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ハーレムの終わりへ①

 リュカの判断は、それはそれで一つの愛の形だと見る事も出来るだろう。

 ディアーヌを死なせたくない。

 言ってしまえばそれだけなのだし、今のディアーヌを取り戻すための手段を講じようともしていた。結局、皇帝の許可が下りなかった訳だが。



 何もしていなかったわけではないが、だいたいの事はぱっと片づけてしまうリュカがしばらく動かず、結果を出さなかった。

 また、皇帝の命令ひとつで動き出せばあっという間に解決したという事は、それまで動かなかったことに対する不満も増すというものだ。


 「それが出来るのなら、なぜやらなかった」と。



 流石に嫁たちはリュカの心情を慮る「理解があった」が、妾達は「理解しても納得しきれない」部分が残り、そもそもただの侍女たちの半数は「理解できなければ、納得もしない」といった有様であった。

 侍女である彼女たちは、どちらかと言えばリュカよりも自国の姫であったディアーヌらを優先する傾向がある。

 リュカが自国のため、嫁たちの為に動くと信じていたからこそ、忠誠を誓っていたのだ。その前提が揺らいだという事は、リュカへの視線が厳しくなるのも仕方が無いと言えるだろう。





 侍女達の、リュカへの信用が揺らいだ。

 だからと言って、ハーレム内で何か問題が起こるという事は、すぐには無い。


 リュカ自身は侍女に世話をされる側の人間で、数年間の世話付き生活を経験しているが、騎士であり軍属の人間である。侍女の世話の質が多少下がろうと、それを苦にする性格はしていない。そもそも、不満を持ったものはリュカ付きから外され、それ以外の仕事が割り振られる。

 また、リュカへの不満から仕事を投げ出しそうだとか、リュカへの嫌がらせを行おうとするほどの命知らずはいない。隠れてそういった事が出来ない事は、侍女達だって知っている。リュカは敵対者へ一切の容赦をしないし、ごく稀にある「侵入者騒動」が「侵入者の死体処理案件」に即座に変わるのを見ているでの、侍女たちはそれが自分の身に起きないと考えるほど頭がお花畑という事は無い。

 ハーレム内のモラルは、マリアンヌが管理しているので、高い状態を維持しているのだ。



 ただ、放置したままという訳にもいかない。

 一時的な不満で済めばいいのだが、長期化すれば離職を招き、最悪はハーレムの崩壊に繋がりかねない。対策を講じる必要があった。


 とは言え。


「あながち、勘違いでもないからな」


 不満が発生した原因、それが己にある事をリュカは認識している。

 問題が起きそうな原因、リュカの不甲斐なさ、甘さ、優柔不断さと命令による切り替えの早さは、間違いなく真実である。

 つまり、一番根っこに巣食う原因、その排除ができないという事だ。


 リュカは、侍女たちが自分に不満を持つのなら、仕えるべき主かどうか見極めようとすればいいと、その程度に考えている。

 小細工を(ろう)し、信頼を得ようとすることを良しとしなかった。



 結果、リュカは動かない。

 何らかの手を打つべき場面で静観を選択した。


 リュカは、選択を間違えた。

 これは小細工ではなく誠意を見せねばならなかった場面だったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になって仕事に集中出来ない…楽しみに待っています。
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