【魔法使い〔エスメラルダ〕視点】
ヘラヘラ笑って腹が立つ。
何が「わたし、強くなります!!」よ。
一般人が私たちと一緒にダンジョンに行けるわけがないじゃない。フィリアが〔身体強化〕なんかをかけるから、素質があると勘違いしちゃってる。
ちょっと、ガイツのパンツを洗ってるからって、いい気になりすぎよ!
水は四杯しか汲めないし、毎日寝坊する。
そして何より、ガイツに媚び売ってんのが一番腹立たしい!! ガイツのパンツが破けたら縫えるように、裁縫道具を買ったですって!?
「奥様気取りか!」ってんのよ!!
ガイツの奥様ポジションは私のもの。
あの、たくましいイケメンは、私のごはんで作り上げられているのよ!
色々とガイツに気を配って、料理してきたの!!
努力もしない子に取られてたまるものですか!!
ガイツは私の男よ!!
誰にも渡さないわ!!!!
「ブシュッ!」
怒りのままにプチトマトにフォークを刺したら、中の水分が飛び散った。
占い師のジージエが「うぉっっ!」と驚いたので「ふふふ。このプチトマト硬くて困っちゃう」と言っといた。
「そ、そうか。
フォークになかなか刺さらんもんは、噛めやせんじゃろう。食わん方がえぇんじゃないかの?」
じいさんが何か言っているけど、それどころじゃない。
私の怒りが止まらない。
絶対に雑用係をダンジョンに連れてかないんだから。
結界にはじかれる程度の〔ちょっと大きいスライム〕を見ただけで騒ぐ子なんて、足手まといにしかならない!
私たち、〔勇者パーティー〕なのよ!?
しかも、私の部屋に入ってきてスッピンを見るし!
ガイツにも見せたことないのに!!
私の素顔が平凡な顔だったから、勝てると思ったのね。
だから、ダンジョンに行きたいとか言い出したのよ!!
ダンジョンに入ったら、魔物を見て「きゃっ、怖い。勇者さま!」とか言って、勇者に抱きつくに決まってる。
許せない! 許せないわ!!
パーティーから追い出してやる!!
今までも、ガイツに媚び売る女は追い出してきた。
たいていの子は、自分だけスープに具が入ってないと知ると出ていった。
ちょうど今、雑用係が自分にだけスープの具が無いことに気づいたところ。
あとは、これを二、三日続ければ出ていくわ。
今週中に雑用係を追い出すと心に決めて、私は仲間たちとダンジョンに入った。
ついに30層。
占い師のジージエが〔ワープ〕の魔法陣を展開できるので、魔法陣を残しておけば続きから冒険できる。
毎日、1層目から潜る必要がないのがとても助かる。
ガイツの隣に駆けよった。
「昨夜は、騒がしかったわね」
「雑用係か?」
「ちょっと〔大きなスライム〕を見ただけで、あの驚きよう。一般人は平和で良いわね」
ガイツが雑用係をどう思っているのか、ダンジョンの廊下を歩きながら探りをいれた。
「あぁ。そうだな。
もし、〔ユニオンスライム〕が出たなら、俺たちが戦わなければならないが〔大きなスライム〕で騒がれちゃ、夜寝れなくなるな」
「まぁまぁ。
アイビーちゃんは、がんばってくれとるだけじゃ」
「だいたい、あいつ入れることになったの、じいさんの占いのせいだぞ?
もう一人応募に来てた婆さんのほうが、まだましだったんじゃないのか?」
「ワシの占いは、絶対じゃ。お主らもわかっておろう?」
「えぇ? でもなぁ……」
良かった。
いい感じに不満を抱いてる。
「うわっ! 敵だ!!」
広間に入ると、大きな魔物が一体。
黒くて、バサバサの毛。
大きくカーブしている立派な角。
足の筋肉がしっかりついている、逞しきヤギの魔物。
大きすぎる体は、ぶつかっただけで骨折しそう。
「〔ブラック・アイベックス〕だわ!!!!!!」




