40話 深層攻略1日目 4
「えっ?・・・・・・・ここは【深層】じゃない???」
「はい。」
レミリア王女は、隣でゆっくりと話始めた。
ここは【深層】ではなく、国であり、世界であると。
今、僕達がいるこの国の名前は『ファイン帝国』。
この世界は昔30ヶ国あったが、今は7ヶ国しかない。
世界の約半分を『ファイン帝国』が力で占領し、支配し、国土を拡大したからだ。その為、他の国は占領されない様に手を組み、新しい国を作り、対抗している。
そしてここは【監獄島】。
『ファイン帝国』にある、数ある孤島の内の一つ。
国を占領され、言う事を聞かなかった者や、ヒューマン以外の種族、そして犯罪者が送られる場所。
監視する者はいない。
何故なら、既に【監獄島】は凶暴な魔物やモンスターがはびこっているので、送られたら数日持たずに死んでいくからだ。
逃げようとしても、本国から遠く離れた孤島。
しかも、島の周りを強力な結界が張られていて、出る事も出来ない。
「・・・・・私達の国も滅ぼされて占領されました。『ファイン帝国』はヒューマン第一主義。他の敗れた種族達はみな、この【監獄島】へ送られています。私も王女という事を隠して、アーミットに守られながらここまで来ました。」
「魚人族は、ここの人達だけなんですか?」
「いえ。【監獄島】は全部で『8つ』あります。そこに分散して送られました。」
「そうだったんですか。」
右隣にいるレミリア王女が、この世界の事を話してくれた。
そして左隣にいるスピカが、一言一句違わずに丁寧に通訳してくれている。
あれ?
これヤバくね?
結構というか、かなり衝撃的な事実だぞ?
訳しちゃまずかったんじゃないか?
僕は恐る恐るカメラを見た。
視聴者数が1,000万人を超えていた。
<コメント>
■何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■ファァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■マジでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ???
■何か凄い事聞いた!!!何か凄い事聞いたぁ!!!
■おいソラ!!!これマジで凄い事だぞ!!!
■オイオイオイオイオイ!!!世紀の大発見だぞ!!!!!
■これヤバいぞ!!!更に視聴者増えるぞ!!!
■もうすでに1,000万人超えてるしwww
■ソラおめwww
■こんな時だけどおめwww
■世紀の大発見だけどおめwww
■ソラさん!私は日本政府の者です!もっと詳しく聞いてください!!!
■ソラさん!私はアメリカ政府の者です!もっと詳しく!!!
■私はイギリス政府の者です!!!
■私は中国政府の者です!!!
■私はフランス政府の者です!!!
■うおぉw 国が観てるwww
■政府コメントきたwww
■そりゃそうか。こんな衝撃的な事実。世界がほっとくわけないわなwww
コメントで埋め尽くされている。
僕は恨めしそうに左隣で通訳をしているスピカを見ると、偉いでしょ。何でもできるのよ的な感じで胸を張っている。
くそぅ。
むしろ胸をもんでやろうかと思ったのは言うまでもない。
僕はもう一度、滝の様に流れるコメントを見る。
うん。
僕は無視した。
続けて質問する。
「そう言えば、僕達を【異人】って呼んでたよね?」
「えぇ。私はまだ生まれてないので、先生から聞いた話です。」
20年前。
突如として現れた9つの【ゲート】。
様々な研究者達が集まり、調べた結果、【異世界】へと通じている事が分かった。
だが、こちらから通る事が出来るのは9つの内の1つの【ゲート】のみ。
異世界人・・・・・【異人】がいつこちらにやってくるか分からない。
その為、『ファイン帝国』は通る事ができる【ゲート】のみ本国へと残し、残りの8つの【ゲート】は孤島に移動させ、その8つの孤島に強力な魔物やモンスターを放った。更には占領下に置いた別の種族と犯罪者を送り、強力な結界で閉じ込めたのだ。【異人】が万が一、この【ゲート】から『ファイン帝国』本土へと来れない様に。
「へぇ~。それで僕達を【異人】って呼んでいるんだ。ハハハ・・・・・。」
あまりにも衝撃的な事実。
スピカは隣で変わらず丁寧に通訳をしている。
見たくはないが、カメラを僕は見た。
あっと言う間に視聴者は、倍の2,000万人になっていた。
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■異世界きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■異世界ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■異世界!!!異世界!!!異世界ぃぃぃ!!!
