52話 深層攻略6日目 1
「うひょぉぉぉぉぉぉ!気持ちぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
妖精達と触れ合った次の日の朝。
僕はさる吉の背中におんぶさせてもらって、森の中を駆けていた。
後ろを見ると、仲間達も白いサルにおぶさりながら喜んでいる。
朝飯を食べた後、先に進む為にさる吉に別れを告げようとしたが、山の麓まで連れて行ってくれると言ってくれたので、あまえる事にしたのだ。
朝日に照らされた森の木々を、長い腕を使って飛ぶように伝って行く。
何か遊園地のジェットコースターに乗ってるみたいで、とても面白かった。
あっという間に森を抜ける。
抜けると、すぐ目の前には山がそびえ立っていた。
さる吉の背中から僕は降りる。
「さる吉!ありがとう!」
「・・・・・ソラと別れるの寂しい。・・・・・また来て欲しい。」
「あぁ!また会いに行くよ!約束だ!」
寂しそうにしょんぼりしている、さる吉の真っ白な毛で覆われた指を握る。
すると跳ねながら喜んだ。
「ウホッ!ウホッ!ウホホッ!・・・・・約束!約束!」
僕達は、さる吉に手を振って別れた。
「いゃ~気持ち良かったですね!」
カメラに向かって問いかける。
<コメント>
■目が回ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ウッ!!!
■ウェッ!!!
■気持ち良かったっていうより、気持ち悪いわ!
■木と木を飛んで移動してるから、目が追い付かなくて、ちと酔ったw
■すごい速さでしたね!
■何か映画の○パイダーマンみたいだったわw
■実際に乗ってたら気持ちいいんだろうな。
■さる吉、意外と可愛かったなw
■モンスターなのに愛着がわいたわw
■さる吉、さようなら。
僕は山を見上げる。
木は一つもない。
岩だらけの山だった。
ここにいるってレミリアが言っていたな。
ゴールはもうすぐだ。
「さて!とうとうここまで来た!【深層】の支配者を倒しに行くぞ!」
「「「「「 オ~♪ 」」」」」
皆で元気よく跳ねた。
「や~ま♪やまやま、や~ま♪やま!!!」
今日も晴れてて気分がいいので、即興の歌を口ずさみながら山を登って行く。
アカリとクウガ、ココセが少し暗い。
昨日、妖精達に会った事を伝えると、先に寝てしまって後悔しているみたいだ。
いつかさる吉に会いに行った時に、あの湖でまた妖精達にも会えるだろう。
それまでは、我慢してもらうしかないな。
僕は気分を変えようと話をする。
「そういえば、森のモンスターは強かったね!インドダンジョンの時からさかのぼっても一番なんじゃない?」
「あぁ!白いサルやゴリラは強かったな!」
「でも、やっぱりあのさる吉ね。あれは、今までで一番強かったわ。」
「強いね。弾丸を避けたからな。」
「・・・・・硬いし、速いし、力もある。・・・・・今までで最強。」
「そうね。ソロなら厳しいと思うわ。」
<コメント>
■やっぱり、さる吉強かったんだw
■初めて【星空】がチームで戦ってたもんな。
■俺達じゃ、相手にもならんな。
■あんなモンスターに遭遇したら、私達も全滅ね。
■トップクラン達が諦めてるw
■それだけ、さる吉が強かったって事だな。
■インドダンジョンってソラさんが言ってましたけど、行った事あるんですか?
■俺は古参だから知ってるけど、ソラ達は日本ギルドに登録する前は、ずっとインドダンジョンで探索してたみたいだぞ。
■小さい時からなw
■そういやインドダンジョンはどこまでいったんだ?
何か盛り上がっていたので、コメントを見て返答する。
「インドダンジョンですか?【深層】を全て探索しました。それで支配者も倒しましたよ?」
まぁ、僕はその時は何もする事がなくて、見てただけだがな!
<コメント>
■マジか!!!
■すげぇな!!!
