50話 深層攻略5日目 3
僕は湖をバックに、親友達、そして特別参加のさる吉を見ながら話す。
「いいかい皆!ルールはいたって簡単だ!この中で一番多く釣った人が勝ち!一位が最下位の人に何でも頼める券一枚進呈するという事で!」
「「「「「「 オ~♪♪♪ ウホウホ! 」」」」」」
釣り竿に餌を付けて一斉に湖へと投げる。
さる吉には、僕が釣り方を教えてあげた。
5mある巨体を大人しく体育座りしながら、親指と人差し指で小さい釣り竿を挟んで器用に釣り始めた。
フフフフフ。僕はこう見えて、小さい時からよく海の堤防で釣りをしていたのだ。絶対に一位になって、クウガやエイセイがビリなら好きな物を買ってもらおう。そして女性陣なら陰キャな僕と一日デートしてもらって、思い出作りに協力してもらおうではないか。・・・・・負けられない戦いが今始まった。
30分経過。
「おし!これで俺は五匹目だ!」
見た事ない大きな魚を釣り上げるクウガ。・・・・・あなた、釣りはそんなにした事ないって言ってたよね?
「よし釣れた!これで僕も三匹目だな。」
爽やかな笑顔で釣った魚を僕に見せるエイセイ。・・・・・あなた、テレビの企画の時でしかやった事ないって言ってたよね?
「おっと!ま、また釣れたぞ!どうやって外すんだ?」
二匹目を釣ったアカリが僕に針を外すように頼んでくる。・・・・・あなた、初めてって言ったよね?まぁ外すけどさ。
「・・・・・よし。四匹目。」
無言で淡々と釣り上げるココセ。・・・・・あなた、釣り人ですか?
「キャッ!釣れたわよ!ソラ!早く!」
四匹目を釣ったスピカが僕を呼ぶ。・・・・・あなたはよく僕と一緒に、堤防で釣ってたからわざわざ行かなくても出来るよね?
「ウホッ!ウホッ!ウホホッ!」
さり気なく三匹目を釣り上げるさる吉。・・・・・とても楽しそうだ。
「・・・・・・・・・・・・。」
ワタクシ。今現在、0匹。
ヤバい。・・・・・ヤバいぞ。釣り人として、そしてゲーマーとして由々しき事態だ!
何としても、何としてもここから逆転してやる!
それこそが、俺だ!!!
「必ず・・・・・必ず、釣ってやりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
叫びながら釣り竿を投げた。
結果。
一位。クウガ:九匹。
二位。スピカ・ココセ:七匹。
四位。エイセイ:六匹。
五位。さる吉:五匹。
六位。アカリ:四匹。
ビリ。僕:0匹。
チーーーーーーーーーーーーーン。
僕は真っ白に燃え尽きた。
<コメント>
■ソラ。お疲れw
■ソラさん。お疲れ様ですw
■しょうがないw
■そう言う日もあるさw
■初めて釣りをする人に負けるソラw
■さる吉にも負けるってwww
■ドンマイwww
■燃え尽きてるwww
■こういう日もあるでごわす!!!
僕は泣く泣く、何でも頼める券を一枚クウガにあげた。
二位のスピカとココセが地団駄を踏みながら悔しがっていた。
空を見ると日も沈みかかっている。
「よし!それじゃ、キャンプの準備をしようか!」
「「「「「 オー♪♪♪ 」」」」」
すぐに僕達は準備を始めた。
何故かさる吉も手伝ってくれたので、あっという間に終わり、次はお楽しみの夕食だ。
いつもの様に、ちょっとしたミュージックを絡ませる。
「さぁ!キャンプの準備も終わったので、そろそろ始めましょう!【星空クッキング】~!!!ドンドンドン!!!パフパフパフ~!!!」
「「「「「 イェーイ♪ ウホウホ♪ 」」」」」
みんなの楽しそうな声が森に響いた。
「さて!本日の【星空クッキング】の担当はこの方・・・・・スピカさんです!」
「よろしくね♪」
ペロッと舌をだして、撮影している僕に笑顔を向ける。
そして赤い髪を後ろに束ねると、料理を作り始めた。
クソッ!
めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか。
何と言うか、その仕草だけでグッとくるのは僕だけじゃないはずだ。
<コメント>
■うぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■かわえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■めっちゃかわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■うなじが!うなじがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■髪を束ねただけなのに、それだけなのにぃぃぃぃぃぃ!!!
■ソラ!もっとアップだ!!!
■ソラ!もっと近くに移動してくれ!頼む!!!
■俺も一緒に料理したい!!!
■俺は料理されたい!!!