■またまた世紀の大発見!!!
■えっ?ここ深層じゃなくて、異世界だったの???
■えっ?ファンタジーじゃないよね???
■マジで???
■『空ちゃんねる』やべぇ事になってるwww
■たった数分でライブ視聴者が1,000万増えてるwww
■ソラおめwww
■またまたおめwww
■こんな時だけどおめwww
■ダンジョン通り過ぎたら、そこは異世界でしたwww
■ソラさん!日本政府の者です!もっと聞き出してください!!!
■ソラさん!アメリカ政府の者です!色々聞き出してください!!!
■私は韓国政府の者です!!!
■私はオランダ政府の者です!!!
■私はインド政府の者です!!!
やべぇ。
何かとんでもない事になっている気がする。
僕はカメラを見てそう思った。
でも無視した。
「ところでレミリア。この島から逃げようとは思わなかったの?」
すると後ろで控えていたアーミット将軍が答える。
「もちろん試したさ。我々は魚人族。陸がなくても海があれば移動は可能だ。だが、この島の数キロ先に、覆うように強力な結界が張られていてな。出る事が出来なかったのだ。」
「あぁ。そういう事。・・・・・・・スピカ、どう?」
スピカは、結界に覆われている空を見ながら自信満々に答える。
「う~ん。そうね。確かにこの島を覆っている結界はとても強力だわ。でも、一時的に穴を開ける位は出来るかも。」
「えっ?本当ですか!」
「本当か!!!」
「スピカが出来るかもって言った時は出来るので、明日の朝、結界まで連れて行ってもらえますか?」
「もっ、もちろんです!」
「それじゃ、そろそろ僕達も部屋に戻って休みますね。・・・・・・それでは皆さん。一旦切ります!また数時間後に会いましょう!」
そう言うと、僕はカメラをスタンバイモードへと切り替えた。
アカリとココセはずっと話に入れずにちょっと不満顔だ。
僕は二人に近づいて頭を撫でてやると機嫌が直る。
スピカが頭を突き出してきたので、一緒に撫でてあげた。
「スピカ、アカリ、ココセ。戻ろうか。」
「「「 は~い♪ 」」」
僕達はレミリア達と別れて部屋に戻ると、少しだけ仮眠を取った。
☆☆☆
朝。
要塞の外の海辺に置かれた一隻の小さな船。
その前に、レミリア王女、アーミット将軍、ローレット隊長の三人と一緒に僕達は立っていた。
結構眠い。
結局、昨日はほとんど眠れなかった。
魚人族の人達はいい人だったが、それでも一日しか交流を深めていないのに完全に信用する事は出来ないと、女性陣は起きていたのだ。
そこで僕だけおやすみって、寝る事は出来ないじゃん!男として!
まぁ、あまり寝床も良さそうじゃなかったからいいんだけどね。
さっさと酒飲んで、先に寝た二人が羨ましい。
「さぁ。それでは、結界の所まで行きますね。」
「あっ!その前にちょっと待ってもらえる?」
そう言うと僕は、カメラを日光の反射で東の空が赤くなった朝焼けの海を映しながら、スタンバイ状態をオンにする。
「おはようございます!ソラです!朝になりました!」
<コメント>
■おぉ!朝か!!!
■ソラおは!
■ソラさん!おはよう!!!
■海が綺麗だな!!!
■クウガ様!おはようございます!!!
■アカリちゃん!おはよう!!!
■エイセイ!朝の光に照らされて素敵!!!
■ココセちゃん!おはよう!!!
■スピカちゃん!おはよう!!!
おはようコメントが流れる。
起きている時は、今の所ずっと撮影している。
たまにはこういうのも新鮮でいいな。
レミリアが僕の近くまで来ると、片手に持っているカメラを覗き込む。
「これは、いったい何ですか?」
「これ?これはカメラと言ってね。レミリアの言う【異人】の人達が、カメラを通じて沢山観てるんだ。」
それを聞いたレミリアは驚いた顔をする。
「そんな事が出来るんですか?それでは、今、異世界の方が、ここから私を観ているんですか?」
「うん!結構な人達が観ているよ!」
「そっ、そうなんですね。えっと・・・・・・お初にお目にかかります。レミリアと申します。よろしくお願いします。」
レミリアはカメラに向かって可愛らしい笑顔で答えた。
綺麗な薄い緑色の髪が、潮風に吹かれて揺れている。
<コメント>
■目が覚めました!!!
