……全軍出撃……
第三十章 全軍出撃
翌日全ての部隊が帰還、到着して、指揮官達他主要メンバーが司令部に一同に集まった。
「早朝から、ご苦労様、昨夜遅く到着した方々はあまりゆっくりとできなかったかもしれないが我慢して欲しい、これより、今まで収集した情報を共有して次の行動に移る事になる、ではブルシュノ殿」
「はい陛下、五年間現地で情報を収集してくれた、黎明の血脈各位のおかげで、敵の侵攻目的がはっきりとしました、敵の目的はこのルミナス、もう第八世界と言った方が良いですね、の全ての生物、動物植物を問わずです……から生命の源となるエーテルを奪う事、奪ったエーテルは各地の輸送艦で非結晶クリスタル化されて、一部は雷属性エーテルの保存用に使用され、これは敵の機械兵、その他の動力源になっています、残りは敵の要塞に随時移送されていると言う事が判明しています。移送された後の使い道ですが、予測される用途はありますがまだ不明と言う事です。
そして現状ですが、大陸各地の敵勢力の掃討に成功しています、残るは敵の本拠地である大型要塞のみと言う事になります」
「そういう事だ、なので我々としては、敵の大型要塞を攻撃、これを占拠、あるいは破壊すると言う事が、次の作戦となる、これまで戦って来たのは敵の攻撃部隊では無く、輸送部隊と言う事で激戦が予想されるが、各員の健闘を期待する、なお帰還したばかりで悪いが、流星殿とレッド殿には『ディファイアント」に同乗して攻撃部隊に参加してもらいたいが、宜しいか?」
「ああ、喜んで」
「もちろんだ」
「他の黎明の方々はブルシュノ殿と協力して、エネルギーフィールドの解除をお願いしたいが、宜しいだろうか?」
「了解しました」
「良いわよ」
「その前に一つ確認しても良いかしら?」
「はい、レ・シュトラさん』
「魔皇王陛下、あなたは何者なんですか? 少なくとも今の貴方は私が『魔王子』と呼んだ12歳の頃の貴方とは別の存在よね、まさか過去人が憑依しているなんて事は無いわよね」
ペッコはそれを聞いて微笑んだ、レ・シュトラは眼では無くエーテルを通して周囲の状況を感じている
だから、ペッコの姿はエーテルの塊としてしか認識していない。
「そうですね、私はもうあの頃の私とは別の存在と言うのは正しいでしょう、森の妖精との契約で私は『角神』となりました、更にその力によって、エーテル化していたエウロパ12神、時の神サトゥルヌスの力も使える用になっています、でも根本は少し老けましたけどあの頃の私のままですよ」
「そう、そう言う事なら了解したわ、貴方から溢れるエーテルの力は、あの過去人をも遥かに凌いでいるの、貴方とエステーノ、流星の三人はもう『人』とは別の存在なのね」
「ちょっと待て、なんで俺までそっちに入れるんだ」
とエステーノが言って、少し堅苦しい雰囲気だった司令部は笑いに包まれた。
「お前さん、自分がまともだと思っている所が、一番まともじゃないな」
とアイメリクが笑いながら言って話は終わる。
「では、みなさん今日一日は整備と休養に充ててください、明日日の出と共に全軍で出撃します」
それぞれが立ち上がり、それぞれの方法で敬礼をした。
ペッコは当然、アル・ラムラ式の答礼をする。
ペッコは野営用の天幕に入った、旗艦の中で休んでも良いのだが、天幕の方が広いので
妻達と会話が可能だからだ。
「みんなご苦労様、報告を見たけど、残念ながら死傷者無しとは行かなかったね、皇都に戻ったら遺族への対応はそれぞれが責任を持ってする様に」
「はい陛下」
「陛下、一つ伺ってもよろしいですか?」
「何かな?」
「一緒に戦ったオルメカ連王国の兵士達はとても優秀でした、あれだけの兵が居てなぜ連王国はこんな事になってしまったのでしょうか?」
と第十夫人のリブルが聞いて来た
「あ、それ私も思いました、敵の機械兵より連王国の兵の方が強いですよね」
これは第九夫人ヴォルだ。
「そうか、誰か答えがわかるかな?」
ペッコが聞いたが妻達は全員が、考え込んでいる。
