表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/133

51話 それぞれの思惑



日本。アメリカ。中国。フランス。ドイツ。イギリス。カナダ。インド。・・・・・そしてもう一つ。




20年前。


突如として現れた9つのダンジョン。


そのダンジョン保有国として名付けられたのが【D8】だった。




そして今。




アメリカ合衆国。


首都ワシントンDC。



急遽、他の主要国も交えた【D8】首脳会議が行われていた。



大きな円卓に、首脳達が座っている。



議長国のアメリカ大統領、チャーチ・プリュードが話し始めた。


「・・・・・既に報告を受けていると思うが、日本の探索者チームが今、ライブ動画を行っている。そこで新情報がもたらされた。我々が保有しているダンジョンが、別の世界への通り道だという事だ。」


「・・・・・まさか別世界の通り道だったとは。」


「異世界だったとはな。」


「資源や新しいアイテムだけではなかったという事か。」


「どういう構造になっているんだ?」



周りがざわつき始めた所を、チャーチが手を前に出して静める。



「魚人族の王女の話だと、我々がダンジョンの最下層【深層】と呼んでいた所が、実は『ファイン帝国』という国の、離島にある【監獄島】だった。その【監獄島】に行こうにも、レベル6以上の実力のある探索者でなければ行くことも出来ない。・・・・・そうですね?中国の主席よ。」



突然振られた中国の主席は黙っている。



「新情報がもたらされた次の日に、すぐに多くの軍隊をダンジョンに突入させたみたいだが・・・・・結果は芳しくないようだな。」


「ダンジョンにいるモンスターは、我々の兵器がまるで通用しない。兵を無駄に死なせるだけだ。」


チャーチの問いに、フランス大統領が答えた。



「ダンジョンを攻略するには、探索者を鍛えるしかない。しかし、【監獄島】に辿り着いたとしても、その島の周りは強力な結界が張られている。・・・・・おそらく、そこから出ることは厳しいだろう。」


「今探索している日本チームが結界に穴を開けたんだ。何とかなるのではないか?」


ドイツ大統領が口をはさむ。



「我々日本は有事でもない限り、強制する事はしないし、出来ない。ましてや、あのチームは日本のトップチームであり日本の宝だ。・・・・・そうでしょう?【レベル0】を抱えている方達。」


日本総理大臣、神崎一樹かんざき かずきは、アメリカ、フランス、イギリスの大統領を見て言う。



「・・・・・私もすぐに【レベル0】に依頼をして、【監獄島】の結界の破壊を頼んだが、破る事は出来なかった。」


「私もだ。」


「私も。」


チャーチが答えると、フランスとイギリスの大統領も続く。



「神崎。そういう事だ。【レベル0】でも破る事が出来なかった結界に穴を開けたのが日本の探索者チームだ。・・・・・大事にするといい。」


「当然だ。」



カナダの大統領が手を挙げる。



「それで?これからどうするのだ?」


「専門家の意見によれば、おそらく【ゲート】は9つ存在する。8つは保有している国のダンジョン内に。そしてもう一つは・・・・・。」



首脳達は顔を見合わせる。



「「 『名もなき島』・・・・・か。 」」



インドの大統領と中国主席が呟いた。




『名もなき島』。


ハワイ諸島の近くに、ダンジョンと同じ時期に突如として現れた島。


周りが霧で覆われていて、島の様子が一切見れない。


最新の技術をもってしても、霧の中を見る事が出来ず、上空からヘリで入る事も出来ない。


唯一入る事が出来るのは、霧が一カ所だけない場所。


そこに【D8】や他の主要国の探索者を送り込んだが、入ったら最後。


戻ってくることはなかった。




「・・・・・『名もなき島』は、リスクがありすぎる。」


「レベル6やレベル7を送り込んでも、一人も帰ってこなかったんだぞ!」


「しかし可能性があるのは、あの島でしかないのではないか?」



チャーチが手を上げて、皆を静かにさせる。



「もうすでに、ダンジョンが発見されて20年も経っている。我々と違って、あちらの世界は既に我々の世界と繋がっていると知っていたら?・・・・・いや、知っていると考えた方がいいだろう。8つの【監獄島】は、我々を異世界の外へ行かせない為に作られた可能性が高い。」

 


腕を組んで黙っていた神崎が答える。


      