■目が覚めた!!!
■めっちゃ目が覚めた!!!
■あっ!惚れた!!!
■めっちゃ可愛い!!!
■なにこの可愛らしさ!!!
■付き合いたい!!!
■レミリアちゃん!こっちに来て!!!
■異文化コミュニケーションしたい!!!
■愛に異世界は関係ないです!!!
通訳に戻ったエイセイは、コメントを見て笑っている。
「レミリア。みんなレミリアの事可愛いって。」
「えっ?あっ、ありがとうございます!」
青い肌の顔が赤くなった。
僕達とレミリアは小舟に乗り、アーミットとローレットが海に入り、凄い勢いで小舟を引っ張りながら泳ぐ。
結構なスピードだ。
ボート並みに出ているだろう。
すぐに結界の所まで来ると、スピカは魔法で空中に浮かんだ。
透明の壁の様になっている結界に近づくと、そっと手で触る。
スピカが何かを呟いた。
ズッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!
一瞬、スピカの手を中心に、大きな円の様な亀裂が走った。
「・・・・・はい。おしまい。結構な穴を空けたわ。この結界の穴が元に戻るまでは一週間位はかかるでしょう。ゆっくり準備してから出るといいわ。」
「なっなんと!!!本当か!・・・・・深く・・・・・深く感謝する!!!」
海に入っているアーミットは大きく目を見開き叫んだ。
レミリアが僕の袖を掴むと、上目遣いに言う。
「ソラ様。本当に・・・・・本当にありがとうございます!これで外に出れます!何て、何て感謝すればいいか!そしてスピカ様!ありがとうございます!!!」
「フッ、フンッ!ソラが言うから仕方なくやっただけよ。」
<コメント>
■はい!きた!!!
■ありがとうございます!!!
■ご馳走様です!!!
■ツンでた!!!
■ツンツンでた!!!
■ツンでいて優しい!!!これ基本!!!
■スピカちゃんはやっぱり可愛い!!!
■ツンデレのスピカちゃん!可愛い!!!
■僕にも言って欲しい!!!
■俺にもお願いします!!!
「ちょっと貴方達!だから言ってるでしょ!ツンデレじゃないって!」
カメラを覗き込んだスピカは、視聴者とまた言い争いを始めた。
☆☆☆
「それじゃ、僕達は行くね!」
要塞の入口で僕達はレミリアに別れを告げる。
レミリアの後ろにはアーミット将軍とローレット隊長。そしてここにいる全ての魚人族、数百人が整列していた。
「そう言えば、ソラ様達はこれからどこへ行くのですか?」
「言ってなかったね。【深層】の支配者。・・・・・僕達はそう呼んでいるんだけど、この島を支配しているモンスターを倒しに来たんだ。」
「そうだったんですね。おそらく『レガリア』の事でしょう。それでしたら・・・・・。」
レミリアは【深層】の支配者『レガリア』の場所と、その道順を教えてくれた。
そして、僕や親友達一人一人に指輪を渡す。
「皆さまには感謝してもしきれません。これは、私達魚人族の秘宝の一つです。これを付けていれば、海の中でも、陸と同じ様に呼吸ができて行動も出来ます。こんな些細な事しかお礼が出来ませんが、いつかまた、他の仲間達を救って、必ず魚人の国を復興させます。・・・・・その時は是非来てくださいますか?」
親友達は頷く。
僕は笑顔で答えた。
「うん!絶対行くから!」
アーミット将軍は一歩前に出ると大きく叫ぶ。
「皆の者!!!ソラ殿達に・・・・・・・礼!!!」
レミリアを含む魚人達全員が片膝を付いた。
この日。
全世界に衝撃が走った。
ダンジョン最下層にある【ゲート】からいける場所。
そこが【深層】ではなく、【異世界】だという事に。
【ダンジョン】は世界で9つしか存在していない。
そして、ダンジョンを保有している国は8つ。
アメリカ・インド・中国・フランス・イギリス・ドイツ・カナダ・・・・・そして日本。
ダンジョン保有国が集まり協議する『D8』が、数日後に開催される事が急遽決まった。
そして保有していない他の主要国も全て参加する事となった。
ソラは知らない。
今、『空ちゃんねる』はダンジョン保有国を含む、ほとんどの国の首脳達が観ているという事に。




