47話 深層攻略4日目 2
「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
10匹の白いゴリラは、胸を両拳でドンドン叩きながら雄叫びをあげている。
体長は4m程ある。さっきのサルより大きい。
ゴリラに向かってアカリとクウガが駆ける。
先頭にいるゴリラが、丸太のような太い腕を、先に向かってきたアカリに振り下ろした。
アカリは急ブレーキをかけて止まると、大きくバックステップで躱す。
振り下ろされた腕は、そのまま地面へと突き刺さり、土が飛び散った。
ゴリラは腕を引き抜きながら、もう片方の腕を振り下ろす。
ガンッッッッッッッッッッッッッ!!!
追いついたクウガが大楯で受け止めながら叫ぶ。
「ハッ!いい攻撃だ!・・・・・だがこっちは二人だぜ?」
先程バックステップしたアカリが、クウガの後ろからジャンプしながら現れた。
ヒュッ。
大楯に拳を振り下ろしたままのゴリラの頭上を、刀の柄を握りしめたままアカリは飛び越える。
チンッ。
着地と同時に、白いゴリラの首が飛んだ。
「・・・・・まずは一匹。」
それを見た残りの9匹が、アカリとクウガに一斉に襲いかかる。
ドンッ。ドンッ。ドンッ。ドンッ。
向かってきた先頭の4匹のゴリラの額に、突然小さな穴が空いた。
すると、頭が徐々に膨れていく。
ババババンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
4匹の頭が突然破裂した。
僕は、戦っている二人に向けていたカメラを横へと移す。
隣には片膝をついて、長いスナイパーライフルを構えているエイセイがいた。
スコープを覗きながら僕に話す。
「この『魔力の弾』はオリジナルでね。体内に入ると爆発する仕組みなんだ。まぁ、スピカの魔法の応用なんだけどさ。大型のモンスターだと、小さい弾で簡単に倒せないからね。」
「おいエイセイ!ちょっと待て!!!」
「エイセイ!待って!まだ一匹しか斬ってないの!!!」
二人が僕達に向かって何か叫んでいる。
「・・・・・・・shot!」
エイセイはスコープを覗き込みながら、引き金を引く。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
頭が吹き飛んだゴリラを見て、残りの5匹が止まっていると、その額に小さい穴がたて続けに空いた。
5匹の頭が膨れていく。
バババババンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
また同時に頭が破裂した。
9匹全ての頭が無くなり、首から血を噴き出しながら黒い灰となって消えていく。
エイセイは、スナイパーライフルの構えを解いて立ち上がると、僕に笑顔を向けた。
「エイセイ、ナイスショット!」
「あぁ!ありがとう!ソラ!」
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉl!!!
■こっちもすげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■あんなにデカい10匹のゴリラを、あっという間に倒しやがった!!!
■アカリちゃんの剣技もすげぇけど、何なんエイセイ!!!
■ゴリラの頭が爆発したぞ!!!
■いきなり隣でスナイパーぶっ放しやがったwww
■スピカちゃんの魔法の応用ってwww
■エグいわ!!!
■一番の戦闘狂www
■笑顔が逆に怖いwww
■ショットって言ったぞ!ショットって!!!
■エイセイ!素敵ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■エイセイ!カッコイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■凄いでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
「さて!今回はドロップアイテムがあると思いますので回収しますね!」
僕は黒い灰になったサルとゴリラの所へと歩いて行く。
すれ違いにアカリとクウガが不満顔でエイセイに向かって行った。
「エイセイ!何で全部倒しちゃったのよ!折角いっぱい斬れると思ったのに~!」
「おいエイセイ!少しは残せよな!」
「ハハハ。ごめんごめん。」
エイセイは爽やかな笑顔で二人をあやしている。
僕は横目でそれを見ながら、ドロップアイテムを拾っていった。
「うお!すげぇ!見てください。虹色と赤色のポーションですよ!あと、白い毛があります!」
さすが【深層】・・・・・というか、このモンスターが特殊なのか?
めったにドロップしない最上級のポーションが落ちてる。落ちてる。
綺麗な白い毛もとてもレアそうだ。
<コメント>
■うぉぉぉぉぉ!虹色と赤色ポーション!!!
■マジか!!!
■すげぇ!!!
■深層でも、こんなに落ちてるのは珍しいんじゃないか?
■他のダンジョンの深層記録でも、ここまで落ちてるのは聞いたことがない。それほど、この森のモンスターはレアなのだろうな。
■これ売れば、もう一生遊んで暮らせんじゃん!!!
■マジで羨ましい!!!
■一本欲しい!!!
■ソラさん!出来たら一本売ってください!!!
■ソラさん!子供が助からない病気なんです!売ってくれませんか!!!