「【ゲート】はあと一つ。・・・・・『ファイン帝国』と言ったか。あの国に行くことが出来るのは『名もなき島』からしか行けない、という事になるな。」



チャーチはミネラルウォーターを一口飲むと、みなに問いかける。


「まずは、あちらの世界とコンタクトを取れる様に模索するべきではないだろうか。」



「「「 !!!!! 」」」


「危険だ!」


「相手が分からないと対策のしようがないだろう!」


「そうだ!動くべきだ!」



意見が飛び交うが、チャーチは続ける。


「皆さん。我々は今、あちらの世界・・・・・『ファイン帝国』に行くすべがない。だがもし、『ファイン帝国』がこちらに自由に来れるとしたら?」



チャーチの言葉に周りは静まり返った。



チャーチは続ける。


「早急に話し合って今後の方針を決めていこう。そして、今は専門家や解析班が『空ちゃんねる』を観て分析中だ。我々はまず、これを注視していこうではないか。」



全員が頷いた。






この会議は話し合いが続き、三日間続いたのだった。






-------------------------別世界---------------------------




「結界に穴を開けたか。」



とても広い謁見の間の中央にある王座。


そこに座って報告を聞いている皇帝が呟いた。



その横には、重鎮や幹部、そしてこの帝国を守る将軍達が並んで同じように報告を聞いている。


まさしく、この『ファイン帝国』の中心人物達が揃っていた。



「・・・・・異人は、穴を開けて魚人族を逃がした模様です。そして今はあの『妖精の森』へと入っていきました。」


「そうか。・・・・・ところでエルメ。そなたなら結界に穴を空ける事は可能か?」



並んでいた将軍の一人が、皇帝の前に出て跪くと答える。



「あの結界は、高位の魔術師達が年月をかけて作り出した代物。時間をかければ出来ますが、その場ですぐに空ける事は私でも難しいでしょう。」


「そうか。」


皇帝は考え込む。



それを見ていた将軍の一人が思う。



昨年、新しく即位した新皇帝。



ファイン・ハート。



前皇帝の父親が引退し、皇太子だったハートが新しい皇帝となった。


ハートは、理想主義者の前皇帝と違い、現実主義者だ。


どう動く?



考えていたハートは皆を見つめた後、話始めた。



「・・・・・父上、前皇帝は20年間ずっと慎重だった。偵察隊を異人の世界に送り込んでずっと探っていた。・・・・・それで分かったことは、異人の世界は我々の世界に比べて遥かに大きい。人口は、我々の10倍はいるだろうという報告だ。だが、魔法は一切使えずに、武器もモンスターには効かない。・・・・・とても弱いヒューマンだ。」



間をおいてから続ける。



「分かった時点ですぐに侵攻すれば良かったものを・・・・・父上は融和の道も探っていたようだ。だが、そのおかげで異人を強くしてしまった。・・・・・今脅威なのは誰だ?」



調査隊の隊長が前に出て跪くと報告する。



「ハッ!我々に対抗できるのは『探索者』と呼ばれる者達。その中でも脅威なのは【レベル0】と呼ばれている三人だけかと思われます。後、気になるのは今、一つの【監獄島】にいる探索者達だけでしょうか。」


「・・・・・【星空】か。結界に穴を開けて、そして『妖精の森』へと入っていった者達。・・・・・そのままあの『森の守護者』を倒してくれると助かるのだがな。」




『妖精の森』がある島。


ファイン帝国でも、あの島だけは侵略する事は出来なかった。


『森の守護者』がとてつもなく強いモンスターであり、そしてその先には『妖精の国』を治めている妖精王がいるからだ。



だからこそ【ゲート】を置いて、【監獄島】として異人達に開放した。


あわよくば倒してくれる事を期待して。



結果として、8つの【監獄島】に【ゲート】を移動した中で、一番モンスターが強く、攻略困難な島となった。


その島を攻略しようとしている異人の探索者達。



「あの者達は、逐次、調査班に報告をさせよう。まずは・・・・・・。」



ハートは立ち上がる。



全員が、皇帝の前に移動すると跪く。



「計画通り進めよ。」


「「「「「 ハハッ!!! 」」」」」



謁見の間から見える空をみて、ハートはニヤリと笑う。






「まずは異人達よ。どう反応するか楽しみだ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