「ヒントはね、僕達と敵に有って連王国に無い物だよ」
しばらく考え込んでいた第二夫人のエイルが答える。
「それって、空飛ぶ船とかですか?」
「そう、航空戦力って言うんだけどね、地上に居る兵士がいくら強くても、空からの攻撃を防ぐのは難しい。そして地上からの攻撃を空の敵に当てるのは難しい、弓も魔法も届かない事の方が多いからね。反対に空の方はそれこそ、石を落とすだけでも地上の兵に被害を与える事ができる、だから航空戦力が必要なんだ」
「成程、だから陛下は空飛ぶ船を沢山作っているんですね」
「そう、今回の遠征でそれの有効性をみんなわかってくれれば良いけどね、国軍の中には反対する人も居たから、さて、では明日に備えてみんな、自分の天幕に戻って寝なさいね、今夜は夜伽は無し」
「えー」
と言う声も聞こえたが、妻達は全員自分の天幕に戻って行った。
ペッコでも大きな作戦前は一人になりたいと思う事があるのだ。
翌朝、全艦隊がビザード荒野に集結して、近衛第四部隊が発見した敵の大型要塞に向かって進軍する事になる、だがしばらく進むと、偵察に出していた、前衛の魔道ガンシップからの報告が入る。
「前方に敵大型空中艦5、小型空中艦20、敵艦より地上軍及び航空戦力が展開しつつあります」
「やはり、出て来ましたね敵の本隊でしょう、こちらも大型戦艦四隻を前に、エステーノ殿ブリトラ殿、流星殿は対航空戦力戦を、私も出ます。『CNウォーリア』はセーバを装着して出撃、こちらも航空戦力を全て出してください。ガイウス殿以後の空の指揮はお任せします、ピピン大将、地上軍は任せましたよ。
「了解した」
「かしこまりました」
二人からは直ぐに返答が来る。
「見事だな、戦力を全て投入するか、愚かな将なら様子見と称して、逐次投入をする所だ、しかもこの状況で指揮権を委任とはな」
「は、しかし総司令官自らが前線に立つとは、いささかお若いですな」
とガイウスとその幕僚は余裕の様だ、ここまでの戦闘で敵の機械兵は、防御力は高い物の攻撃力はそれ程では無く、こちらの魔道兵器の方が攻撃力が高い事はわかって居る、ただ数では敵の方が圧倒的に多い。
ペッコは旗艦ヴェーダの船室で、いつもの赤魔法士の姿では無くて、竜騎士の装備に着替えた。
これは、こちらの方が航空戦力が少ない事への対処だ、CNセイバーを、空中の足場として敵の『ホバーバイク』……義氏の知識からそう名付けただけだ……に乗った機械兵と竜騎士の跳躍で戦うつもりだ。
「魔皇王陛下、出てきたな、俺と流星と三人で誰が一番敵を落としたか賭けるか?」
エステーノは笑っている、エステーノは濃紺、流星は白銀、ペッコは紅とそれぞれ色と意匠が違うが竜騎士の鎧を纏った三人は、空へ跳んで、敵のホバーバイク兵を叩き落とし始めた。
それに合わせて、直掩航空部隊を引き離された敵の小型空中艦にCNセイバー2機と、魔道ガンシップが攻撃を加えて、これを撃墜していく。
地上では、大量の機械兵と、エウロパ皇国連合軍との大規模会戦が始まっている。
どちらも航空支援が見込めないので、純粋に地上軍だけでの戦いになって居る。
「数は敵が多い、魔法士部隊、魔道兵器部隊は距離をとって敵を近づけさせるな、各部隊は魔道兵器と魔法士を守れ」
と言うピピン大将の指示で戦い始まり、
「単独での吐出は控えろ、囲まれれば危険だ」
と歴戦のハヤテや、アイメリク達が、兵達を纏めて、後方からの魔法攻撃で敵の大群に穴を開け、そこに
突入、包囲されそうになると撤退と言う戦法で、敵の数を減らして行く。
「10匹目」
「負けません、これで12匹」
とペッコの妻達も、それぞれの部隊を率いて前線で戦闘に参加している。
「こいつら、機械だから、全く隙を見せないのよね、面白く無いわ」
といつものチラリズム戦法が効かないので、少しイラついて居る妻も居る様だ。
「何の、嬢ちゃん達のおかけで、俺達の士気は爆上がりだぜ、なぁ野郎ども」
「おお!」
と元気なのは、カヌート少将率いる歩兵大隊だ。
