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ディアーヌ①

 その日、リュカは仕事で遠くに行っていた。





 空はあいにくの雨模様。

 そんな日は屋内で過ごすしかなく、庭にだって人は出ない。

 幼い子供たちは不平不満を抱くものの、外に出て濡れるのは嫌なので、室内での遊びを行っていた。


 ただ、遊ぶばかりではなく、勉強をする子供もいる。

 そろそろ4歳になるディアーヌの長男、ジェラールはそろそろ魔法の基礎を覚えても良いだろうと、リュカが許可を出していた。

 本格的な魔法を覚えるのはまだまだ先の話だが、基礎を学ぶぐらいは問題無いだろう、逆に基礎を覚えないと拙いかもしれないと、そのように判断されたのだ。



 魔法と言えばリュカが一番だが、ハーレムにいる中ではディアーヌがそれに次ぐ実力者である。

 そのため、リュカが不在の時は愛する息子の為にディアーヌが自ら魔法を教えることになっていた。


「そう。そうやって魔力を運用するのよ。凄いわ、ジェラールは覚えるのが早いわね」

「えへへー」


 子供に攻撃系の魔法を教える者は、まずいない。

 ディアーヌが教えていたのは防御系魔法の基本で、自分の目の前に障壁を作る魔法を教えていた。

 こういった魔法は間違って使っても大きな問題となる事が少なく、「使ってみたい」という欲求に逆らえない子供に教えるのに適している。


 防御範囲はまだ狭く、小石でもぶつかれば簡単に砕けるような、拙いジェラールの障壁魔法。

 実戦では何の役にも立たないだろうが、それでも年齢を考えればディアーヌが褒めるのも当然である。

 ジェラールはディアーヌ以上の魔力で防御や回復に分類される魔法を次々に覚えていった。後は使い込んで習熟していくだけだった。





 ジェラールに、悪気はなかった。

 覚えた魔法を使いたい、そんな気持ちでいたのだが、同時に、大好きな母親に喜んでもらおうと、ジェラールは覚えて間もない回復魔法をディアーヌに使った。


 怪我をしていればそれを治す回復魔法だが、この魔法は意外と危険な魔法でもあった。

 怪我を治すイメージがしっかりしているのであれば良いが、そのイメージが適当過ぎると、全く違う所が癒えればいい方で、最悪は相手を殺す事もある。

 特に危険なのが『オーバーヒール』という現象で、回復の力が強すぎて、ガンなどの病を誘発する事もあるのだ。


 その危険性をディアーヌは教えていたが、それ以前にジェラールが覚えている回復魔法は擦り傷を治せる程度のごくごく弱い魔法であったため、そこまで警戒していなかった。

 危険と言える回復魔法を教えているという認識が無かったのだ。

 教わっていたのが才能があるというだけの人間であれば、その認識は間違っていない。

 子供たちは魔力の量が自分達よりも上だろう、でもリュカほど(規格外)ではない、その程度に考えていたのだ。



 ジェラールはリュカの息子で、膨大な魔力を持っている。

 膨大な魔力と誤ったイメージで使われた回復魔法は、確かにディアーヌを癒したのだろうが……少々、普通ではない結果を生み出す。


 ディアーヌは本来、21歳だ。

 それが何故か、肉体と記憶が15歳まで巻き戻っていた。




 この日、リュカはハーレムを不在にしていたのである。

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