■いくらするか分かって言ってんのかよw
■結構生々しいコメントが流れてるなw
■そりゃ、目の前で何でも治せる虹色や赤色ポーションを見せられればそうなるわなw
うん。
気になるコメントも流れているけど、申し訳ないが無視させてもらおう。
僕は全てのドロップアイテムをリュックサックに入れると、再び探索を開始した。
暫く進んで行くと、川の流れる音が聞こえてきた。
音が聞こえる方へと向かうと、小川が流れている。
僕は空を見上げる。
木々の間から見える空は、オレンジ色に染められていた。
「もう夕方だね。それじゃ、今日はここでキャンプを張ろうか!」
「「「「「 オッケー♪ 」」」」」
小川があるから、その周りには木々があまりない。
丁度良かったので、僕達はここでキャンプを張る事にした。
三回目のキャンプとなると、みんなすごく手際がいい。
あっという間に準備を終えてしまった。
僕は皆を見ながら笑顔で言う。
「それではいってみますか!【星空クッキング】~!!!ドンドンドン!!!パフパフパフ~!!!」
「「「「「 イェーイ♪♪♪ 」」」」」
みんなでハイタッチをする。
「さてさて!本日の【星空クッキング】の担当は誰だ!はい!この方です!・・・・・エイセイさん!」
「フッ。よろしく♪」
エイセイは食材を出すと、腰に黒いエプロンを巻いて包丁を使ってカットしはじめた。
何でだろう。
食材を切っているだけなのに、何故かカッコイイ。
料理をしている姿がとても絵になるのが不思議だ。
<コメント>
■キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■エイセイのエプロン姿ぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■素敵ィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■愛してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■私を料理してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■クソッ!男の俺が観ても絵になりやがる。
■クソッ!何でカッコいいんだよ。
■クソッ!スタイルいいな。
■クソッ!一緒に料理したいな。
僕はエイセイにカメラをまわしながら、皆と一緒に皿を出したり、火をおこしたりと、スタンバイを始める。
エイセイは火の上に大きなフライパンをのせると、たっぷりの野菜とたっぷりの豚バラ肉を入れて炒め始め、その後に麺を入れる。そして特製ソースを絡めさせて、青のりをたっぷり振りかけた。それを大皿にすべて移す。湯気が立ち上り、ソースの匂いがお腹を刺激する。とても美味しそうだ。
「よし完成。やっぱりキャンプって言ったら、焼きそばだよね!ついでに、夏だからスイカも用意したよ。」
「「「「「 オオ~♪♪♪ 」」」」」
テーブルの中央には、たっぷりの焼きそばが。そして食後のデザートにと、切ったスイカがある。
「それじゃ・・・・・いたま~す!」
「「「「「「 いたま~す!!! アッハッハッハ!!! 」」」」」」
エイセイが作った焼きそばは、普通の店で食べるより格段に美味しかった。
☆☆☆
「いやぁ~。今日もいいお風呂でしたよ!あとエイセイが作った焼きそば!マジで美味しかったな。」
「あまり焼きそばって食べないんだけど、美味しかったわ。」
「・・・・・うん。・・・・・悔しいけど、とても美味しかった。」
全員風呂から上がり、僕はアカリとココセを連れて小川のほとりへと歩く。
夜空は相変わらず星が満天で、とても綺麗だ。
エイセイは今日の戦闘と料理で疲れたのか、先に寝てしまった。
スピカは父親から連絡が来たので、嫌々ながら電話をしている。皆、親に探索する事を言っているのに、それでも我慢できずにかけてきたニコルさん。本当に親バカなんだろうな。
僕達三人は小川に近づくと、葉っぱで作った船を出した。
僕はニヤリと笑うと、二人に向かって言う。
「さて!一位は、三位に何でも一回だけ命令できる券がもらえます!気合入れていきましょう!」
「「 うん!!! 」」
小さい頃。
皆とよく遊んだ、葉っぱで作った船の競争。
久しぶりにやりたくなった。
童心に帰るのも、たまにはいいよね!
何故か二人がガチの顔になって、ホントにこれ葉っぱで作ったの?って位の完成度の高い葉っぱ船を用意してスタンバっている。
ちょっと目が怖い。
「それではいいかい?・・・・・よ~い。スタート!」
僕達は小川に葉っぱ船を流した。
<コメント>
■何だこれ???
■何やってんだよwww
■葉っぱ船???
■何それ???
■初めて見たがw
■あぁ!懐かしいな!よく子供の頃近くの水田でやったわw
■水路に流してよく遊んだなw
■めっちゃ懐かしいw
■子供か!!!
