第2話 ついに始まった、ワクワクのお手伝い初日
雑用係に応募するとき、ギルドの人は「山小屋でのお手伝い」と説明してくれた。
山小屋。
これ、山小屋?
ウチより大きい。
山小屋が三階まであるとは、思ってなかった。
貴族向けの、立派な別荘じゃない?
周りには、三階建ての山小屋よりも大きい木がたくさんある。
こんなに立派な建物も、しっかり隠せそう。
きっと、空を飛ぶ魔物からも見つけにくいに違いない。
「スゴイだろ?
一級建築士が建てたから、結界も張ってあるんだぜ!」
一級建築士のことも、ギルドで事前に聞いていた。
こんなに立派な山小屋を建てたうえに、結界まで!
驚きで、思わず飛び上がってしまった。
「一級建築士って、結界も張れるんですね!
これなら、夜も安心です」
「だろ? そうだろ?」
勇者さまが得意げにうなずいた。
「レベルの低いザコをはじいてくれるんだぜ。
強い魔物は普通に入ってこれるけど、この辺りは弱い魔物しか出ないから心配はない」
事前に調べてから、この場所に山小屋を建てたみたい。
ダンジョン攻略には時間がかかる。
中には、強い魔物がいっぱいいるものね。
近くに拠点を作って、ダンジョンを集中的に攻略して無効化するのも、勇者の務め。そのサポートを国がする。
勇者さまって、スゴイ存在だなと思った。
「昨日までは、近くの村まで戻っていたからな。
今日から山小屋使えるし、疲れが半減しそうだぜ!
じゃ、俺たち行って来るから、のんびり留守番しててくれ!!」
そう言って、勇者さまは仲間と一緒にダンジョンに向かった。
山小屋には、わたし一人。
「わ、わ、わぁ!」
思わず歓声をあげた。
留守番スタートよ!!
「夢にまで見た、勇者さまのお手伝い!!
がんばるぞぉ!」
初日なので、そうじは必要ない。
パーティーメンバーに料理好きな人がいるそうなので、料理は作らなくていい。
洗濯物もまだないし……そうだ!
水を汲もう!!
「お風呂を沸かせるぐらい水を汲んだら、きっとみんな喜ぶわ!!」
お風呂で、ダンジョン攻略の疲れをとってもらおう!!
時間はたっぷりある。
この辺りは弱い魔物しか出ないらしいし、やれると思う。
わたしは、さっそく桶を持って、川を探した。
フラフラ歩き回っていると、北東に川があった。
「よぉっし! 汲むぞぉ!!」
両手に持った桶を、川に入れる。
「バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!」
魚の魔物が、一斉に川から飛び上がった。
三十匹以上はいたと思う。
「〔マクラフィッシュ〕だわ!!」
確かに弱い魔物だけれども!
ちょっと多くない?
とりあえず、桶をひっこめた。
桶を川に入れただけで、マクラフィッシュは興奮して攻撃をしかけてきた。
「こうなりゃ、切るしかない! はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マクラフィッシュは枕の形に似ているから、その名がついた。
攻撃力は枕ぐらい。
顔面にくらうと痛いけど、体を攻撃されると痛くはない。
中が小豆の枕じゃなくて、ワタ。そんな感じ。
何匹か取り逃がしても、そんなにダメージは受けない。
護身用に持ってきていた〔女性用の剣〕で、ひたすら切った。
全てはお風呂のため!
切られたマクラフィッシュは〔魔石〕に変化していった。
〔魔石〕は回収するとお金になるけど、拾う余裕はない。
切って切って切りまくり、ついに川の水を汲めるようになった。
「……はぁ。はぁ。
予想外に数が多くて、時間がかかってしまった」
お昼近くになったけど、何とか桶二杯分を山小屋に運ぶことができた。
二杯じゃ、まだ足りない。
「お昼ご飯を食べたら、どんどん、水を汲むぞ!!」
マクラフィッシュは倒したので、あとは水を運ぶだけ。
わたしは、お昼ご飯を食べた後、また川に向かった。
そして、両手に持った桶を、川に入れる。
「バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!」
たくさんのマクラフィッシュが、川から飛び上がった。
「ウソでしょ? またなの?」




