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64話 幽霊さん


「ワイアットさん!探索者は全員空母に乗り込み退避が終わりました!」


「そうか!」



『名もなき島』へ上陸し、生き残った『レベル0』の三人。そして第二陣の探索者達。


島の外で待機していた空母に、全員の乗り込みが完了した。


アメリカ政府機関のクルーにワイアットは報告を受けると、デッキの上で島を見ながら心配そうに呟く。



「こっちは撤退が完了したぞ。早く戻ってこい【星空】・・・・・・・・・。」






☆☆☆






「いつっっっっっっっっっっっっ!」



彼は思わず声を出した。



ギガンの大剣は彼の頬をざっくりと斬った。



深く斬られた頬から鮮血が舞う。






・・・・・・・・・・彼はずっと小さい頃から親友達と一緒にダンジョンに潜り、探索していた。


親友達に付き合うだけで、彼は強くなろうとは一切しなかった。


小さい頃はドロップアイテムを拾う荷物持ちとして。


そして今は動画配信者として。


チーム【星空】の一番後ろで、ただただ親友達を見守っていた。



しかし、ここはダンジョン。


モンスターがはびこるとても危険な場所。


どんなに親友達が強くて、一番後ろにいたとしても、イレギュラーで襲われる可能性はゼロではない。




でも襲われなかった。




過去一度も。




()()()()()()だ。




ダンジョンにいる【上層】から【深層】のモンスター達。


そして今『名もなき島』にいる魔物やモンスター達も決して彼を襲おうとは思わない。




思わないのだ。




『本能』。




『本能』が彼を絶対に襲ってはいけないと叫ぶ。




襲った瞬間、『絶対的な死』が待っている・・・・・・・・と。




仮に親友達がいなくて彼一人が目の前にいたとしても、魔物やモンスター達は絶対に襲う事はしない。




それ程の『絶対的な死』が彼の周りにはあった。




しかし『本能』を疑い、自分の思った事をする生き物。


ヒューマン。


ギガンは、一瞬『本能』が止めたのを信じる事が出来なかった。






・・・・・・・・・・・・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・何があった?




俺は奴の首を狙って斬った。


あんな何でもない弱い男を仕損じるはずがない。しかし、何故か大剣の軌道が()()た。



動かない。・・・・・・・動かない。


顔が動かない。手が動かない。腕が動かない。足が動かない。



眼だけで自分を見る。


自分は大剣を振った状態で・・・・・・・凍っていた。



そのまま周りを見る。


太陽の光に氷が反射して、草原だった草が光り輝いている。




全てが凍っていた。




ドラゴンも。魔人も。鬼人も。デーモンも。・・・・・そして後ろで控えていた第五部隊の帝国兵も。


数十キロあるこの島全てが凍っていたのだ。


【星空】以外の全てが。



ギガンはそのまま彼を見る。



彼の後ろには一人の女性が立っていた。


3mはある。青い髪の美しい女性が。




俺は・・・・・・・俺はいったい()()()()()()()()のだ?




その女性は、彼の前に出ると、ギガンの顔を乱暴にはたいた。


すると、氷の彫刻が崩れる様に、ギガンはバラバラになって地面へと崩れていった。



青い髪の女性は、崩れたギガンを冷たい目で見た後、彼の方へ振り返る。




「・・・・・・・ソラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!大丈夫???ねぇ!!!大丈夫なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ???」


めっちゃ泣きそうな顔をして、斬らて血が出ている僕の顔を優しく触る。



「何やってんだ!【ディーレ】!ソラの大事な顔にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!傷が付いてるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