だがここで戦場に異変が起こる、
「敵の機械兵が突然魔物に変身しました」
との報告が入った。
これまで敵は全て機械兵だけと思って戦っていた連合軍だが、その中に少数の『人』の士官が居た様だ。ただ、見た目は機械兵と全く同じ意匠の装備なので、見分けが付かない。
その『人』の士官が突然魔物に変身して、兵達に遅いかかって来たのだった。
その為前線は一時的に混乱したが、直ぐに収拾に向かう。シュタインガルドの騎士達は、人が邪竜化する光景を見慣れている、他の兵士達も、偽神獣事件で人が魔物化する光景をなん度も経験していたからだ。
指示が無くても、落ち着いて距離を取り、魔法士達が攻撃、弱った所を、騎士や剣士達がトドメを刺すと言う戦い方で、魔物化した敵兵を片付けていく。
敵の地上部隊損耗率、30%を超えました、味方は損耗率5%。 敵の航空部隊はほぼ壊滅、CNウォーリア、セイバー共に残存燃料25%です、敵大型空中艦、主砲魔道砲射程まであと5マルム、4、3、2、1、主砲射程に入ります。
「良し、流星と陛下に一旦下がって貰う、CNウォーリア、セイバーも後退だ、着艦用意、補給急げ。
ブリトラ殿に、牽制の咆哮を要請、全艦隊主砲発射用意、目標敵左翼の大型空中艦」
ガイウスは、エステーノにエーテル通信で攻撃要請を出すと、エステーノがブリトラにそれを告げて、ブリトラは敵の艦隊の中に突入して、竜の咆哮で敵艦を攻撃し始める。
「今だ、主砲発射!!」
四隻の大型戦艦から発射された魔道砲は敵の大型空中艦の防護障壁を突破して、撃破に成功する。
敵の空中艦は、斜めに傾いたまま高度を下げて地上に激突する。
「よし、このまま第二射用意、目標的左翼二番艦」
こちらの戦艦は大型の主砲が装備されて居るが、敵の空中艦はどうやら強襲揚陸艦的な運用方の様だ、主砲に相当する砲はあるが、その威力は低く、こちらの障壁を貫通する事はできない、敵は航空戦力を消失した結果、有効な攻撃手段を持たずに、一隻ずつ撃沈されて行く事になる。
地上でも、敵の機械兵はその数を減らしつつあり、すべての全線で連合軍の勝利が明白になって来て居る、だがこの状況でも機械兵には後退と言う戦術が無いのか、数体の集団ずつで前進しては撃破されていく。
やがて、空中でも地上でも、動いている敵の姿は無くなった。
「全軍、ここで停止、補給と休養を取る」
ガイウスとピピンの声がほぼ同時に全軍に届いた。
ペッコも旗艦に戻り、ガイウスとピピンにエーテル通信を繋ぎ二人を労った。
「次は、敵の要塞攻略戦ですね、さて残存戦力がどれくらい居るかですが」
「敵の全体兵力が不明ですからね、あの機械兵達が、あとどの位出てくるのか?」
「そうなると、当然全軍で総攻撃ですな」
「はい、そのつもりです、流石に要塞なので強固な障壁が有るでしょうから、最初に僕が魔法攻撃を
仕掛けます、後は全軍で続いてください」
「おう『長城』を一瞬で破壊したと言う陛下の魔法攻撃を見せていただける訳ですな」
とガイウスも上機嫌の様だ。
そこに、ブルシュノと戦闘に参加していなかった黎明の血脈のメンバー達が戻ってきた。
「ブルシュノ殿、ご苦労様でした」
ブルシュノ率いる、黎明の血脈のメンバーと研究者達は、戦場の後方で、この大陸の地脈に流れ込む鏡像世界からのエーテルの遮断に成功していた、その結果大陸を覆っていた、エネルギーフィールドは消滅して、今は要塞周辺を覆っているだけになって居る、これで大陸が鏡像世界に融合される危険は無くなったと言えるだろう、ただ既に融合されてしまった地域がどうなるかは、まだ完全に判明できていない。
「魔皇王陛下、降伏の勧告はされないのですか?」
とはアルフィーがペッコに聞いてくる。
「これまで何度か、彼らと会話ができないか試して来ましたが、一度もまだ成功していません、言葉が通じるのかも全くわからないのです、恐らくあの要塞の中には、『人』が居ると思うのですが、会話の意思が無い者達に降伏勧告は無駄だと思います」
