表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーの雑用係、密かに強くなってる  作者: 葉桜 笛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

第16話 ザコなんかに負けません!


 〔黒いヤギ〕がこちらを見て、鼻息を荒くしている。



(絶対わたしをる気だ!!)



 わたしは〔シーガルスホルムの剣〕に隠れるように構えた。

 〔黒いヤギ〕が、左の足で勢いよく地面を蹴り、突進してくる。



「ぐはっ!」



 フィリアさんの〔身体強化〕のおかげで痛くはないけど、体当たりされた衝撃で肺の中の空気が強制的に出される。

 これは、苦しい。


 続いて、大きくカーブしている立派なつのでわたしを刺そうとしてきた。

 わたしは、剣に隠れようとするので精一杯。

 やっぱり、余計なことをしようとするんじゃなかった。

 勇者さまみたいに強くないんだから、わざわざ結界から出てようすを見ようとしなければよかった。



「スパァァン!!」



 たまたま、わたしが持ってた剣が〔黒いヤギ〕の右の角にふれた。

 そしたら、まるでケーキを切るときみたいに「すぅっ」と剣が角の中に入っていき、そのまま勢いよく抜けた。

 なめらかに切れる感触が手に残って、何とも言えない気分になる。



「なに!? この切れ味!!

 切れすぎて、怖い!! 怖いよぉぉぉぉぉ!!!!」



 右の角を切り落とされて怒った〔黒いヤギ〕は、警戒しながら山をけ、何度もわたしに体当たりをしてきた。

 足の筋肉がしっかりついているから山の斜面を利用して飛び跳ね、生き生きと攻撃を仕掛けてくる。

 そのたびに、体力を吸い取られていく感じがした。

 きっと、草の生気を吸うように、わたしの体力も吸いっとっている。



(〔身体強化〕が切れるか体力がなくなったら、死んでしまう!)



 死の予感に、幼いころのことを思い出した。


 魔物に襲われ、火の海になった村。

 戦う両親。

 わたしだけ逃がそうとしてくれたこと。

 一人で生きていかねばならないと思ったときの孤独感。

 そして、それなら両親と共に死んだほうがいいと涙したこと。


 そう。

 本来なら、あの時、死んでいた。

 でも、勇者さまが救ってくれた。



(勇者さまが救ってくれた命を、ムダにはしない!!)



 ただ、勇者さまにあこがれて〔雑用係〕になったんじゃない。

 わたしと同じ思いをする人が少しでも減るように、何かしたかった。

 でも、わたしは強くないから、勇者さまたちがダンジョンの攻略に専念できるように、お手伝いをすることにした。






「勇者さまが相手をする気にもならない〔ザコ〕なんかに負けない!!

 お前を倒してレベルを上げる!!!!」






 わたしは走った。

 何度も体当たりで飛ばされて〔山小屋〕からは離れてしまったけど、この辺りの景色はよく知ってる。



(この先は川!!)



 なぜ勇者さまのパンツだけ狙われるのか、不思議だった。

 それは、パンツに何かついているわけでも何でもない。



 形!!



 形が問題だったのよ。

 勇者さまのパンツは四角いトランクス。

 ジージエおじいさんのパンツはブリーフ!

 勇者さまのパンツだけが四角い!!



「マクラフィッシュは四角いものを見ると、同族だと思うんだわ!

 そして!!」



 河原に着いたわたしは、しゃがみこみ、足をスカートの中に隠した。

 続いてエプロンを上にあげて上半身を隠し、川から見て四角になるようにした。


 後ろから〔黒いヤギ〕が、突進して来る。

 そして、わたしの体はちゅうをまった。



「同族が襲われていると判断したら、助けようとする!!」



 だから、勇者さまのパンツに毎回食いついてきた。

 わたしから助けようとして!


 数十匹のマクラフィッシュが、次々とわたしの服をくわえて川の方に引っ張った。

 それと同時に、他のマクラフィッシュが川から飛び上がり、わたしを中心に水柱が立つ。


 守られている安心感。

 そして、水柱の中心から少し曇った夜空を眺めながら、わたしは川に落ちた。




✽✽✽



「はははははは!」



 テンジン卿は、戦いの様子を空から見ていた。

 コウモリのような黒い羽を、優雅に広げている。



「勇者パーティが逃げるほどの敵をザコ扱い!

 しかも、倒すと言っておきながら、逃げてザコの魔物に助けてもらっている!

 本当に、面白き娘よ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