第3話 魔石は回収しないといけないようです
「……やるしかない」
襲ってくるマクラフィッシュに、剣を振り上げる。
午前中に、たくさん切ったので腕が重い。
それでも必死に切ったマクラフィッシュは、次々と魔石に変わっていった。
「11、12、13――――――――……あれ?」
十匹以上切ったころ、違和感を覚えた。
「午前中に来たとき倒したマクラフィッシュの魔石が、無い……」
川に落ちたのもたくさんある。
けど、全く落ちてないというのは、おかしい。
嫌な予感がした。
「まさか……魔石って、回収しないと、また、魔物になるの?」
魔石は、お金に変えるために拾って帰るのだと思ってた。
それだけじゃないのね!
「はぐぁ、ががが!」
衝撃の事実にショックを受けた隙をつかれ、マクラフィッシュが三匹ほど顎に連続でぶつかった。
致命傷ではないけど、泣きそう。
「午前中に倒したのに、また倒さないといけないのね」
やけくそ気味に剣を振って、次々とマクラフィッシュを切り捨てる。
ここで、気が付いた。
(水を汲めれば良いのだから、全部倒さなくてもよくない?)
そうよ!
攻撃力の低いマクラフィッシュは、放っておいて水を汲めばいいのよ!!
わたしは剣を収め、河原に転がっている桶を掴み、水を汲んだ。
その間もマクラフィッシュは、次々と飛んでくる。
「あだだだだだだだだだだだだだだだっ」
ちょっと痛いけど、汲めないこともない。
このまま、山小屋まで――――――――――。
「バッシャーン!」
水が、こぼれた。
いけると思った。
確かに、わたしはなんとかなりそうだった。
でも、桶に次々と体当たりされると、ダメだった。
桶はわたしの手から離れて、再び河原に転がった。
「面倒だけど、倒すしかない!」
諦めて、先にマクラフィッシュを倒すことにした。
「……ぜぇ、はぁ。……ぜぇ、っはぁぁ」
午前でかなり疲れていたのもあって、午後の方が全部倒すのに時間がかかった。
また復活されては困る。
水を汲む前に、できるだけ多くの魔石を拾った。
川の中も、拾えそうな所は全部拾った。
「め、めんどくさい……」
石の間に入り込んでいるのもある。
取ろうとしたら、川に流されるのもあってイライラした。
魔石を拾い終わり、水を汲んで山小屋に帰れば、勇者さまたちが帰って来た。
まだ日は沈んでないけど、夜になると魔物が活発になるから、早めに帰ることにしたみたい。
「おぉ!
水を運んでたのか。偉いぞ……ってこれだけか?」
「すみません。勇者さま。
マクラフィッシュを倒すのに時間がかかりました」
「ははは!
マクラフィッシュみたいな弱いモンスターに手こずっていては、先が思いやられるぞ!!
俺なら、あんなの一突きさ」
勇者さまが、剣で突き刺すポーズをとった。
スゴイな。
三十匹以上のマクラフィッシュも、勇者さまなら一突きか。
やはり、勇者さまは素晴らしい!
「ま、水は汲めなかったら、魔法で出せばいいから気にすんな。
でも、ダンジョン攻略が進むと、俺たちも疲れて魔法が使えなくなる時もあるから、マクラフィッシュに手こずらないようになってくれよ?」
「はい! がんばります!!」
勇者さまが、何気なく皮の袋をテーブルに置いた。
そして、袋を開けると、魔石が数個出てきた。
マクラフィッシュの魔石より大きい。
「今日の分け前を決めるぞ」
勇者パーティーメンバーが、テーブルに集まる。
わたしも、マクラフィッシュの魔石を出そうとポケットに手を入れたとき、勇者さまに止められた。
「あぁ、雑用係は無しだ。
これは、俺たちが命がけで手に入れたものだ。
ほしけりゃ、お前もモンスターを倒せ」
「はい」
勇者さまに冷たく言われたので、「はい」と言うしかなかった。
わたしは戸惑った。
(……これ、もらっていいの?)
わたしの左右のズボンのポケットに、マクラフィッシュの魔石が三十個以上ある。
弱い魔物の魔石は価値が低いのかもしれない。
それでも、わたしは嬉しかった。
今日のがんばりを認めてもらえた気がした。
おとうちゃん、おかあちゃん!
冷たく突き放した言い方だけど、勇者さまは優しいよ!!
マクラフィッシュ
HP 10 攻撃力 0,2
MP 2 防御力 4
〔特技 体当たり/噛みつく〕