とペッコは答えたが、それでもアルフィーは納得できない様だ。
「やめておけ、要塞を落とした後で、降伏する者がいたら、その時は何か話ができるだろう」
と流星に肩を叩かれて、アルフィーも引き下がった。
「では出ます」
ペッコは旗艦ヴェーダの甲板に出ると『絶影』を呼んだ、フィールドが消滅した事で絶影も、呼び出せる様になった。
ペッコは絶影に跨ると、敵要塞正面に向かう、その横にはブリトラに乗るエステーノ、ドラゴンカッターに乗った流星が並んでいて、その後ろには近衛部隊と連合軍の将兵が並んでいる。
「先陣は俺が貰うぞ」
「さっきは負けたが、今度は俺が勝つ」
とこの二人も至って元気だ。
『どうも僕は脳筋系の人達との相性が良いみたいだ』
と密かに思うペッコだった。
『さて、どの魔法で行くかなぁ……、やっぱり見栄えが良いのは、バハムートとメテオ、後は『スカーレット・スカージ』(ヴァーミリオンスカージ)かな』
と考えた結果、召喚魔法、黒魔法、赤魔法の三連発を放って、要塞を防御していた障壁を消滅させて
更に、要塞正面の一階から三階までの壁も壊してしまった。
『あ、やりすぎた、まぁこれ位なら崩れて来ないから大丈夫だろう』
と思うペッコだが、後方の兵達から大歓声が沸き起こり、
「よし行くぞ」
と言うエステーノと流星の声に続いて、全軍が要塞内に雪崩混んでいく。
地上に降りたペッコの横にはアリスとシ・ルンが来て
「何よ、あのトンデモ無い威力の技は、私もスカーレット・スカージ使えるけど、威力が違い過ぎて笑うしか無いわ」
とアリスは怒っているのか褒めて居るのかわからない対応だ。
「では、陛下よろしいですか、近衛部隊は、要塞内の探索だ、生存者などが居たら保護を優先、敵兵も同様だ、敵について何かわかりそうな資料は確保する様に」
とシ・ルンは近衛部隊に指示を出した、近衛の兵士達は全員がシ・ルンの弟子になるので、ペッコの妻達も含めて
「はい、先生」
と良い返事で、要塞内に入っていった。
「では師匠、僕も中を見てきます、後はお願いします」
とペッコも要塞内に入った。
『これは、要塞と言うよりは工廠都市だなぁ、やはりゲーム内の『エバーキープ』とは別物みたいだ、と言う事は一層や二層目は居住区にはなっていないと言う事か……」
どうも、この建物は外観も中身もエバーキープと全く違う物らしい、一層も二層も工廠の様な作りで、建造を終えた大型空中間や機械兵の大群が待機していて、更に建造途中の大型空中艦が何隻も確認できる。
『そう言えば、ゲームの中では、エバーキープの建物の周りには旧アレクサンドリア王国の廃墟があったけど、ここにはそれは無い様だったな」
そして、エバーキープに合った、魂のリサイクル施設も存在しない、しかしその代わりに今のペッコには何だかわからない施設がある。
『まぁ、施設の解明は、ブルシュノさん達に任せておこう、この要塞はとてつもなく広いし、7層位あるから、さて、何日かかるか……食糧の補給が心配になって来るかな』
と思うペッコだった。
そもそもこの世界は原初世界では無いので、ペッコ=義氏のゲームの知識とは違う点も多い。
現に、ゲーム内の大陸南部でヤクテル樹海と言われた地域の洞窟の奥に合った、『黄金の門』は存在していなかった、代わりに『黄金卿』としてはこの世界の本当の希少金属であるコバルト等の宝庫で、ヴラフ族(ワラキ族)の青魔法士達の聖地として存在していた。
要塞に突入後。四日間が経過して、各階層の様相が明らかになてきたが、工廠として使用されている区間以外は、無人の何も無い空間だそうだ、ただ警護の機械兵は各階層毎に200体程度存在して居るので各隊とも注意しながら前進している。
一層と二層の大工廠を目の当たりにしたシドとネロは
「凄い物だな、完全自動で大型艦や機械兵が量産されているとは」
「ああ、機械兵が機械兵を作っているとはね、恐れ言ったよ」
『あれだけの数の大型空中艦と機械兵が完成していたと言う事は、間違いなくこいつら俺達の世界に完全に侵攻しようとしていた訳だな」
