仲直り⑤
馬での競争は、波乱も何もなく、コレットが勝った。
2位はマリアンヌ、セレストが3位で、ディアーヌは最下位であった。
この成績については、前を行くコレットの馬がはね上げた石を、ディアーヌが回避しようとしたことで大きく順位を落としたからだ。ディアーヌの近くを走っていたセレストも、やや巻き添えを食らっている。
誰かの後ろを走るというのは、馬の体力を温存する上では有利に働くが、こういった石だけでなく、砂や土を跳ね上げる危険性があるため、ハイリスクなのだ。
最後に追い抜くことを考え行動したディアーヌの作戦は、ものの見事に不発となったのである。
「じゃあ、コレットは後で何かやってほしいことを考えておくように」
リュカは勝者に対する一先ずのご褒美という訳ではないが、コレットの頭を撫でて、その勝利を讃える。
コレットは笑顔でそれを受け入れ、明確な勝者の図が完成する。
対して、敗者たち。
失策を犯したディアーヌと、それに巻き込まれたセレスト。
コレットが1位という結果に二人は悔しそうではあったが、もとよりコレット有利である事は承知していたので、そこまで感情を乱してはいない。
この結果は順当であり、しょうがないという気持ちが先にくる。
ただ、セレストは若干、ディアーヌに非難めいた視線を向けている。
彼女はディアーヌの失敗が無ければ、マリアンヌに抜かれる事も無かったからだ。
もっとも、その時はディアーヌのコレット追い抜きが上手くいっていた可能性があるというか、ディアーヌがセレストの上に行ったであろうから、結局順位は変わらないのだが。
セレストは負けたことに対し悪態を吐くのは恥の上塗りだからと、思う所はあるものの言葉にはしない。
口にはしないが、ちょっとだけ、感情が表に出てしまっているだけだ。
ディアーヌの回避に巻き込まれなければ、もう少し上を目指せたのではないかという「かもしれない」は、そこそこに重い。
ディアーヌはセレストに対し、申し訳なさそうにしている。
リスクを背負って失敗するのは世の常だ。難易度の高い事に挑戦しても、確実に勝てるようであればリスクを背負ったとは言わない。
リスクを背負うとは、いざとなれば負ける可能性を受け入れるという事でもある。
ただ、それに他の誰かを巻き込むとなると、また話が違ってくる。
自分の失策に人を巻き込むのは本意ではないのだ。
競争相手でもあるので、あまり気にすべき事ではないし、状況次第では積極的に人も巻き込んで構わないのだが、それでも想定の範囲外で人を巻き込めば気にもする。
冷静な思考であれば、セレストがディアーヌの傍というリスクを背負った事で失敗したと考えられるのだが、今のディアーヌにそんな余裕は無さそうである。
二人の感情を肌で感じ取ったマリアンヌは、内心で悲鳴を上げていた。
リュカに対し、「逆効果です!」と言いたいが、この場でそんな事は口にできない。
第一、言ったところで意味が無い。もう結果の出た、終わった話だ。
なにより、ディアーヌとセレストを競わせようとしていたのはマリアンヌも同じである。何か言う資格など無い。
一つ間違えれば、同じ事をマリアンヌもやっていたのだから。
戦々恐々とするマリアンヌと、やや不機嫌なセレスト。あと、背負ったリスクに踏み潰されてしまった格好のディアーヌ。
そんな3人を尻目に、コレットは何をお願いしようかと考えるのだった。




