リュカ②
「リュカよ。その様な計画を認めるわけにはいかん。
お主がやろうとしている事は、人の理から外れておる。
お主の行為は神をも恐れぬ大罪であり、人の世を著しく乱す。
この場で話してくれたことに感謝を。そして、二度と口にしては為らず、実行も許さない。
これは皇帝としての言葉である」
リュカだって、ディアーヌの事をそのままにするつもりは無かった。
ただ、今までやった事の無い魔法を試すため、どうしても慎重に動かざるを得ず、その行動の危険性からも周囲に協力者を作ろうとはしていなかった、それだけである。
問われ、初めてリュカはその計画についての説明をした。
リュカが我が子を大事にしている事は周知の事実であり、母を殺してしまった我が子の為にフォローをしないはずがなかった。
ただ、その方法が問題であり、リュカに頼りきりの皇帝であっても、見過ごせない話だったというだけで。
リュカとしても、ディアーヌの事を憎からず思っている。
「愛しているのか?」と聞かれれば、間違いなく首を横に振るだろう。ハーレムの主になった男に、そのような言葉を使う権利は無いと考えているからだ。
リュカにとって愛とは、たった一人の女性にのみ捧げる神聖な感情であり、複数の女性を囲った段階で諦めるべきものだ。
残念な事に、リュカが「愛」を美化しすぎていて、皇帝は内心で頭を抱えた。
リュカの計画を聞いた皇帝は、リュカがディアーヌを愛しているという事に、疑いを感じていなかった。
愛され続け、絆されたのだろうと判断した。
だから助けるための計画を練っている事に一瞬安心したのだが……。
しかしどう考えてもリュカの計画はやり過ぎである。
そして、絶対に許可できない。
“人が魔法で人を複製する”など、国を預かる皇帝としては見逃す事の出来ない“大罪”だった。
リュカとしては、若返ったディアーヌもディアーヌであり、記憶の上書きで殺すなど、考えたくもなかった。
だが、嫁のディアーヌが必要な事は明白で、それは我が子が母恋しさに涙を流さずとも、どうにかしようと考えていた。
記憶の上書きはできない。
ならば、別の器を用意し、そこに元のディアーヌを当てはめればいい。
リュカはそのように結論を出した。
その為に必要な情報はすでに得ているので、リュカならば問題無く出来るだろう。
ただ、考え無しにそんな事をすれば多大な影響が発生し、望む穏やかな未来が消えて無くなることは、リュカでも分かる。
難しい案件を考えるときはディアーヌを頼ることが多かったので、頼るべき相手も見付けられない。他の嫁たちにはまだ言えなかった。
まずは自分で考えられる部分だけでもちゃんと考え、ある程度内容がまとまれば、それから誰かに相談をしようと考えていた。
皇帝に話を振られたとはいえ正直に話したのは、皇帝を協力者にと考えたからである。
――全力で拒否されたが。
「今のディアーヌは諦めよ。
そして以前のディアーヌを取り戻すのだ」
これが皇帝の、為政者としての結論だった。




