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cyber hunter  作者: M MAN
ブランヴァンサー編
29/43

[信用]

 地獄のような空気だ...

 嫌悪なムードに包まれている部屋は暑苦しくて早く退室したい気分。

 ウェイドはじっくりと腰を下ろしてライルを見つめる。

「遅刻か...ラッチはちゃんと伝えてあったのか?」


 ラッチは口を曲げながら下を向いて

「はい」

 と返事をした。


 ライルは唾を飲み込んでウェイドに向かって言う。

「本当にごめんなさい...本当に...本当に...」


 言いたい言葉が思い浮かばなくて焦るがウェイドはゆっくり手を動かして言った。

「遅刻したことはどうでも良い。さっさと本題に入りたい」

 ライルは急いで頭を上げてウェイドの方へと視線を移した。


「この招集は...何のためだと思う?」

 ウェイドはライルに向けて言い放った。

 ライルは汗をかき始める。


(やっぱり怒ってるんじゃ...!)

「え...新たなバグの出現...いや活動についての何か...ですか...?」

 そういうとウェイドは目を閉じて視線をラッチへ移す。

 そうするとウェイドは頷き、また視線をライルへと向けた。


「...本題に入ろう」

 ライルは唾を飲み込む。

 他のメンバーもどこか不安げそうに顔を上げてウェイドを見ている。

 クレイドを除いては。





「我々の組織の目標についてだ」

 ライルは目をパチパチさせて言った。


「組織の目標??バグを討伐することでは...?」

 ごもっともな返事だ。

 今までそんな話一度もされてこなかった。

 そんな急に活動方針の転換を言われても困惑するだろう。


「違う。バグを討伐することはその目標に対しての道のりに過ぎない」

 ウェイドは続ける。

 ライルは途中で止めようとするが勢いに負けて何も言えなくなる。


「我々の目標は...」

「ちょ...言いたいことが...ま...」

 ライルは口をはさむ。

 ウェイドは無視して言い放った。


「"ゴールデンアイ"を殺すことだ」

 

 一斉にハンターたちは唾を飲み込んだ。

 ライルは固まる。

「...はい...?」


 ライルはすぐさま質問を始めた。

「ゴールデンアイって...なんですかね...まず」

「落ち着け。順番に話していこうと思う」


 ウェイドは深くため息をついて椅子を回した。

 手で机を軽く叩いて言う。

「君は日本が崩壊した理由を知っているかね?」


 ライルは眉を潜めながら言った。

「日本って...なんです??」

「お前教育受けたか??」


 クレイドが言い放った。

 冷たいまなざしで拳を握っている姿がすぐわかる。

 他のハンターはクレイドを見つめていて、ライルは更に困惑する。

 ウェイドが言った。

「日本...かつてここアメリカの近くにあった島国だ。ウイルスが蔓延して住めなくなり隔離されたんだ。」


 クレイドはライルを睨んでウェイドの方を向いた。

 ライルは開いた口が塞がらない。


「ウイルスは人間を体内から破壊した。内臓・心臓・胃、体に必要な部位をことごとく食い尽くし、やがて死に追いやった...」






「と、普通ならそう習っているが、実際は違う。政府公式による年表は嘘まみれだ」

「え...政府って一応我々の味方ですよね...」

 ライルは不思議に思いつい発言する。


「民間人に隠し事が多いものが政府ってものだ」

 ウェイドは話題を戻して続ける。


「実際はゴールデンアイの攻撃によるものだ。死者はウイルスよりゴールデンアイの直接的攻撃によって亡くなった人の方が圧倒的に多い...」


-------------------------------------------------------------------------------------

[新型ウイルスによりマスク着用が必須となった今...世間の声はどうなっているでしょうか...]

「ママー外いこ外ー!」


 幼い子が叫んだ。

 母親は困った顔で階段を下りる。

「あのね、みーくん。今お母さんは仕事をしているの、少し静かにね?」

「...はーい...」


 そう返事すると子供は外へ飛び出した。

 母親は安心したかのような顔で子供を見つめる。

 家の奥からはラジオの声が絶え間なく聞こえる。

[コロナを思い出しますね...やっぱり...?はぁ...まぁそうですよね...]


 子供は無邪気に野原を駆け回る。

 楽しそうな笑顔で、幸せそうだ。


[でも日本ってついてないですね...7年前も地震があったし...やっぱり外国に引っ越す??]

