第32話 エスメラルダさんは勇者さまが好き
町からの帰り道、肉とウイロウをあげたら、犬が山小屋までついてきた。
ウイロウが大好きなようなので、前回買い置きしたのも二個あげた。
あげたら立ち去るかなと思っていたのに、立ち去らない。
「ここにいたいの?」
「ウォンッ!」
かわいい。
こんなになついてくれるなんて嬉しすぎる。
人の言葉がわかるのかなと思うぐらい、いいタイミングで返事をするし、この子、賢いんじゃないかな?
こんなに賢そうなんだもの。
子犬じゃなくて、きっと小型犬なんだわ。
愛嬌があって、かわいい上に、賢そうな顔をしている。
野良犬と思えないほど、キレイで輝しいちょっぴり長めの銀の毛。
そして、背中には、翼がはえているように見える黒い模様。
(羽のような模様が、まるで〔神の使い〕のようよ!
天使じゃないのかなって、思っちゃう!!)
見れば見るほど、一緒にいたくなる。
「勇者さまは、お前を飼っても良いって言ってくれるかな?」
「ウォンッ!」
ウイロウを追加であげていたら、時間がたってしまった。
急いで買って来たポーションと聖水を片付ける。
「時間があるときに、やぶれた勇者さまのパンツを縫おうと思っていたのに、いっつも出来ない。
これからも、出来そうにないし……捨てようかな」
予備のパンツもあるし、もう〔マクラフィッシュ〕に食いちぎられる心配もない。
暖炉で燃やそうかなと思っていたら、エスメラルダさんが森から現れた。
「…………今の話……聞こえたわ」
怒られる!!
仕事を投げ出すなんて、以ての外だよね。
だって、わたし〔雑用係〕だもの。
でも、なんでこんな早くにエスメラルダさんが?
ダンジョン攻略から戻るには早すぎる。
「不思議そうな顔ね。
フロアボスが強すぎたから、早めに撤退したのよ」
「す、すみません!
そうでしたか。なるべく早く縫いま______」
「あたしが縫ってあげましょうか?」
「……え?」
怒られると思ったのに、エスメラルダさんは笑顔で代わりに縫ってくれると言った。
怖い。
これは何かの罠か、雑用係としての何かを試されているのかな?
「でも、エスメラルダさんはダンジョン攻略で疲れた上に、みんなのごはんまで作ってくれるから、負担をかけるわけには______」
「ガイツに関することなら、何の負担にもならないわ。
だから、あたしに頂戴」
こ、怖い。
笑顔が怖い。
でも、もしかして……。
「エスメラルダさんは、勇者さまのことが好きなんですか?」
「……だったら、何か問題でも?」
全ての謎が解けた。
不機嫌な返事をされたけど、心が晴れやかになる。
そうだ。
そうだったんだ。
だから、わたしのごはんに具が入らなくなったのね!
エスメラルダさんは、嫉妬してたんだ!!
わたしは今まで、畑と害獣と魔物のことでしか悩んだことがなかった。
恋愛という、キラキラした世界に巻き込まれる日が来るなんて、とても新鮮だわ!
「エスメラルダさんと勇者さまなら、お似合いです!!」
ステキ!
なんてステキなカップルなの!!
想像しただけで、大興奮!
美男美女な上に、強い二人。
危険と隣り合わせの冒険の中で深まる愛!!
村から出て良かった。
わたしは今、大恋愛の目撃者になろうとしている!!
「わたし、全力で応援します!!」
「え、そ、そう?
ありがとう。
あなた、とてもいい子ね」
このあと、わたしはエスメラルダさんに、破れた勇者さまのパンツを渡した。




