化〕を唱えながら騎士の人に言うと、彼は戸惑っていた。




「____いや、あれは、スライムが巨大なだけじゃなくて【ユニオンスライム】という種類の…………」



 何をブツブツ言っているのだろう?



「もしかして!

〔身体強化〕の魔法を使えないですか!?」


「あ? あ、あぁ……すまない。

 確かに私は〔身体強化〕を使えない。

 けど、あれは【ユニオンスライム】という強い魔物____」


「では、フィリアさんに〔身体強化〕をかけてもらってください!

 フィリアさんの〔身体強化〕は強力です!!」


「わかった!」



 騎士の人が戻って来るまで、〔巨大なスライム〕をほったらかしというわけにもいかない。

 かといって、これだけ人がいて〔正義の光(ジャスティス・ライト)〕を唱えるのは危ない。

 他の人にも当たりそうだ。騎士の人が来るまで、時間をかせごう。

 わたしは剣をかまえた。



「アイビー殿、僕も一緒に戦おう!」



 王子がそう言って、舞踏会場に飾られている鎧から剣を取った。



「はい! よろしくお願いします!!

 攻撃をしても、すぐ全回復するので、回復魔法を唱える瞬間に再び攻撃して邪魔するのがポイントです」


「わかった。

 回復魔法を唱える動作が僕にはわからないから、僕が先に攻撃しよう」



 ソラル王子が剣をかまえた。


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