 母親も電話に夢中で話している。

「ええ!ぜひお願いしたいです!」


[いやそうでもないですよ...やっぱり感染者はおお]

 光が貫通した。

 目の前は白色に埋め尽くされ一瞬で辺りは暗くなる。


 子供は血を出しながら光が当たるところを抑えて倒れこむ。

 母親は目を大きく開けているが目からは血の気が引いている。


 どこもなにも変わってない日常だ。

 風は穏やかで晴天。

 そんな中血を吐いて倒れてこんでいる親子がいる。

 街中全員外にいたものは倒れこんでいる。

 道路は血の海。

 晴天の日差しが倒れた人々を照らしている。


 子供が倒れこみ、後ろの空に浮かぶ物体が見えた。

 物体はシルエットでもわかるように神のように空に浮かんでいる。

 大きな一つの目を開けて、地上を見つめていた。

「あ...」


 母親はその物体を見つめて絶望する。

 だが時すでに遅しであった...

-------------------------------------------------------------------------------------

「日本ではこの事件で3743万人が死んだ。命がギリギリ助かった人もいたが、大半は死んだ」

 ライルはただ何も動かないでじっと聞いている。

 自分の知らない出来事でこんなことがあったことに驚いているのだ。


「7年前の地震も"物体"の仕業だ。このあと更に追い打ちをかけるようにウイルスが流行り、更に2000万人は死んだ」

 

 途中でラッチが補足するように言った。

「分かると思うが"物体"が何かはライル、分かるか?」

 

 ライルはラッチを眉を潜めて見つめる。

「...ゴールデン...アイ??...」

「そうだ。合っている。生存者の言葉ではその存在がほのめかされている。"空に浮かんでいる何かを見た"と。政府はこれをバグの仕業と見た。」


 ウェイドは続ける。

 メンバーたちは汗をかいているが、この部屋ははっきりいって寒い。

 何かが変だ。


「ゴールデンアイは創造主のようなものだ。過去にバグを倒した際、腹にデカいイニシャルが飾られていた。生存者の言葉と一致したその姿はゴールデンアイそのものだ。バグは腹を極度に守り駆られるまで腹を大事に守っていたという...」


 ライルは不思議な気持ち...不気味な気持ちで話を聞いていた。

 そんな創造主がいることを知り、恐怖を覚えているのだろう。


「そして我々はこの目標を達成するため、バグを徹底的に駆除するのだ。ゴールデンアイに関する情報が入るかもしれないからな。今回のブランヴァンサーはかなり姿がゴールデンアイに酷似していた。きっと今後つながりが深く見えるバグを徹底的に送ってくるだろう。本気で我々を潰すために...」

「ちょっといいですか...」


 ライルは手をあげて言い放った。

 ウェイドの動きが止まり、ライルを再度見つめなおす。

 メンバーは口を曲げながらライルを見る。


「それを...なんで今まで教えてくれなかったのですか...」

 ライルの声には本人が疑問を感じているのがひしひしと伝わってきた。

 メンバーはじっとライルを見つめている。

 ウェイドは口を開けた。


「...はっきり言うがな...」








「我々はお前を信用していないからだ」

 ライルの目から血の気が引いた。

 ライルは固まり口を半開きで目を大きく開ける。

 咄嗟にライルは周りのハンターを見た。


 ラッチは少し眉を潜めて下を向いている。

 クレイドは冷たい目で両者を見ている。

 アドナスはライルを熱く見つめている。

 ガイアンは腕を組み、ため息をついている。

 そしてリーダー...ウィリアムズは目を閉じている。


 ライルはゆっくりと再度ウェイドへ視線を移し口をもごもごさせて言った。

「なんで...」

「言い間違えた。信用していなかった。だ。理由は分かるだろう。この情報は秘密なんだ。信用していない相手に軽く伝えるものではない。君にもわかるだろ」


 ライルは次第に落ち着きウェイドの言葉を聞き始めた。

「前にも言ったがこの世は情報世界だ。ネットで簡単に噂は広がっていく。本当にやな世の中になったよ。だからある程度信用した相手にしか話せなかったのだよ。」


 ライルは次第に怒りが増してくる。

 グラズアームで戦っていた時信用されていなかったのかと。

 ブランヴァンサーの時も。

 グラズアームで父を目の前で亡くしたのに信用されていなかった。

 ブランヴァンサーで頑張ったのに信用されていなかった。


「そ...そんなの...」

「お前は初対面の奴に自分の秘密をバラすか?」

 クレイドが口をはさんだ。

 ライルはクレイドを見る。


「例えばお前が初めてラッチとあった時信用もクソもなかったわけだ。一緒にいる中で信用は増えた。お前は何だ。急に信用できるのか?信用して"自分の好きな子は..."とか初対面の見知らぬ人に話すか?」


 ライルは何も言えなくなり下を向いた。

 ウェイドは言う。

「今は十分に信用してはいる。100%では無いが...この情報は機密情報だ。いいか。誰にも漏らすな」



「...はい...」

 静かな部屋には冷たい空気が回っていた。

 ライルは驚きと虚しさが同時に来て下を向く

 他のメンバーはただじっとライルを見つめていた。

 

 



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