46話 深層攻略4日目 1
4日目の朝。
僕達は森の前にいた。
目の前に広がるその森は、普通の森とは違ってとても神聖な感じがする森の様に思えた。
朝日を浴びて綺麗に見えるその森を撮影する。
「さて、草原を抜けて今日から森に入ります!レミリアが言うには、この森の先にある山に【深層】の支配者がいるみたいですからね。あっ。言いなれているので、本当の名前は【監獄島】かもしれませんが、これからも【深層】って呼びますね。」
<コメント>
■おぉ森だ!この森かなり広いな!
■何て言うかこの森、不思議な感じがしなくね?
■だな。何つぅか、森がこっちを見ている様な感じがするな。
■・・・・・俺が来れたのはここまでだ。皆死んで、生き残ったのは俺を含む三人だけだったがな。
■えっ?それって、あの【未知の旅人】の三人だよな?
■クランマスターと副クランマスター。そしてあと一人だけ生き残ったっていう。
■おいおい!攻略組のトップクランが観てんじゃん!
■そりゃそうだろ。なんたってこれから誰も入った事のない未踏破の所に行くんだ!全てが参考になるからな!
■気を付けろ。俺達は一度森に入ろうとしたが、すぐに断念した。森自体が攻撃してきたからだ。・・・・・あの森は生きている。
■マジで?それヤバくね?
■でも、ここ抜けないと山には行けないんだよな?
■ソラ!どうすんだ?
■ソラさん!
「【未知の旅人】さん。アドバイスありがとです!皆さんも心配してくれているみたいですけど、レミリアが僕達なら何事もなく入れるだろうって言っていたので、それを信じて突入します!」
そう言って僕はカメラを片手に森に入って行った。
皆が後に続く。
すると不思議な事が起こった。
生い茂る森に適当に入った瞬間、木が移動したのだ。
まるで僕達が進む道を作ってくれたみたいに。
僕の目の前には、一本の道が出来ている。
その道を撮影する。
「・・・・・皆さん見ました?木が動きましたよ。」
<コメント>
■見た!!!
■見たぞ!!!
■何が起きたんだ???
■すごっ!!!
■あんなデカい木が動いたぞ!!!
■生き物の様に動いたな!!!
■何だと?俺達の時は襲ってきたのに、何が違うんだ?
■道が出来てるw
■ここを進めって事なのか?
■この森ヤバくないか???
■デカい木が動いただけでも、すげぇ迫力あるな!
「よし。それじゃ行こうか。」
「・・・・・行くね。」
ココセが前に出て歩き出した。
残りのメンバーが、ココセの後に続く。
そして最後に僕がついて行く。
ココセは索敵能力や探索能力がずば抜けて高い。
なので【星空】が探索する時は、このフォーメーションが基本なのだ。
僕達は、森が作ってくれた道を順調に歩いていく。
「♪~♪~♪。」
モンスターが一匹も出てこないので、鼻歌を歌いながら前を歩いている親友達を撮影する。
<コメント>
■気分良さそうだなw
■鼻歌歌ってるよw
■ホント緊張感の欠片もないよなw
■何の情報もない危険な場所なのにw
■ソラのそんな所好きだぞw
■ほんと見習いたいわw
■ソラはモンスターに攻撃受けたら即死だろうにw
「少し喉が渇いてきましたね。皆!ちょっとここで休憩しようか!」
あまりにも順調に進んでいるので、少し休憩をとる事にした。
リュックサックを降ろして水筒を取り出そうとすると、近くの木の枝が伸びてきて、僕の前に大きな実を落とした。
全部で6個。人数分だ。
僕は皆と顔を見合わせると木を見て言う。
「・・・・・これを飲めって事かな?」
木々がざわつく。
「よし!折角もらったから頂こうか!でもどうやって飲むんだ?」
「こうやるんじゃないかな。」
エイセイは、サバイバルナイフで実の先端をくりぬいて、一人一人に渡す。
全員分がいきわたると、円陣を組んで僕は笑顔で言う。
「それでは・・・・・かんぺぇ~♪」
「「「「「 かんぺぇ~♪♪♪ アッハッハッハッ! 」」」」」
グイっと飲む。
味はほんのり甘くて、とても飲みやすい。
「これ旨いな!」
「うめぇ!」
「旨いね!」
「美味しいわ。」
「・・・・・旨い。」
「初めての味だけど、美味しい。」
みんなこの味が好評だ。
<コメント>
■オイオイオイ。飲んだよw
■グイっといったなw
■何の疑いもなく飲んだなw
■毒が入ってたらどうすんだよw
■危機感なさすぎw
■何かマジでピクニックみたいだなw
■それなw
■でも旨そうだな。
「あっ。ちょっと心配しました?でも大丈夫です。うちには最強のヒーラーがいるので、もし毒や他の状態異常だったとしてもすぐに治ります!」
エイセイがカメラを見て笑顔を作る。
<コメント>
■いや、そういう問題じゃねぇだろw
■結局試すんじゃねぇかw
■怖ぇだろw
■まぁヒーラーがいれば問題ないか。
■全ての種類のポーション持ってたしなw
■あぁ!エイセイ!カッコイイ!!!
■もっとこっち向いて!!!