いつの間にか現れた3mはある、赤い髪の美しい女性が吠える。



「【ディーレ】さぁ~。あんたが~。今日はソラの近くにいられる日じゃん。・・・・・守れないなんてちょ~最低~。」


また現れた3mはある、白い髪の美しい女性が冷たい声で罵る。



「さぁソラ。頬を見せて?すぐに治してあげる。」


またまた現れた3mはある、緑の髪の美しい女性が優しく僕の頬を触ると、あっという間に傷が塞がり、元の頬に戻った。



僕は四人の美しい女性を見上げながら笑顔で言う。



「【ディーレ】、【ミレ】、【フェイ】、【グリーン】。みんな来てくれたんだ。傷を治してくれて、助けてくれてありがとう。でもビックリしたなぁ!みんないつもと違って、やけに大きくて、凄く綺麗なんだもん!」



「そっそう?」


「はっはっはっ!ソラに言われると照れるな!」


「うち。綺麗って言われた♪ ちょ~嬉しい!」


「フフフ。ソラ。ありがとう。」



『幽霊さん』はみんな喜んでいる。



やっぱりチョロいな。



「あん?まだ空に小虫がいるな。・・・・・・・ソラとの時間を邪魔すんな!!!」



【ミレ】が空に向かって軽く手を払った。



ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!



空が炎に包まれた。



空に飛んで控えていた妖鳥達が一瞬で溶けて地上へと落ちていく。


僕はカメラを向けてその様子を撮影しながら、コメント欄を見た。




<コメント>


■ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???


■何だ?何だ?何なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???


■何があった?ねぇ!何があったの???


■ちょっと待て!ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■頭が整理出来ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■ソラ!流石に死んだと思ったぞ!!!


■何で生きてんだよ!!!


■意味が分からん!!!


■しかも何か出てきたぞ!!!


■みんな凍ってる!みんな凍ってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!


■お空が真っ赤!お空が真っかっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■ソラ!説明!!!


■ソラさん!説明してください!!!


■ソラ!説明求む!!!




めっちゃ荒れていた。



「えっとですねぇ。ん~何て言ったらいいんだろ。・・・・・じゃあ、直接聞いちゃいましょう!それじゃ皆さん!自己紹介ついでに視聴者に分かりやすくお願いします!」



僕は『幽霊さん』達にカメラを向けた。



青い髪の美しい女性がカメラの前に立つと言う。


「・・・・・・・私は、水や・・・・・冷気を司る者【ディーレ】。前から【星空】(ソラ)を知っていてな。偶然見かけたから(ウソ)暇つぶしに助けたまでだ。(ソラにそう言わないと口を聞いてくれないと言われた。)」



横から赤い髪の美しい女性が言う。


「俺は、火や・・・・・熱を司る者【ミレ】だ!偶然見かけたから(ウソ)寄ってみた!よろしくな!」



白い髪の美しい女性が笑顔で言う。


「あ~しは風や・・・・・空気を司る者【フェイ】じゃん。偶然ソラっち見かけたし~(ウソ)。よろしく~♪」



緑の髪の美しい女性がお辞儀をしながら言う。


「私は、大地を司る者【グリーン】。たまたま見かけたから(ウソ)来たの。よろしくね。」




<コメント>


■ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■司る者だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ???


■意味分かんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■えっ???何???精霊???神様???


■ファンタジーじゃん!めっちゃファンタジーじゃん!!!


■偶然ってwww ソラすげぇ強運www


■でも良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■マジで良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■泣きそうになったぞ!俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■ソラ!お前無茶しすぎだ!!!


■ソラ!お前一般人なんだからもっと気を付けろよな!!!


■ソラ!お前がいないと観れないんだからな!頼むからもっと自分を考えろよ!!!


■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!良かったでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!




めっちゃ驚きと心配コメントが流れている。


僕を気遣うコメント・・・・・・ありがたい限りである。



僕は周りを見る。



ん???



これは使えるぞ!!!



