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そのころと、そのころのそのころ


「ガルルルルルルルルルルル………」



 輝く銀色の毛の魔物。

 その体は犬に似ているが、犬とは全く違う大きさだった。

 大きい。

 【ユニオンスライム】と同じか、それ以上と思うほどの大きさ。

 一階建ての普通の家には入りきらない高さ。



「……銀色の狼!

 まさか、……【フェンリル】が……フロアボスだとは…………ぐはっ!」


「ガイツ!

 もうしゃべらないで!!

 先にエリクサーを飲んで!!」


「ダメじゃ。

 ワシの占いでは、このまま戦えばパーティーは全滅とある」


「早く!

 私の防御結界は長くは持ちません!!」



 魔物が何度も体当たりするから、フィリアの防御結界は今にも崩れ落ちそうだった。



「バサッッ」



 【フェンリル】が羽ばたいた。

 黒い羽が舞う。

 ヒラヒラと落ちてくる羽は、時の流れが違うのかと思うぐらいゆっくりだった。



「ウソじゃろぅ!?

 【フェンリル】に翼があるなんて、詐欺じゃ!!」


「どいて! 爆破エクスプロージョン!!」



 驚いている占い師を押しのけ、魔法使いのエスメラルダが【フェンリル】のいる辺りの天井を爆破した。

 大きく崩れ落ちてくる天井。

 【フェンリル】は口を大きく開け、落ちてきた瓦礫を飲み込んだ。



「イヤだ!

 あいつ、ホント何でも食べちゃう!!」



 エスメラルダは、この戦闘で何の役にも立たなかった。

 魔法をはなてば、全て【フェンリル】に食べられてしまう。

 攻撃魔法が一切いっさい効かない。



「エスメラルダよ! 早く逃げるんじゃ!!」



 占い師のジージエにうながされて、全員なんとか撤退した。

 ダンジョンの出口にたどり着いた時、ジージエは勇者に言った。



「前から言うとるが、勇者殿とエスメラルダしか攻撃できんのは限界じゃろう。

 フィリアは補助魔法。

 ワシは占いで予知。

 せめて、もう一人、戦闘力がいる」



 勇者は渋い顔をした。


 攻撃できる人物を増やしたくなかった。

 もし、新メンバーが自分より活躍したら?

 きっと勇者の称号を奪われてしまう。

 それが嫌で、この編制にした。



(勇者は金になるんだぞ!

 まだ、この地位を奪われたくない)



「勇者殿。

 お前さんが心配しとることも、何となくわかる。

 勇者の座を奪われるのが嫌なんじゃろ?」



 まさに、今、考えていたことを当てられて、勇者は何も言い返せなかった。



「アイビーちゃんはどうかの?

 あの子は強くなっとる」


「待て待て、じいさん。

 あいつがここに来て何日だと思うよ?

 一か月も立ってないのに、“強く”なんてたかが知れてる。

 戦力が足りないという話をしているのに、お荷物な奴を増やしてどうすんだよ。

 ガキをかばいながらなんて戦えないぜ」


「勇者殿が知らないだけじゃ」



 占い師が、あまりにマジメに話すので、ついに勇者はおれた。



「そこまで言われちゃ仕方がない。

 わかったぜ、じいさん。

 王都から助っ人を頼む。それで、良いだろ?」



 王都から助っ人を頼めば、一時的でいい。

 ダンジョン攻略が終わったらサヨナラだし、給料は国から出る。

 助っ人を頼むのが、勇者ガイツの最大の譲歩だった。



「……うむ。

 まぁ、それでもえぇが、ワシはアイビーちゃんの方がえぇと思うぞ?」



 占い師のこの言葉を、勇者は“嫌味”と取った。

 散々、言って来た攻撃メンバーの補充を無視し続けた不満。


 勇者は、アイビーのレベルが急激に上がっていることも、自分と同じ魔法を使えるようになったことも知らなかった。




***




「ウォンッ!」



 町からの帰りの山道やまみちで、犬を見つけた。

 ものすごくシッポを振って、近くに来た。

 荷車を置いて、犬をでる。



(お腹がすいているのかな?)



「そういえば、お肉の串焼きを食べかけだった。

 これ食べる?」


「ウォンッ♪」



 すぐに食べきってしまった。

 よほどお腹がすいてたのね。



「クンクン」



 犬がわたしのポケットをぎ始めた。

 そこには、もしものためのウイロウがある。



「……食べる?」



 差し出すと、犬は喜んで食べた。

 食べてる間、犬を撫でて気づいた。

 銀色の元気な毛は、太陽の光のせいか輝いているように見える。

 背中の、黒い模様が個性的。



「うわぁ!

 背中に翼みたいな模様がある。かわいい~!!」


この作品はフィクションです。

ワンちゃんに「ういろう」は、あげない方がいいようです。

犬にとって、糖分が多すぎるようです。

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