するとココセが突然立ち上がり、先の方を見ている。
「ココセ?どうしたの?」
「・・・・・何かが動いた。・・・・・ちょっと見てくる。」
「ちょっと待ちなさいよ!私も行ってあげるから!」
ココセが歩き始めると、その後に慌ててスピカがついて行く。
僕はその二人を映そうと、カメラを向けた瞬間だった。
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
突然ココセが横に吹き飛んだ。
後ろにいたスピカも吹き飛び、クウガがスピカを受け止める。
そして二人がいた所には、一匹のモンスターが立っていた。
体長は3m位。真っ白い毛並みで目が赤い。そして人間の様に立っている。
白いサルだ。
周りを見ると、木々の間や木にぶら下がっていたりと、結構沢山いる。
すっかり囲まれてしまった様だ。
そしてそのサルの後ろには、一回り大きな体格の同じ様に赤い目をしたモンスターが10匹程。
白いゴリラがこちらを見ている。
「おい、スピカ!大丈夫か?」
「いたたたたた。大丈夫よ。当たる瞬間にシールド張ったから。」
スピカはクウガから離れると、ゆっくりと立ち上がる。
良かった。大丈夫みたいだ。
まぁ、仮にシールドが間に合わなくても、銀のネックレスがあるから大丈夫だ。
しかし、あのココセが反応出来なかったなんて・・・・・・・。
僕はサルやゴリラを見る。
親友達は既に戦闘態勢に入っていた。
クウガも今回は大楯とハルバードを持って構えている。
エイセイが隣で呟く。
「・・・・・このモンスター達。強いよ。」
僕は黙って頷いた。
サルが動こうとしたが、途中で動きが止まる。
僕達の前にフッとココセが現れたからだ。
木に叩きつけられたのか、所々服が汚れている。
額からは赤い血が流れて、ポタポタと地面へと落ちる。
僕はココセにカメラを向けた。
「ココセ。平気?」
「・・・・・大丈夫。・・・・・こんなのかすり傷。」
僕達【星空】は小さい時からずっと探索していて、モンスター達と戦っている。
生半可な鍛え方はしていない。
攻撃の一発や二発。大した事じゃないのだ。
・・・・・まぁ、僕がくらったら死ぬけどな!!!
ココセは自分の血を拭いながらニヤリと笑った。
あっ。キレた。
「・・・・・油断した。・・・・・これは私の失敗。・・・・・後ろのゴリラは任せるけど、サルは私が頂く。」
そう言うと、上下にステップを踏んだ後に止まり、両手に持ったダガーをだらりと下げて、下を向きながら大きく息を吐いた。
「・・・・・・・・・『アタックゾーン』。」
周りを囲んでいる白いサルが一斉に動いた。
目にも止まらぬ速さでココセに襲い掛かる。
ココセに集まったサル達が打撃を加えようとしたが、陽炎の様に拳がココセの体を通り過ぎ・・・・・・・そして消えた。
「ギャギャッッッッッッッッッッ!!!」
上下左右。
後から続々と飛びかかって来た白いサル。
そのサルは僕達に攻撃が届く前に、首元、手、足、胴体、いたる所が突然斬られ、血が噴き出た。
真っ白い毛が血で赤く染まる。
・・・・・敵と戦う時、どこを狙い、どう避け、どう攻撃するか。それを常に考えながら行動をする。それが普通だ。
しかしココセは違う。
『アタックゾーン』。
半径50メートル。
敵の大きさ、形、色を認識し、ゾーンに入った敵を何も考えずに攻撃をする。
速く。
ただひたすら速く。
考える時間さえも削って速く。
コンマ0.1秒でも敵に速く攻撃を当てる為にあみ出した技。
その動きは人智を超え、人の動きではない何かになっていた。
カメラを他に向けると、少し離れているサルは、一人で勝手に暴れている様に見える。
他のサルも同様に。
暴れながらも自然と傷が現れ、そして血が舞う。
しかもほぼ同時に。
ココセが斬っているのだ。
あり得ない速さで。
白いサルは何とか抵抗しようとしていたが、あまりのスピードでついていけない。
見えない速度で斬りつけるダガーは、トップレベルの探索者でさえ、おそらく傷をつけるのがやっとのサルの皮膚を、いとも簡単に斬りつける。高い所から落とした方が強力な威力になるのと同じ様に。
気づくと、襲ってきたサルや数十メートル先にいた全てのサルが、全身をズタズタに斬られて倒れていた。
赤く染まった白いサルは、黒い灰となって徐々に消えていく。
フッと、僕の前にココセが現れた。
「ハァ。ハァ。ハァ。・・・・・・疲れた。」
「お疲れ様。ココセ。」
僕はココセに言った後、隣にいるエイセイを見る。
エイセイは頷くと、ココセの肩を触って魔法を唱えた。
「ヒール。」
ココセの体全体が緑色の空気に包まれた。
すると、額の傷はあっという間に消えて、体力も回復していった。
「・・・・・復活。」
僕とカメラに向かって無表情の顔でブイサインをするココセ。
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■つぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■消えた!!!またココセちゃん消えた!!!
■マジでココセちゃんつえぇな!!!
■深層のモンスターが何も出来ずに死んでったwww
■速すぎてマジ全然見えなかったわwww
■下層の時と同じで、勝手にモンスターが斬られていくのを観てる感じwww
■しかも全部のモンスターが同時に斬られてる感じだったなwww
■ほんと、あり得ねぇなwww
■いや、マジで強すぎwww
■カッコ良くて、可愛すぎ!!!
■ブイサインがとても可愛いすぎ!!!
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
コメントを見ていると大きな雄叫びがあがった。
見るとアカリとクウガがいつの間にかいなくなっている。
カメラを先の方にいた白いゴリラに移すと、雄叫びを上げた10匹のゴリラに向かって駆けている二人がいた。




