第11話 今日も寝坊です
「は、早く……あたたまらなければ――――――」
寒くて、顎が勝手にガクガク震える。
自分の体を抱きしめるようにしながら、歩いた。
ガタガタ全身を震わせながら山小屋に入り、食堂の暖炉に急ぐ。
春とはいえ、山の夜は寒いので、みんなが部屋に戻るまで暖炉をつけていた。
「こ、ここなら……き、きっと…………あ、あたたかいはず」
暖炉の火は消えているけど、まだ灰が暖かかった。
わたしは、巨大なスライムの体液で濡れたまま、ズリズリと灰の中にもぐりこんだ。
なめらかな灰の中は心地良かった。
『見ましたよ。アイビーさん!!』
『私たちを守ってくれて、ありがとね! 雑用係ちゃん!!』
『光の魔法が使えるとは、スゴイのぅ!』
『お前には、勇者の素質がある!!
明日から、一緒にダンジョンに行こう!!』
『フィリアさん、エスメラルダさん、ジージエおじいさん、勇者さま……!!
はい! 皆さんのお役に立てるなら、喜んでダンジョンについていきます!!』
『そうか! 君がいれば百人力だ――――――』
「うへ……うへへへへへ――――」
みんなが、わたしのがんばりを認めてくれる。
そのことが、とても嬉しかった。
まだまだ実力不足なのは知っている。
本当は、一緒に魔物を倒しに行きたかった。
でも、わたしじゃ足手まといになる。
そう思ってたけど、わたし、強くなったのね!!
これからは、わたしも勇者パーティーの一員として――――――
「おい! いつまで寝てんだ!!」
勇者さまの声で目が覚めた。
え?
目が覚めた?
夢?
体を起こすと、サラサラと灰が落ちた。
「汚ぇな。お前、灰かぶりかよ」
勇者さまが呆れた顔をしている。
「わたしも、みなさんと魔物を倒しにダンジョンに行きます!」
さっきの決意を告げると、勇者さまはため息をついた。
「ちょっと大きなスライム倒したぐらいで、なに言ってんだ!
お前なんか足手まといだ!!」
気持ちがいいほどに、キッパリと断られた。
(あ、さっきのは夢だったんだ)
そうだよね。
まだ四日目だものね。
たった四日で、レベルは上がらないか……。
現実って厳しいな。
「あ! アイビーさん!! 昨日はどうでしたか?」
フィリアさんが食堂に降りてきた。
とても心配してくれている。
「はい! フィリアさんの〔身体強化〕のおかげで死なずにすみました!!
時間はかかりましたけど、一人で巨大なスライムを倒せました!!」
「それは良かったです。きっと、レベルが上がってますよ。
次からは、もう少し楽に倒せると思います」
「はい!! ありがとうございます!!!!」
山小屋の二階まで届きそうなスライムを、昨日より楽に倒せる!
それって、とてもカッコイイ気がしてならない。
想像しただけで興奮してきた。
「スライムぐらい、一撃で倒せるようにならないと、ダンジョンには連れてけないぞ」
気だるげに言う勇者さま。
「……それって! それって!!
強くなったら、魔物退治について行っても良いってことですか!?」
「はぁ……強くなれたらな。
だから、弱い魔物なんかに振り回されてちゃダメだ」
「はい! わたし、強くなります!!」
雑用だけでなく、戦闘でもお役にたてるようになりたい!
がんばって強くなろうと思った。
「さ、みんな! 朝ごはんよ!!」
とりあえず、顔だけ洗って、わたしも朝ごはんを食べた。
エスメラルダさんの料理はおいしい。
今日も焼き立てのパンや、熱々のスープの匂いが食欲をそそる。
とってもおいしいのに、ジージエおじいさんはスープに入っているお肉を残していた。
牛肉はかたくて、年寄りは食べられないそうだ。
それを聞いて気が付いた。
わたしのスープには、具が一つも入ってない。




