第9話 身体強化を教えてもらいました
「占い師であるジージエさんの水晶が危険を知らせないということは、放っておいても問題ないということなんです」
フィリアさんの言葉を聞いて、手の震えが止まった。
そっか。
何も心配することはなかったのね。
「でも、気になるなら、アイビーさんが倒しに行かれてもいいかもしれません。
スライムが相手なら、魔物と戦う練習になります」
そう言って、フィリアさんはわたしの手をとった。
心配そうな目をしている。
「マクラフィッシュに苦労されてるようですし、経験値をかせいでレベルを上げてみてはどうでしょう?」
わたしの朝寝坊が続いているのを、気にかけてくれてるみたい。
フィリアさんは、わたしに〔身体強化〕の魔法を教えてくれた。
「体の中に流れている〔血〕の巡りを意識して、全身にかけます。
アイビーさん、どうですか?
〔血〕の巡りを感じますか?」
両手からフィリアさんの魔力が流れ込んできて、〔血〕の巡りをしっかりと感じることができた。
温かいものが、身体の中をグルグル流れている。
「次に、〔血〕を軸にして肉体を強化します。
〔血〕から、〔皮ふ〕まで広げていくように意識してください」
オレンジの魔力が、内側から体を温めていく感覚。
魔力が低いわたし一人では、こんなに魔力の流れを感じられない。
さすが勇者パーティーメンバーの補助は違う!
「一般的には、体を外から包むように〔身体強化〕をかけますが、内側からの方がより強固に魔法がかかります。
今日は、私が手助けしたので、二人分の〔身体強化〕がかかっています。
アイビーさんだと、きっとレベル50ぐらいの人の防御力になっていますから、強気で戦っても死にませんよ」
レ、レベル50!!
ベテラン冒険者並みの防御力!!
「さぁ! 行きましょう!!
私も一緒に行って手助けします!!」
心強い!!
フィリアさんが手助けしてくれるなら、レベルなんてホイホイ上がっちゃうわね。
心から感謝しながら部屋を出ると、勇者さまがいた。
「おい! どこに行く!?
まさか、スライム退治に二人で行くのか?」
とっても不機嫌そう。
なんで眠いのに部屋から出てきたのかな?
「フィリアは優しいからな。そんな気がしたんだ。
ダメだぞ!
スライム退治なんか手助けするな」
「でも、アイビーさんのレベル上げもしておいた方が――――――」
「お前の〔身体強化〕だけで充分だ。
夜更かしは、明日のダンジョン攻略に支障が出る。
フィリアは行くな」
「――――――はい」
一人で行くことになった。
でも、フィリアさんがかけてくれた〔身体強化〕があるから、心強い。
一人、山小屋から外に出る。
結界の向こうでは、さっき窓から見た巨大なスライムが、さらに大きくなっていた。
「……本当に一人で大丈夫かな?」
わたしの身長より大きいスライムを見上げると、不安になった。
相変わらず結界にぶつかっていて、結界が内側に押されてる。
結界を破られるのも、時間の問題に見えた。
「まずは、小さいのから」
山小屋の結界から出て、合体前のスライムを切る。
これ以上、大きくならせないわ!
「次は、お前よ!!」
走って、大きいスライムに切りかかる。
やっぱり、怖い。
スライムは弱いけど、自分より大きな魔物はやっぱり怖い!
怖くて泣きそうになりながら、〔女性用の剣〕で何度も大きなスライムを切った。
「うわぁぁぁぁん!
攻撃力がそんなに上がってない!!」
スライムに、かすり傷を負わせただけだった。
〔身体強化〕は、主に防御を上げる魔法みたい。
反撃に、大きなスライムが体当たりをしてきた。
(死ぬかもしれない!!)
体が森の中まで飛ばされ、木に当たって地面に倒れこむ。
あまりの速さで飛ばされたので、息ができないし、死ぬかと思った。
(ちょっと待って! 本当に、一人で倒せるの!?)
不安しかない!!
本当にスライムって弱いの!?
大きいと、そのぶんめちゃくちゃ強くなるんじゃないの!?
身体をいたわりながら立ち上がって気がついた。
「い……痛くない」
見ると、身体全体がほんの少し光っている。
死ぬかと思ったのに、傷ひとつついていなかった。
「うわぁ! フィリアさんの魔法すごい!!」
(ダメージを受けないなら、いつか勝てる!
長時間の戦闘は、マクラフィッシュで慣れてるもんね!!)
勇者さまの言うとおり!
わたし、一人で何とかやれそう!!
さすが、勇者さま!!
わたしは、大きなスライムの元へ走った。
ユニオンスライム
HP 1000 攻撃力 800
MP 300 防御力 150
〔特技 体当たり/全回復〕