ただ現在は動力源となる『非結晶クリスタル』が搬入されていないので、全ての兵器は待機状態のままで、工程は完全に停止している。
一方でブルシュノ達研究員は、建物の中央部にある、巨大な施設の解明に成功していた。
「この施設は非結晶クリスタルをエーテルの状態に戻し、上層に供給していると判明しました」
非結晶クリスタルは、すべて工廠内から撤去しましたので、この施設も現在は稼働が止まっています」
と言う事だ。
とにかくこの要塞は広いので、各隊とも安全地帯で野営をしながらの前進になっているが、ペッコは
シ・ルンと連絡を取り、探索任務にあたっていた近衛部隊は一旦、要塞外に下げる事にした。
これ以上探索してももう何も見つから無いだろうと言う判断だ。
そして六日目、ペッコの元にピピンからのエーテル通信が入る。
「エステーノ殿率いる先頭の部隊が、最上層の7層に到達しました、玉座の様な場所で敵の司令官らしき人物と相対していますが、コミュケーションは不可能との事です」
「了解、流星殿は?」
「間も無く到着する様です」
「わかりました、私も直ぐに向かいます」
流星は光の加護による『超える力』を所持していて、その力の中には言葉の壁を超える力がある。
つまり、違う言語の相手と意思を疎通できるのだった。
7層に駆け上がり、玉座に前に到着した流星だが、そこでもう一つの超える力『過去視』が発動する。
流星は玉座に座る男、リンドブルム王国 国王エル・ファブール14世の半生を体験する事になる。
リンドブルム王国は、芸術と狩猟と言う分野で栄えた国だった、隣国であるアレクサンドリア王国が
先端技術を発展させて、別次元の文明を発展させても、古来からの文化を守り生活していた。
所が、アレクサンドリア王国が発展させた、エレクトロープと呼ばれる、雷属性エーテルを溜め込み他の属性エーテルに変換する鉱石を多用する技術には重大な欠陥があった、大気中に雷属性エーテルが蔓延する用になり、雷気に覆われた世界は動植物が生存できない環境になって行く、その影響は人にも広がり、出生率の大幅な低下、寿命の短期化が一気に進み、王国は危機的な状況になって行った。更にアレクサンドリアによるエレクトロープの独占と言う事から、ついにリンドブルム王国はアレキサンドリア王国に宣戦を布告
この二国の戦いは周辺諸国をも巻き込んで『雷光大戦』と言う世界大戦へと発展してしまう。
そして滅亡の危機に際したリンドブルムは最終兵器を投入、その結果『雷気』が大陸全土を飲み込む事になる、被害が収まった時に、アレクサンドリア王国の存在した場所には何も無くなっていた、戦争にかろうじて勝利したリンドブルムは、エレクトロープの採取を再開して一時的に国の再建を成功させた。
所がそのエレクトロープ資源が枯渇、王国の技術アドバイザーになっていた月の住人達の協力で、生物のエーテルからエレクトロープの擬似結晶を生成する事に成功する。
だが、その結果、人も含めて世界中の生物、植物が絶滅する事になり、月の住人の勧めで、鏡像世界に
進出して、その世界のエーテルを強奪する事になった。
だが、既に手遅れで、リンドブルム王国の、いや第九世界にはもう数人の王族が残って居るだけと言いう状況になってしまう、そしてその王族達も先の戦闘で月の住民の技術によって魔物化して消滅、つまりこの王は第九世界のたった一人の生存者として、この玉座に座っている事になる。
過去視を終えた流星はここまでの事を、駆けつけたペッコとエステーノに話した。
「そうか、最後に世界に一人だけ残ってしまった王か……」
「愚かだなとは思いますが、可愛そうでもありますね」
だが、そんなペッコ達の感想とは全く関係無く、王の生命は強奪したエーテルに依存しており、王の意識とは関係無く防衛本能のみが働いて、今まさにその最後の手段を取ろうとしていた、エーテルを吸い尽くして、自身を魔物化すると言う禁断の方法だ。
その過程は過去人達やペッコの創造魔法『転身』と同じ物だ。
