第37話 王妃の陰謀
「ねぇ、君は魔法とか使えるの?
いつも、どうやって魔物を倒しているのかな?」
ソラル王子が、次々と質問してくる。
興味を持ってくれるのは嬉しいんだけど、お、踊りながら、会話って、無理!
エスメラルダさんは「相手と楽しく揺れていればいいのよ」って、言ってた。
そうは言っても、踊りについていくので精一杯。
もう、踊りなんかわからない。
ソラル王子が行く方向に、何とかついて行っているだけ。
「す、すみません。
ついていくのがやっとで、会話はちょっと______」
「フフフ。
踊れているフリをすればいいのに、アイビー殿はマジメだね」
楽しそうな王子さま。
「ここでは、また周りがゴチャゴチャいうだろうし……バルコニーで話を聞かせて!」
バルコニーに移動したら、下の暗闇でブツブツ呪文を唱えている声がした。
「「「……我の願いを聞きとげまえ……我の願いを聞きとげまえ……我の______」」」
低い男性の声。
何人で唱えているんだろう?
小さい声が重なり合って、とっても不気味。
ずっと「願いを聞きとげまえ」って言ってる。
いったい、どんな願い事があるんだろう?
「____警備の者は、何をやっているんだ!」
王子さまが、小さく不満を呟いた。
「すまない、アイビー殿。
ここは危険そうだから、中に______」
「あ~ぁ、ら!
ちょうどいい所に、ソラルが来たわ!!」
バルコニーの下の庭から、女性の声。
王子さまを呼び捨てにしてる。
「母上!!」
は、母上!?
王子さまのお母ちゃんって、かなり個性的。
黒いドレスに黒いベール。
どす黒い口紅をつけていて、おとぎ話に出てくる魔女みたい。
「ついに本性を現したか!!」
「あ~ぁ、ら!
酷い言い方ねぇ、ソラル。
でも、そうねぇ、もう隠す必要はないわ。
だって、あなたは今日ここで死ぬのだもの!!」
王妃様が、黒い羽を何枚も重ねて出来ている扇子を広げた。
「さぁ!
魔王直属の配下が一人【ミクマリ卿】よ!!
我が願いを聞きとげたまえ!!
ソラル王子に、〔死〕を!!!!!!」
下で、魔法陣が光り始めた。
その光で、黒いローブを着た魔法使いが、魔法陣を取り囲むよう立っているのが確認できた。
「“魔王直属”!?
そんな大物が、現れるとでも?」
王子さまは「そんなこと出来るわけがない」と言った。
でも、王妃様は余裕の笑みを浮かべている。
「今宵は満月!
様々な欲望が満ちるとき。
なぜ、舞踏会を今日にしたと思う?
貴様を殺すためだ!!」
魔法陣から、光の柱が現れ、ものすごい魔力が空へと溢れだした。
「あはははははははははははは!
これで、この国は私たち親子のモノ!!」
光の柱が、さらに強く光り、何も見えなくなった。
ようやく目を開けられるようになったとき、空に、一人の女の子がいた。
「わしを呼んだのは、お前か?
黒ずくめの女」
長い長い、水色の髪をツインテールにしてもまだ長いので、もう二回髪を緩めて縛ってる。
スラリと伸びた足が元気いっぱいで、とても魔王の配下には見えなかった。
「はい。わたくしめにございます。【ミクマリ】様。
あなたのお好きな、にごった水をご用意いたしました」
(どうしよう!?
こ、このままでは、王妃様の陰謀でソラル王子が殺されてしまう!!)
そう思ったとき、わたしのドレスの裾が揺れた。
中から、シュッと何かが飛び出る。
「ウォン!!」
足が夜風に当たって涼しいと思ったとき、目の前には〔フェン〕がいた。
「フェン! ついて来てたの!?」
ドレスに隠れてついて来てたのに驚いたけど、驚いたのは、わたしだけじゃなかった。
召喚された魔族も驚いていた。
「貴様! 漆黒の羽交か!!」