■マジで?何歳から深層に行ってたんだよw
■どんだけだよw
■どうりで強いわけだw
■他の深層を攻略してたとはなw
■最近日本に住み始めたインド人ですが、【星空】はインドでは英雄ですよ!
■『空ちゃんねる』はインド人の人達も結構観てると思いますよ!
■それにしても日本ギルドの評価低くないか?
■しょうがないさ。前の実績も評価されるが、リーダーがいるからな。
■あっ。そういう事ねw
■あ~納得w
■おい!それ以上はやめとけよ!
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ???」
思わず僕は、コメントを見ながら奇声をあげた。
カメラの画像には常にライブ動画の視聴者数が表示されている。
5,000万人になっていた。
僕は一度視線を外す。
結構山を登ったので、下に見える景色が素晴らしい。
『妖精の森』が神々しく見える。
落ち着いてもう一度見た。
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・・・。
うん。
やっぱり5,000万人だ。
何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「さっき変な声出してすみません。何か視聴者数が凄い事になってたの、今気づいたので。」
<コメント>
■うぉぉぉ!5,000万超えてんじゃん!!!
■すげぇな!!!
■やべぇな!!!
■もう断トツの世界一じゃね?
■人口でいったら、韓国の人達が全て観ている数字じゃんw
■まぁ~これは世界中の人が観るわなw
■初の異世界動画だもんなw
■世界中の政府関係者も観てんじゃね?w
■やったなソラ!
■ソラおめ!
■おめです!
■ソラさん!おめでとうございます!
■前から観ている俺は誇らしいぞ!
■おめでとうでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
「ありがとうございます!」
あまりの数字に現実味がない。
5,000万ってなんだよ。意味が分からん。
初の深層動画だから、そこそこは視聴されるだろうと目論んでいたけど、それでも100万人位だ。まぁスタートから簡単に超えていたけどさ。でもその数十倍ははっきりいって異常だ。ここが異世界だという事が分かったのが大きいのか?
うん。
僕は考えるのをやめた。
暫く登って、日が少し傾きかけてきた頃、ちょっとした広い所へと出た。
僕はカメラを向ける。
「接敵しましたね。・・・・・また新しいモンスターです。」
岩が突き出ている上やその上空には、結構な数の飛竜?が休んでいたり飛んでいたりしている。
そして岩を背に、座っている10m程もある一つ目の巨人。
<コメント>
■きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■あれってあれじゃね?ワイバーンだろ!!!
■しかもあのでっけえの!あれも見た事あるぞ!!!
■サイクロプスじゃね???
■うぉぉぉぉ!すげぇ!ファンタジー!ファンタジーだ!!!
■マジであんなのいるんだな!!!
■現実にいると、さすがに引くわwww
■結構デカいぞ!!!
■大丈夫か???
■さる吉は強かったけど、ここは平気なのか???
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
突然銃声が鳴り響く。
岩の上で休んでいた数匹のワイバーンの頭が吹き飛んだ。
それを撮影した後に、カメラを横に移す。
銃口には少し煙が出ている。
スナイパーライフルを持って構えているエイセイがいた。
「・・・・・here we go!」
飛んでいるワイバーンに狙いを定めて撃ち始めるエイセイ。
スピカも一緒に炎の魔法を撃ちこむ。
それに合わせて獲物を取られまいと、アカリがサイクロプスに向かって駆けた。
アカリが向かってくるのを見たサイクロプスは、ゆっくりと巨大な棍棒を手に持ち立ち上がる。
すると、その影からもう一匹。
6m程ある、四つ頭の大きな犬の様なモンスターが現れた。
「それじゃ、俺達はあの犬っころだな!行くぜ!ココセ!」
「・・・・・分かった。」
クウガが叫びながら駆け、ココセが消える。
僕は少しだけ下がって、皆が映る様にカメラを向ける。
一斉に戦闘が始まった。
<コメント>
■ビックリした!!!
■ビックリしたわ!!!
■突然銃声がするんだもん!!!
