第12話 新しい魔法を試す
エスメラルダさんの様子が変わった。
「お昼ご飯に、買い置きの食材は使わないでね」
そもそも、ダンジョン攻略のための買い置きなので、ダンジョンに入らないわたしは時間があるから、自分で食材を集めるべきとのこと。
昨日までは、わたしのお弁当も作ってくれてたのに……。
エスメラルダさんは怒っている。
何か悪いことをしたかな?
……もしかして、素顔を見られたのが、心の底から嫌だった?
悪いことをしてしまった。
でも、確かに、買い置きの食材は勇者さまたちのためのもの。
わたしのお昼は自分で用意すべきだよね。
それに、マクラフィッシュに手こずらなければ、わたしには時間がある。
「バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!」
今日も川にはマクラフィッシュが三十匹以上いる。
同じことを繰り返しても、良くなるとは思えない。
日に日に、わたしは強くなってる気がするけど、数が多いから攻撃力は関係ないんだよね。
どうやったら早く倒せるかな?
(そうだ! 昨夜覚えた魔法を試してみよう)
「ライト!」
魔法を唱えると、空から〔光の柱〕が、五、六匹のマクラフィッシュに降り注いだ。
「わぁ! 切るより楽に倒せそう!!」
これを七回ぐらい繰り返せば、落ち着いて洗濯ができる。
わたしの心にも光が差した気がした。
「続いていくわよ! ライト!!」
し~ん。
ノリノリで魔法を唱えたけど、何も出てこなかった。
魔法が発動しない。
「あれ?
ライト、ライト、ライト~!!」
何も出ない。
嫌な予感がした。
(まさか、一日一回しか使えない!?)
魔力が足りないようだ。
しょうがない。
また、剣と洗濯物を握りながら洗濯しよう。
わたしは、右手に〔女性用の剣〕と洗濯物を握った。
剣を握ったまま両手で洗濯物を洗い、マクラフィッシュが攻撃してきたら、洗濯物を握ったまま剣を振る。
左手で洗濯物を持って、右手で剣を振る方がびちゃびちゃにならないで済む。
だけど、左手で洗濯物剣を握って洗ったら、洗濯物を手から離す時どうしても右手を一回緩めなければならなくなる。それでは反撃が遅れる。
遅れたら、マクラフィッシュの攻撃を受ける。
それなら、濡れた方が良い。
「はっはっはっはっはっ!」
川の向こうから、男性の笑い声が聞こえてきた。
「マクラフィッシュの数が減っていると思ったら、そういうことか」
声の主は、対岸の向こうの竹林の中から姿を現し、こちらへ飛んできた。
家が七件ぐらいスッポリ入りそうな川幅を超えて来た。
「君が倒していたのだな」
黒く長い髪。
白い肌。
金色の瞳。
どこか人間離れした美しさ。
爽やかなその男性は、わたしの右手をジッと見た。
「そんな剣で、今まで戦ってきたのか。フフフ」
バカにされている気がする。
確かに、わたしが持ってきた剣は護身用のうえに〔女性用〕。
あまり戦闘には向いていない。
(そっか。
買い換えればいいんだわ)
お金はある。
昨夜の大きなスライムの魔石と、今日のマクラフィッシュの魔石もあるから買えると思う。
「〔マクラフィッシュ〕は、なぜ、その名がついたと思う?」
「枕の形に似ているから?」
優雅に質問されて、思わず答えてしまった。
この人は、敵? 味方?
「似ているどころか、〔枕〕として利用する者がいる」
ワケがわからなかった。
「あんな、動きの速い魔物を枕にする?
そんなことできるのは――――――まさか!」
魔物を枕にできるのは、魔物!?
「そう。気づいたかな?
マクラフィッシュを枕にする魔物が川の上流にいるから、気を付けたまえ。
面白き娘よ、また会おう!」
そう言って、美しい男性は北西の森に飛んで行った。
******
ダンジョンの最深部。
ゴツゴツした岩の壁。
薄暗く、不気味な部屋に、一人の客が来た。
黒く長い髪。
白い肌。
金色の瞳。
どこか人間離れした美しさを持った男性だった。
「調子はどうだ? キンタイ卿」
「何をしに来た。テンジン卿」
「魔王様の命令で来た。
王の魔獣をそなたに貸すそうだ。
このまま、勇者にダンジョン攻略されたら、隣国の【竜王】や【医王】にバカにされると、イラついておいでだ」
そう言って、テンジン卿は大きな黒い物体を、キンタイ卿に引き渡した。
お読みくださりありがとうございました。
次回は、04/24㈮までを目標に投稿したいと思います。
今回はギリギリになってしまいました。
少しずつペースアップしていきたいです。