ペッコはエーテルの波が玉座に集中して行くのを感じて、自分の周りに絶対障壁を展開させた。
「エステーノさん、流星さん、僕の周りに」
そして、その時紫色の光に包まれて、玉座のエル・ファブール14世は、人外の化け物へと姿を変えた。
ペッコ達の転身とは違い、人としての意識を持たない、生存本能のみで行動する魔物と化してしまったのだった。
その姿は流星には、ある意味お馴染みのヴォイドの妖異『ペルソナ』を大型化した姿に見えた。
不定形な身体に人の顔が無数に浮かんだ姿をした巨大な魔物その物だ
「うわ、なんだこの気味が悪い奴は」
竜には強いエステーノも妖異は苦手な様だ。
「妖異ですか? 不気味だな」
とペッコも初めて見る異形の魔物に戸惑っている。
そんな中、ヴォイドの世界、第十三世界に入り込んだ事のある流星は、至って平然として
背中の大剣を抜き、魔物に飛びかかった。
その剣で、魔物の身体を切り裂くが、魔物は直ぐに元に戻り、雷属性の魔法で攻撃をしてくる。
エステーノもペッコも攻撃をするが、魔物は直ぐに元に戻ってしまう。
「なんだ、こいつはキリが無い」
ペッコは、視界をエーテル視に切り替えてみる、すると魔物の足元からエーテルが湧き上がって来て
魔物はそれをエネルギー源にして、身体の修復をしている事に気がついた。
「階下から来る、エーテルの流れを遮断します、一度離れてください」
ペッコは、魔物が座っていた玉座とその台座に向かって、次々と赤魔法士の属性の違う魔法を打ち込んで行く。
「これでどうだ」
最後に強力なメテオを台座に落とすと、魔法障壁で守られていた玉座と台座が完全に破壊されれエーテルの供給も断たれた様だ。
「流星さん、エステーノさん、今です」
「おう、任せろ!」
「行くぞ!」
エステーノが魔物を縦に真っ二つに切り裂くと、流星が横に長剣を振って、上下に切り裂く。
そして四分割された魔物を最後にペッコが、赤魔法『プリフルジェンス』で結晶化して『ノーブルインパクト』で粉々に砕いて消滅させた。
「あ、お前最後に良い所持って行ったな」
「全くだ、なんか奢れよ」
と二人から荒っぽく背中を叩かれたが、これでどうやら、無事に敵の撃破が終了した様だ。
と思っていると、この部屋の片隅から三匹の『小兎族』が姿を表した。
「なんだ、あんなに色々と助けてやったのにあっさりとやられちゃったのか」
「あーあ、これで僕達の世界は消滅しちゃうんだね」
「残念だなぁ、もっと色々と経験したかったのに」
と無邪気に言うが、流星はこれが、エル・ファブール14世を魔物に変えた『月の住人』だと言う事がわかり、彼らに剣を突きつけた
「お前らに聞きたい事がある」
「うわぁ、この人怖いよ」
と逃げようとする所を、エステーノとペッコが捕まえた。
「なんで、こんな事をしたが説明してもらおうか?」
「はい、あの、この世界が無くなるのが嫌で、あの王様にエーテルを沢山食べさせて、星の核になってもらおうと思ったんです、でも全然エーテルも足りないし、王様は魔力が殆ど無いし、一度実験が失敗して次元の壁が壊れてしまって、こっちの世界にはみ出してしまったんです」
「成程ね、でこの後始末はどうするつもりかな?」
「あ、え?……」
「流星さん、僕に考えがあるので、任せてもらえませんか、それと、今この要塞に居る全員を連れて少し遠くに避難してください」
「あ、お前、また超強力な魔法を使う気だな」
「ええ、一気に片付けちゃいますから」
「わかった、全員を脱出させる、準備できてら連絡する」
「はい、お願いします」
流星とエステーノは階層を降りて、要塞内部に居る兵達全てを連れて、脱出した、そしてそのまま要塞から距離を取り、ペッコに連絡をして来た
「さて、君達に聞きたいんだけど、この要塞内は第九世界で間違い無いんだよね」
「え、あ、そうです」
「この要塞から第九世界に行くにはどうすれば良いのかな?」
「要塞の反対側の入り口はそのまま第九世界に繋がってますから、歩いて行けますよ」