■ソラお前何歳だよwww
■どんだけ童心なんだよwww
■ソラの葉っぱ船がただの葉っぱに対して、アカリちゃんとココセちゃんの完成度が高くて草。
■ガチじゃんwww
■ソラ様!絶対に負けないでごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
「よし!いけいけ~!ハハハッ!」
「がんばれ!アカリ号!」
「・・・・・負けるな。ココセ号。」
小川に流した葉っぱ船を追いかける三人。
実にシュールだった。
「おいソラ!」
突然、僕達の前に水しぶきをあげて立ちはだかったクウガ。
ビックリして前を見ると、真剣な顔をしてクウガが僕を見ていた。
「「 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」」
勢いよく、僕達の前に小川に入りながら現れたクウガ。
葉っぱ船は無残にも沈没してしまった。
絶望の顔を浮かべて、両手を地面につけて悔しがる二人。
僕は二人を横目にクウガを見る。
「どったの?」
「ちょっと相談したい事があってな。」
「そっか。」
カメラに付いている画像を見ると結構いい時間だ。
「それでは皆さん。今日は葉っぱ船も沈没してしまったので、クウガと少し話をしたら寝たいと思います!・・・・・あっ。明日の朝、ちょっと面白い事をしようと思ってますので、フフフフフ・・・・・こうご期待ですよ。・・・・・・それではおやすみなさい!」
<コメント>
■ホントだ。もう0時過ぎてる。
■葉っぱ船の順位気になったけど、クウガに破壊されたw
■天然で現れたなw
■まぁクウガだからしょうがないw
■面白い事ってなんだろうな。
■ソラ!楽しみに待ってるぞ!
■俺も早く寝て、明日に備えるかな!
■ソラさんより早く起きないとだから、もう私も寝よ!
■おやすみソラ!
■葉っぱ船が壊れてほっとしたでごわす!おやすみでごわす!!!
僕はカメラをスタンバイ状態にした。
小川のほとりに体育座りすると、右隣にクウガが座る。左にはアカリとココセが同じ様に体育座りをして座った。
川が夜空の光に反射して輝いて見える。
「で?どうしたの?」
「あぁ。実はな・・・・・・・好きな人が出来たんだ。」
「スズさんでしょ?」
僕は即答する。
クウガは驚いた顔をしながら言う。
「なっ!何で知ってんだよ!」
「知ってるも何も。クウガめっちゃ分かりやすいじゃん。『星空オフィス』にいるときのクウガって、全然いつもと違うんだもん。まぁスズさんは分かってないと思うけどね。」
アカリとココセがうんうん頷いている。
「いやいやいやいや!ちょっと待て!ちょっと待てよ!お前達だって分かりやすい・・・・・・ごはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
何か言いかけたクウガに、もの凄いスピードで二人が蹴りやパンチをお見舞いしている。
何やってんだよ。
「いてててて。・・・・・・・マジで?」
「マジだ。」
クウガはため息をつくと僕に聞く。
「どうしたらいいと思う?」
「正直僕は陰キャでそんな経験ないから、本当ならエイセイに聞いた方がいいと思うんだけど、あえて僕の意見を言うのなら、思いはストレートに伝えた方がいいんじゃないかな。スズさんは大人で美人だし、もしかしたら彼氏がいるかもしれないけど、ずっとそんな気持ちでいるの辛いじゃん?当たって砕けろ精神で行った方がクウガらしいよ。」
クウガは流れる川を眺めらながら決心した顔で僕を見る。
「・・・・・そうだな!よし!もう来年の春には卒業だ!卒業したら告白するぞ!」
「その意気だクウガ!陰ながら応援するぜ!」
「オウ!」
クウガは満足したのか、嬉しそうにあくびをしながらテントへと入って行った。
「「 思いはストレートに・・・・・・か。 」」
二人も後を追うように呟きながらテントに入って行った。
誰もいなくなって、夜の森に川のせせらぎだけが聞こえる。
僕も寝ようと立ち上がると、空中から『幽霊さん』が現れた。
いつも半透明の姿なんだが、もっとはっきりとよく見える。
この異世界のせいなのかもしれない。
「【グリーン】。・・・・・森に入れたのは君のおかげだよね?ありがとう。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「うん?お礼にお姫様抱っこ?ハハッ。いいよ。おいで。」
嬉しそうに『幽霊さん』は浮きながら僕に近づいてきたので、お願い通り、お姫様抱っこをしてあげる。空中に浮かんでいるので全然重たくない。とても嬉しそうだ。
すると突然、空からもう一人の『幽霊さん』が現れる。
【エリア】だ。
何故かプンプン怒って、お姫様抱っこをしている僕の前まで来ると、【グリーン】を掴んで離す。
「「 ・・・・・・・・・・・・・! 」」
空中で取っ組み合いの喧嘩を始める二人。
僕はそれを見ながら大きな欠伸をする。
「・・・・・二人とも。おやすみ。」
そのまま放置して、僕はテントへと入って行った。