僕は白い髪の女性に向かって言う。


「ねぇ【フェイ】。僕を空高く、空中に上げる事は出来る?それと綺麗な空がよく見えないから、結界も壊して欲しいんだ。」


「ソラに~♪頼まれたら~♪あ~し何でもやるし~。よゆ~♪」


・・・・・・彼女はよく僕と一緒にアニメを観ていた『幽霊さん』だ。完全にアニメギャルの喋りが影響されている。間違っているけどね。



そう言うと【フェイ】は僕の背中から優しく抱きしめると、そのまま空へと飛んだ。


その後に、他の三人も飛んでついてくる。



「あれ~?まだ小虫がいたじゃん。【ミレ】は本当に雑すぎで最低じゃん?一緒に綺麗にしちゃお♪」


そう言うと、【フェイ】は飛びながら手首を軽く振った。






☆☆☆






「何だ!何が起きた?」



隊長が叫ぶ。



遥か上空。



探索者達との戦いを『ファイン帝国』の上層部に届ける為、飛空魔法を使って撮影していた数十人の魔術師達。



途中まで圧倒的な強さで蹂躙していた我が部隊が一瞬で崩壊した。



信じられない光景だった。



「おっおい!結界が!!!」


一人の魔術師が上を指すと、先程まであった結界が跡形もなくなっていた。


「いったい何が・・・・・・ん?」



パンッ!!!!!



一瞬の空気の圧縮。



空中にいた全ての魔術師達は、全て潰れて落ちていった。




輝く太陽。



真っ青な空。



結界が解けてかなりいい状態だ!



僕は空中で『名もなき島』全体をカメラでゆっくりと左から右へと移しながら撮影する。



「皆さん・・・・・・・見てください!島全体が凍ってます!!まさしく・・・・・・・アイスワールド!!!」



眼下に見えるのは・・・・・・・島全体が凍っている景色だった。



数十キロはある平坦な草原は全てが凍り、結界が解けた太陽を浴びて、更に輝きを増していた。


まるで宝石が散りばめられた様な圧巻の美しさだった。




<コメント>


■はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


■ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■これは言葉にならねぇな。


■凄い。島が全部凍ってるわ。


■とっても綺麗。


■雪まつりや氷まつりなんて目じゃないなwww


■スケールが違いすぎるwww


■ソラ!スクショ撮るからここで固定で!!!


■ソラさん!私も撮るから止まっててください!!!


■俺も!!!


■私も!!!




フフフフフ。



大成功だ。



こんな景色はどんな場所に行っても見る事は出来ない。



他の動画には無い、オリジナルな動画を常に提供していれば、『空ちゃんねる』のファンはもっと増えるはずだ。


今は世界中の人達が『空ちゃんねる』を見ている。


多分、ほとんどの人がこの一回限りで離れていくだろう。


だからこそ、次もきっと面白い物を観せてくれる動画だと思わせないといけない。




「いや~!本当に綺麗ですよね!」


調子に乗ってカメラを島に向けながら話していると、【ディーレ】が左隣で嬉しそうに答える。


「そうでしょ!そうでしょ!私が凍らせたのよ!綺麗よね~♪♪♪」



【ミレ】が黙って、右手を振った。



ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!



数十キロある島が一瞬で炎に包まれた。



火が・・・・・炎が立ち昇る。



島があっという間に赤く染まった。



【ミレ】は僕を見ると、嬉しそうに言う。



「ソラ!どうだ?こっちの方が赤くて綺麗だろ???」



【ディーレ】が黙って、右手を振った。



ピシッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!



一瞬で島全体が凍った。



【ディーレ】が嬉しそうにこっちを見る。



「ソラ~?こっちの方が綺麗だよねぇ???」



【ミレ】がだまって、また右手を振った。



ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ピシッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ピシッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ゴォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ピシッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!




島全体が炎と氷で交互に覆い尽くされる。




僕を嬉しそうに抱きしめている【フェイ】。



その後ろで呆れて見ている【グリーン】。



僕はカメラを向けながら、視聴者さんに話しかけた。


「どっどうですか!アイスワールド!・・・・・・・そしてファイヤーワールド!・・・・・・・どっちも綺麗ですよね!」




<コメント>


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。


■綺麗じゃねぇよ。




久々に同じコメントが並んだ。






そして、この夏休みは結局三日間しか引きこもる事が出来なかった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  仲間達の生霊が会いに来てたと思っていたらとても上位者だった……。
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