「そうか、それでもう第九世界には生命は存在して居ないんだよな?」
「はい? そうですけど何をするつもりですか?」
「ああ、第九世界を第八世界に統合する、第九世界にはもう生命は存在して居ないんだろ、じゃあ統合しても構わないよな?」
「いえ、それは勘弁してください、そんな事したら僕達が消滅しちゃいます」
「自分たちで星を一つ滅ぼしておいて良く言えるね、君達はもう月に帰るなり好きにして良いよ」
ペッコはそう言うと魔法を上に放って要塞の天井部に穴を開けて空に浮いた。
そこから周囲を確認して、全ての味方が要塞から距離をとった所に避難しているのを確認すると、特大のメガ・メテオを作成して、要塞に落下させながら創造魔法を発動して、要塞を完全に消滅させた。
『よしこれでOKと』
そして、そのまま、北に向かって飛行して、第九世界側に移動する。
「成程、ここはもう完全にあっちの世界なんだな」
ここから見る第八世界は、モヤが掛かった様な感じに見える、これが次元の狭間になるのかもしれない。
世界を統合させると言う事は、ゲームの世界でアシエン達が行った霊災を起こすのと同じ事になってしまう、この第九世界は雷属性に覆われた世界で、もしこのまま第八世界と統合したら、第八世界には雷の霊災が起こってしまう事になる。
それを避ける為にペッコが考えたのが、創造魔法で世界を再生する大樹『世界樹』を錬成する事だった。創造魔法の発動に必要なのは、イメージと魔力、ただそれだけだ。義氏として様々なゲームや神話の世界で馴染んだ『世界樹』を錬成して、その世界樹に星のエーテル属性をリセットさせると言う機能と次元の狭間の中でも存続可能な力を持たせた。
錬成された世界樹は、大気中の雷属性のエーテルを吸収しながら、大きく育って行き、やがて空を覆う程に成長した、おそらくゲームの世界にあるクリスタルタワーより高いだろう。
「お主を見ていると本当に飽きないな」
ペッコの中に森の妖精の声が響く。
「えっと、こっちの世界の妖精さんですか?」
「ああ、そうだ、この世界では木々が全て消滅してしまったから、私も消滅した様な物だった、だがこれだけ巨大な樹があれば私の力も元通りになった、感謝するぞ、それでこの後は次元圧縮をするつもりだな」
「はいそうです、イメージはできて居ますから」
「何やらこの樹には色々とありそうだな、どうなるか楽しみだ」
「はい、しかしこの世界を統合させたら貴方はどうなるのですか?」
「問題無い、第八世界の妖精と統合されるだけだ」
「そうですか、では向こうでまた」
妖精との会話を終えたペッコは、創造魔法『次元圧縮』を発動させる。
イメージは画像ソフトのレイヤーと同じだ、頭の中で第九世界をレイヤー化して、第八世界の下側に置く、そしてレイヤー統合をかけると言う過程を魔法で行なうだけだ。
これにより、統合された世界では第八世界のみが存在する事になる、ただし世界樹だけは、第八と第九の境界線にある為に、次元の狭間でそのまま残る事になる。そして第九世界側の世界樹はその一部が第九世界で存在する様に設定してある、この辺りも画像ソフトのオブジェクトのレイヤー間の処理と同じだ。
魔法を発動したペッコは、第九世界の世界樹の横で実態に戻った。
こちらの世界樹はこれから時間をかけて、生命を殆ど全て奪われたキロニア大陸の復興に役に立つはずで
既に、世界樹の周囲には新たな植物の芽が育ちつつある。数年もすれば、この辺りは立派な森林になっているかもしれない。
「はぁ、流石にこれはかなり応えた、みんなの元に戻ろう」
ペッコは絶影を呼ぶと、跨って、全員がほぼ唖然とした顔になっている、連合軍の将兵の所に飛んだ。
「おかえりなさい、魔皇王様」
「あの大樹はなんですか?説明をお願いいたします」
と口々に言われて
「取り敢えず、作戦終了と言う事で、全員連王都まで帰還しましょう、話はそこでいたします」
とペッコは旗艦ヴェーダのキャビンに籠ると、眼を閉じた。




