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仲直り⑧

 喧嘩後の仲直りとは、年齢と冷却期間が比例するという。

 要は、年を重ねた分だけ謝りにくくなるというお話だ。


 悪い事をしても、年配ほどうまく頭を下げられない。しがらみや立場がそうさせてしまう。

 意地を張ってしまう若者の姿は確かに目につくが、実は目立たないだけで、それ以上に大人の方がグダグダしているのだ。



 だから、その光景はディアーヌやセレストには“刺さる”ものだった。


「コレットお母様、ごめんなさい」

「「「ごめんなさい」」」


 ディアーヌの説得により、ジェラールやクロエら、子供たちがコレットに頭を下げた。

 一緒に遊ぶにしても、運を用いた勝負事を避ける事は確かにするけれど、そこは大人であるコレットが上手く考えるとして、普段は普通に遊ぼうという話になっている。

 コレットは仲直りができたと素直に喜び、子供たちと一緒に何かを始めている。



「言いたい事を言い合える期間っていうのは、思ったよりも短いからね。

 周りの視線を気にするようになると、どうしても身動きできなくなる」


 そんな二人にリュカは分かったような事を言うが、リュカ自身も、何かあった時に素直に動けるとは思っていない。

 ただ、今は素直に仲直りしてほしい、変な隔意を抱かないで欲しいと願っている事だけは、ちゃんと伝わった。


 ディアーヌは自分の感情を正しく理解し、セレストは求めても仕方のない事を求めてしまったと反省する。

 ディアーヌの中にあった溜まり澱んでいた感情は、すぐには消えなくても徐々に溶け出し、消えていく。自覚をしてしまえば、落ち着く事もある。

 セレストの中にあったディアーヌへの苛立ちも収まっている。相手に理想を求め、押し付けていただけだからだ。



 二人の中で感情は理性と折り合いをつけ、後はどうやって踏み出すかを考える所に来ていた。

 そこで、リュカが後押ししたのだからと理由を与えれば、ようやく一歩を踏み出せる。


 普段は政治と経済の面で女傑扱いされている二人であるが、私生活における人間関係ではわりと拗らせてしまう所がある。

 本人らも分かってはいるのだが、どうにもならない事は多い。

 全てを無感情な仕事のように割り切れるならばともかく、私生活、特に細かな人間関係の方が割り切れない事は多い。


 いや、仕事で冷徹であろうとするから、私生活ではその反動が出ているのかもしれない。

 リュカを中心とした関係は、本来であれば納得しなければいけない、割り切るべき“仕事”なのだろうが――個人的な好意を抱いてしまうと、仕事として見られなくなる事でもある。

 ディアーヌは元から男性として、セレストは恋愛感情とまでは行かずとも人間としてリュカを好ましく思っているので、割り切れない部分が見えないストレスとなり、ここまで状況を拗らせたと見る事もできる。



「いつまでも、では子供みたいですよね」

「そうね。いえ、3歳や4歳の子供未満よ」


 時間の経過が状況を悪化させる事は間々ある話だ。

 リュカと嫁との関係が良くなっていけば、割り切れた所も割り切れなくなる。

 二人の関係悪化は、その煽りを受けただけだ。

 そうして燃え上がる感情は、今後も思い出したように人間関係にひびを入れるだろう。最悪、関係が崩壊するかもしれない。


 ただ、今この時は、二人の関係が修復された。

 それだけの話である。

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