第38話 犬じゃなかった
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やる気が出ます!!
‟しっこく“の、‟はがい”?
何それ?
フェンは空を駆け、魔族の元に飛んで行った。
(犬が、空を走ってる!!)
信じられない光景だった。
でも、それより______。
「あの子、魔族と戦う気だわ!」
止めようと手をのばしたとき、フェンが翼を広げた。
〔翼の模様〕じゃなくて、〔本物の翼〕だったの!?
「アイビー殿! あの魔獣は!?」
ソラル王子に聞かれても、わたしには何がなんだかわからなかった。
空に浮かんでいる【ミクマリ卿】が、ニヤリと笑う。
「そうか。
お主は、知らんのじゃのぅ。
こ奴は、その昔、魔王様と共に魔族を統一した【漆黒の羽交フェンリル】じゃ」
「ヴゥ……ウォ~ン!!」
フェンが吠えると、その体は大きくなり、黒い翼の生えた魔獣になった。
今なら、【フェンリル】と言われれば、「そうだね」と思う。
そういえば、この子を拾って来た時、おじいさんが「犬じゃない、フェンリルだ」って言ってた。
(うちのワンコが、銀色狼になった! しかも、翼が生えてる!!)
フェンが、【ミクマリ卿】の左肩に噛みつく。
【ミクマリ卿】は、それをはがして魔法で大量の水をフェンに当てる。
余裕で飲み干すフェン。
「さすが勇者パーティー! ペットが【フェンリル】だとは!!」
ソラル王子が、とても歓心した。
「“勇者パーティー”!? なんてこと!
ダンジョン攻略が忙しくて来ないと思ったのに!!
思わぬ邪魔が入ったわ!!
小娘! 貴様は何者だ!?」
王妃様は怒りをあらわにし
黒い羽を何枚も重ねて出来ている扇子を握りしめ、「バキッ」と折ってしまった。
怖い。
「うわぁぁん!
フェンは、ウイロウ好きの、小さくてかわいいワンちゃんだし、わたしはたんなる雑用です!!」
もう、わけがわからない。
でも、王妃様の怒りは止まらない!
「____アレが、かわいいワンちゃん?
ふんっ!
勇者パーティーの感覚のイカレ具合は、半端ないわね!!」
「あんなに、でっかくなるのは、今、初めて知ったんです!」
「まぁ、いいわ。
邪魔が入るのは、想定済みよ!!」
王妃様が言うと、舞踏会の会場からたくさんの悲鳴が聞こえた。
「イヤだ! 魔物よ!!」
「スライムだわ!!」
「なんで、こんなにたくさん!」
「逃げろ! 逃げるんだ!!」
「きゃぁ! 気持ち悪い!!」
「あっはっはっはっは!
貴族連中には、スライムで充分よ!!
品の良いかれらは、大混乱。
もう、舞踏会どころではないわ!!」
王妃様は上機嫌で、折れた扇子を指先で弄び、人差し指でポロッと地面に落とした。
「うふふふふふふ。見てなさい。
あふれたスライムは、そのうち融合して【ユニオンスライム】になるのよ。
そうしたら、死人が続出ね。
彼らの死体に紛らわせて、ソラル王子の死体も置きましょう。
良かったわね。
死ぬのは、あなた一人じゃないのよ。道連れがたくさんいるわ!!」
無邪気に笑って、落とした扇子を右足で踏みつける王妃。
【ユニオンスライム】。
こんな人の多い所で、そんなものが暴れたら大変!
「ウォン!!」
フェンが、「行け!」と言っているように聞こえた。
でも、そういうわけにはいかない。
「置いて行かない!
今日、出会った〔なんだかイジワルな人たち〕より、フェンの方が大事!!
わたしも一緒に戦う!!」
「そうは言っても、アイビー殿は〔雑用係〕だろう!?
逃げるんだ!!」
ソラル王子が、わたしを引き留める。
行かせてほしい。
昨日からフェンは、わたしの家族だ。
一緒に過ごした時間なんて関係ない。
「あははははは!
聞いたか? 漆黒の!
あの小娘、お前と一緒に、わしに立ち向かうらしいぞ?」




