仲直り④
「勝った人には景品を出そう。ちょっとぐらいの我が儘を叶えるよ。何をして欲しいかすぐに言わなくていいから、ゆっくり考えておくといい」
リュカの思惑は誰にも分からない。
しかし嫁たちは僅かな困惑を持ったものの、リュカの決定に従った。
馬を全力で走らせることは疲れる事であるが、それによってその後、何か大きな不都合が生じるわけではないからだ。
多少の事であれば、付き合っても構わないと判断した。
ディアーヌは一瞬だけマリアンヌの仕込みを疑ったが、この件はマリアンヌが関わったといった様子は無いので、すぐにその疑いを捨てた。
マリアンヌも、この予想外の展開に戸惑っている。
ならば、と、ディアーヌはコレットに勝つ方法を考えることに集中する。
コレットが有利といっても、絶対に勝てないわけではないと、勝ち筋を考える。
セレストは、リュカに気を遣わせている事に内心で苦笑する。
勝負の結果はどうでもよく、リュカはマリアンヌの真似をして自分とディアーヌの間を取り持とうとしているのだと、そう判断したのだ。
ならば全力を出せばいい、セレストは深く考えず、勝負に乗ることにした。
マリアンヌは戸惑っている。
リュカにはディアーヌとセレストを競わせ、勝負の先で友情を育んでもらおうという計画を説明し、協力を取り付けていたからだ。
段取りが違うため、この場をどうするか、すぐには決めきれずにいる。
コレットもマリアンヌと同様に状況を理解しきれていないが、まずは勝てばいいと、すぐに思考を切り替えた。
考えて何とかなる話ではなく、考えて分からないなら、その中で出来る事をやればいい。
状況がよく分からないが、ここで手抜きをする方が禍根を残す事ぐらいは理解できる。コレットは、リュカの合図とともに馬を走らせた。
四者四様、走り出した嫁たちを見て、リュカは上手くいったとほくそ笑む。
リュカがやりたかったことは、状況をかき乱すことだ。
現状が良くないのだから、場をかき乱し、嫁たちが自分のペースを保てないようにして、とにかく混乱させることにしたのだ。
マリアンヌからの協力要請については、引き受けはしたが、そのままでは上手くいかないと予測している。
そのまま勝負させたところで聡明な二人は事情を裏まで読み通すし、人の意図が加わった場で本気をさらけ出す事などしない。
だから、人の意図を読み取れない状況を作ろうと考えた。
マリアンヌが関わっていないところで大きく目立ち、ディアーヌらの目を逸らすのだ。
リュカがリュカの考えだけで動けば、マリアンヌの意図でリュカが動いたとしても、外からは区別がつきにくい。
マリアンヌは予定にない行動を取られ後で怒るだろうが、そこは夫のお茶目だと、諦めてもらうつもりである。
リュカは本気で勝負をする嫁たちを追い越す勢いで馬を走らせた。