スピカは、様々な肉や野菜を鍋に入れている。それと同時に、釣った異世界の魚の内臓を綺麗に取って、串を口から入れる。そしてたっぷりの塩をつけて火の所に何本も刺していった。
魚の焼ける匂いが食欲をそそる。
「はい!出来たわよ!栄養価の高い、スピカ特製元気シチューと、皆が釣った焼き魚ね!」
「「「「「 オォォォォォォォォ♪♪♪ 」」」」」
思わず声が出る。
皿にたっぷり入ったクリームシチューと皆が釣った焼き魚。とても美味しそうだ。・・・・・まぁ僕は釣ってないけどな!
「それでは!・・・・・いたマンゴ!」
「「「「「 いたマンゴ!!! アッハッハッハ!!! 」」」」」
まずは、異世界の焼き魚から一口。
結構大きい。今までの川魚とは大きさがまるで違った。
僕は豪快に背中からかぶりつく。
パリパリの皮、中身はホクホク。丁度いい塩加減も相まってマジで旨った。
「ウマっ!」
思わず声が出る。
そして、スピカ特製元気シチューを一口。
これも優しい味でとても美味しい。
「この組み合わせはヤバいな!」
「おぉ!うますぎるぞ!」
「この魚は食べ応えがあって旨いな。あと、シチューは言う事なし!」
「このシチュー本当に美味しい。スピカ。後で教えて。」
「・・・・・うん。美味しい。やるな。スピカ。」
「・・・・・旨い。・・・・・とても旨い!・・・・・ソラ!美味しい!ウホッ!ウホッ!ウホホッ!」
手伝ってくれたので、さる吉にもお裾分け。
料理した物は食べた事がないって言ってたから、感動して飛び跳ねながら喜んでいる。
まぁ、体がデカいから、スピカには同じ鍋の量をもう一個分作ってもらったんだけどね。
<コメント>
■ホント、チャレンジャーだよな。ソラはw
■迷いなく一番最初に異世界の魚をかぶりついたなw
■しかしでけぇなw あんな魚見た事ねぇしw
■それでいてめっちゃ旨そうw
■よくよく考えたら、今もすげぇ事してるんだよな。
■この世界にない、異世界の魚を食す。【星空】が初めてだぞ!!!
■もう全てがビックニュースで草。
■俺達がそれを観れてるのはホント信じられんわw
■ソラに感謝だな。
■スピカちゃんのシチューマジで旨そう。食べたい。
■俺も!
その後は、皆でゆっくり食事した後にお風呂に入った。
今日はさる吉達との戦闘で疲れたのか、アカリとココセ、そしてクウガがお風呂から出るとすぐに寝てしまった。
空を見上げると、大きな月と星が満点に輝き、湖を照らしてとても綺麗だ。
僕はキャンプチェアーを取り出すと、湖のほとりで座りながらホットコーヒーを飲む。
その後にスピカとエイセイが同じ様にキャンプチェアーを持って、僕の左隣に並んで座り、ホットコーヒーを飲み始めた。
いつの間にか右隣には、さる吉が大きな図体で大人しく座っている。
「さる吉。今日はいっぱい仲間を倒しちゃったけど、大丈夫?」
「・・・・・ソラ。大丈夫。・・・・・私がいればいくらでも蘇る。」
「えっ?そうなの?」
「・・・・・・あれは私が生み出した者達。・・・・・壊れればまた生み出せばいいだけの事。」
「へぇ~。そうなんだ。」
知らなかった。あんな強いモンスター達を、さる吉が生み出していたとは。
僕は、座りながら隣にいるさる吉を触る。
手が真っ白な毛に埋まり、とても気持ちがいい。
「すごいサラサラしてる。背中に乗っかったら、フカフカして気持ち良さそうだな。」
「・・・・・ソラならいくらでも触っていい。・・・・・あとで乗せてあげる。」
「本当に?」
「私も乗せてくれるのよね?」
「・・・・・しょうがない。・・・・・・乗せる。」
「ちょっと!ソラと態度が違うじゃない!」
スピカが文句を言うと、嬉しそうにさる吉はウホウホ笑っていた。
それを呆れた顔で見ていたエイセイが何かに気づくと僕に呟く。
「ソラ。・・・・・・あれ。」
「ん?」
僕はエイセイが指さした湖の中央を見る。
うっすらと月の明かりで光る湖。
その真ん中だけが、とても光り輝いていた。
そして小さい光の塊が現れ、不規則に浮かんでいる。
かなりの光の数だ。
蛍の光に比べて、かなり大きい。
その光達が、そのまま僕の方へとやってくると、僕の目の前で止まった。
僕はカメラでその光を撮影する。
「・・・・・みなさん。見てください。これは・・・・・妖精?」
携帯電話位の大きさの、羽の付いた可愛い女の子。
それが僕の目の前で楽しそうに飛んでいた。
手の届く、一番近くにいる妖精を触ってみる。
頭を撫でたり、羽を触ったりしてみた。
「すごっ!見てください!やっぱり羽が付いていますよ!」
妖精はキャッキャ、クスクス笑っている。とてもくすぐったそうだ。
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!
■キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■何だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■妖精だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■妖精きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■完全にファンタジーじゃん!!!
■えっ?これ現実?アニメじゃなくて???
■いや!マジでいたの???
■本当に妖精???
■凄ぇ!!!やっぱり小さいんだな!しかも羽もついてる!!!
■ソラが躊躇なく触ってるのが草。
■いや!分かるわ!俺だって目の前にいたら触りたいもん!
■いいなぁ!ソラ!
僕が目の前の妖精に感動しながら触っていると、僕の周りは妖精だらけになっていた。
数百匹はいる。
僕の周りだけ、妖精がまとう光でとても明るかった。
僕は、沢山の妖精が飛び交うのをぐるっと撮影する。
そして、カメラを右手で持ちながら自分の左手を映す。
肩から腕、そして掌の上まで、楽しそうに妖精が掴んだり、飛んだりして遊んでいる。
もう言葉に出来ない程の、感動がそこにはあった。
<コメント>
■フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
■いっぱいいるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■何これ???
■マジで凄い!!!
■妖精がこんなに沢山!!!
■感動!!!
■もう言葉にならない!!!
■素敵!!!
■ずっと観ていられるわ!!!
■凄い体験!!!
■感動でごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
隣を見ると、スピカとエイセイも目を輝かせていた。
それ程、この光景は圧巻だった。
暫く妖精と戯れていると、湖の中央から強い光が現れる。
その強い光が現れると、僕の前へとゆっくりと飛んで来て止まる。
見ると、僕達と同じ位の大きさの、虹色の羽を付けた美しい女性だった。
僕はキャンプチェアから立ち上がる。
「・・・・・貴方は?」
「・・・・・人の子よ。私は妖精を統べる者。アルミル。・・・・・お主は?」
「僕はソラ。」
「フム・・・・・。」
アルミルは地面から少し浮きながら、湖を囲んでいる木々を見ながら言う。
「・・・・・ここは『妖精の森』・・・・・そして『妖精の国』への入口。・・・・・・って、こっこれ。やめぬか!・・・・・・・・・あんっ♪」
僕は思わず、とても綺麗な虹色に光る羽や腕とかをベタベタと触っていた。
先程と違って、大きい妖精は初めてだから興味津々だった。
・・・・・何故かスピカに殴られた。そして、一瞬だけ見えた『幽霊さん』がもの凄い形相で怒っていた。
<コメント>
■ソラ。お前。マジですげぇなw
■全然人の話聞いてねぇしw
■普通に触ってたなw
■統べる者って言ってたよな。妖精王じゃね?
■関係なく触りまくってたなw
■セクハラ以前の問題だなw
■ソラ!お前のチャレンジ精神に乾杯!!!
■ソラ!お前にはもう何も言えねぇwww
「すみませんでした。」
スピカに殴られて素直にあやまる。
「ウッ、ウム。まっ、まぁよい。私はお礼を言いたくて来たのだ。・・・・・そこにいる、『森の守護者』を殺さないでくれて感謝する。」
そう言うと、隣にいるさる吉を見る。
「えっ?森の守護者って?」
「ウム。この『妖精の森』を守っているのがこの者なのだ。この者が倒されたら、『妖精の森』も簡単に侵入を許してしまう。だからこそ、お主達が殺さずに慈悲を与えてくれたのに感銘を受けてな。一度お礼に会いに来たのだ。」
「そうなんだ。・・・・・って、『妖精の国』ってあるんですか!?」
「ウム。ここは、『妖精の国』の玄関みたいな所だ。・・・・・来たいか?」
「行けるんなら行きたいです!」
「フフフフフ。・・・・・やめておこう。これ以上ちょっかいを出すと、怒る者がいるのでな。」
クスクス笑うとアルミルは言う。
「お主は不思議だな。・・・・・あの者達が夢中なのも分かる。・・・・・・人の子よ・・・・・いや、ソラよ。改めて礼を言おう。・・・・・ありがとう。」
僕は笑顔で頷くと、そのままアルミルは眩い光となって消えていった。
それを追うように、数百匹いた妖精達も嬉しそうに僕に手を振って消えた。
辺りは、夜の湖に戻る。
僕はキャンプチェアに戻って座ると二人に話す。
「・・・・・とても感動したね。」
「うん。」
「あぁ。」
妖精に会えるなんて思ってもみなかった。
寝てしまった親友達には可哀そうだけど、後で話だけでも伝えよう。
僕達は、さる吉に別れを告げると、テントに入って爆睡した




