[窮地]
(どうする!!)
ライルとブランヴァンサーの距離。
それはもう5mも無い。
「rrrrrrrrr...!!」
どんどん大きくなっていく機械音でライルは全てを察せる。
残された時間は少ない!
「くそっ...!」
ライルは急いで辺りを見渡した。
「何か使えるもの!どこかに!」
[----weucmeraah----]
ブランヴァンサーは何も考えずにただ真っすぐ進んでいく。
ライルの影がどんどん大きくなり、近づいて行く。
「何か...」
ライルの目に止まったのはデスクの上だ。
偶然か、pcがデスクの上にまだ残っていた。
pcは壊したらかなりの熱を出す。
この状況で最適な判断は"pcを壊して熱を出す"ことだとライルは瞬時に判断した。
「qqqqqqqq!!」
ブランヴァンサーが迫ってくる!
距離はもう1mも無い!
ライルの顔とブランヴァンサーの顔が平行に並ぶくらいだ!
「おらぁ!」
思いっきり拳を振るとガラスの破片があちらこちらに散らばった。
瞬時に手が焼けるほど暑く感じる。
「あつ...今だ...!」
ライルは手を抑えながら奥の方へと進んでいく。
[---gdjtjncp---]
ブランヴァンサーの皮膚に熱が飛んでくる。
ブランヴァンサーは咄嗟に後ろに前を向きながらバックした。
熱の大量検知に思わず驚いたのだろうか。
ライルは奥の誰もいない陰に潜み、心の中で密かに飛び跳ねるほど喜んでいる。
(よし...)
同時に、pcの熱は収まり、ブランヴァンサーはサッとデスクの角を曲がった。
だが勿論ブランヴァンサーが角を曲がるときには誰もいなかった。
そうするとすぐにまた辺りを見渡して、あちらこちらへと進んでいった。
「くっ...うっ...」
ガイアンは口に手を当て、顔を真っ青にする。
なんとも苦しそうな表情で今にも吐き出しそうだ。
(マズいぞ...)
ラッチは険しい顔をしてガイアンの方を見つめる。
ガイアンは薬物を定期的に摂取しないと死ぬ体質だ。
ただし薬物といっても合法的な薬物であり、医者に使用が認められている。
その薬物には弱い"毒"が入っている。体内のウイルスを殺すために。
だが薬物は薬物。非常にドーパミンが出て摂取するたびにガイアンは薬物中毒者のような挙動に出てしまう。
中毒性が高いが、やり過ぎると死ぬ恐れがあるから、ガイアンが信頼を置いているラッチに薬物の管理を任せていた。
だが、摂取しないと死んでしまう。
そして今、その制限時間が来ようとしていた...
「qqqqrrrrrr」
ラッチは咄嗟に身を潜めた。
ブランヴァンサーの息が首を通って全身に伝わってきた。
ラッチがいる場所のすぐ後ろにブランヴァンサーがいるのだ。
「wwwwwww...」
だがラッチは同時にガイアンの方を覗く。
「ぐ...あぁ...ラッチ...!!!あ...」
ガイアンはラッチに薬物を頼もうとしたが瞬時に気付いた。
ブランヴァンサーがいることを知り、更に絶望的な表情を見せる。
「があああ...」
ブランヴァンサーがこの辺りをさっきからずっとグルグル回っている。
恐らくガイアンの声に気付いているのだろう。
「うぅ...」
(ちくしょう!!今投げたら絶対寄生される!!)
その瞬間ラッチの脳内に稲妻が走った。
そうすると思わずにやけて、ガイアンの方を見た。
「ガイアン!!!」
ラッチは大声で、叫んだ!
「薬だ!」
手を大きく振り、ガイアンに届くように投げ飛ばす。
ラムネのような薬物が地面を転がる。
ブランヴァンサーはすぐにラッチの方へ振り向いた。
ガイアンは眉をひそめながらラッチを見つめる。
すぐに手を出し、薬を持ちながら何か言いたそうに見つめている。
ラッチは笑っていた。
(...頼むぜガイアン!)
ブランヴァンサーが、ラッチの全身を覆った...