■またいきなりぶっ放しやがったwww
■ひーうぃーごーって言った!ひーうぃーごーって!!!
■エイセイって結構戦闘狂だよなwww
■いつも先にしかけるエイセイwww
■あっという間に、ワイバーンの頭を吹き飛ばしたぞwww
■何かもう一匹現れた!!!
■あれって、四つ頭だけど、どうみてもケルベロスだよな???
■すげぇ!マンガやアニメで出てくるモンスター勢ぞろいじゃん!!!
■戦いが凄すぎて、どこを観ていいか分からんwww
■とにかく皆がんばれ!!!
■いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
サイクロプスが巨大な棍棒を、向かってくるアカリに振り下ろす。
棍棒は地面に叩きつけられ、硬い地面の土が飛び散り地響きが起こる。
チンッ。
長刀の柄を握りしめながら、サイクロプスの股を通り過ぎて、背後に現れるアカリ。
「・・・・・大振りで、しかも隙だらけだな。」
巨人の右足に一筋の光の線が付いた。
そして右足が固定されたまま、太ももから上が離れ、バランスを崩してサイクロプスは背中から地面へと倒れる。そこを狙って、アカリは柄を握って前傾姿勢のままジャンプした。
倒れるサイクロプスとアカリが交差する。
チンッ。
アカリが着地したのと同時に、地面へと倒れかけたサイクロプスの頭が飛んだ。
美しい白い鞘を腰に。長刀の柄を握りしめ着地したアカリは、ゆれる長い黒髪と赤い着物が相まってとても美しく見えた。
ケルベロスを見ると、既に瀕死の状態だった。
ココセの圧倒的なスピードで斬り刻まれ、弱った所に、クウガの強力なハルバードが襲いかかった。
四つ頭が次々に斬られ、最後の頭が飛ぶ。
サイクロプスもケルベロスも黒い灰となって消えていった。
そして空を見ると、いつの間にかワイバーンは一匹もいなかった。
エイセイとスピカが撃ち落したみたいだ。
地面に落ちたワイバーンの死体が多数転がっている。
皆が僕の方へと集まりながら、笑顔で言う。
「何か大した事なかったな!」
「そうだな。」
「森のモンスターに比べれば断然劣るわね。」
「・・・・・弱かった。」
「鳥を撃ち落した気分ね。」
「う~ん。これが【深層】、いや、この異世界のモンスターレベルなんじゃないかな。多分さる吉が異常なんだよ。」
僕がカメラを向けながら皆に答えた。
<コメント>
■つぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■マジでつぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■深層のモンスターが相手になってねぇじゃん!!!
■何なん【星空】!!!
■ヤバい位強いな!!!
■ソロばっか観てたけど、チームで戦うとこんなに強くなるんだ!!!
■チンッって音がした!チンッって!!!
■毎回思うんだけど、アカリちゃんって観ててすげぇカッコイイよな!!!
■何かすげぇ様になってる!!!
■分かる!また着物がとても似合ってるんだよな!!!
「アカリさん!皆がカッコイイって褒めてますよ!」
アカリに向かって嬉しそうに話すと、アカリはすぐに顔を赤くして視線を外しながら言う。
「あっ。ありがとう。」
<コメント>
■かわぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■アカリちゃんめっちゃ可愛い!!!
■赤くなってる!赤くなってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■このギャップがまたいい!!!
■俺もアカリちゃんのファンクラブに入ろうかな!!!
■僕はココセちゃんの方が可愛い!!!
■いや!スピカちゃん一択だろ!!!
■クウガ様カッコイイ!!!
■何言ってるの!!!エイセイが一番に決まっているでしょ!!!
■エイセイ!エイセイ!エイセイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■うるせぇ!女ども!!!今はアカリちゃんの話をしてるんだよ!!!
■貴方が黙りなさい!!!どうせ会う事も出来ないんだから!!!
■にゃんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!泣くぞ!!!
■喧嘩はやめるでごわす!!!
何故か視聴者さんの言い争いが始まった。




