仲直り③
リュカはハーレム内の空気悪化を感じ取り、気分転換をしようと言った。
「子供たちは任せて、俺たちだけで遠乗りに行くよ。
たまにはそういうのも良いだろう」
リュカはあまり強権を発動しないが、使った時の拘束力はかなり強い。
その一声は、おおよそすべての予定に優先される。
無茶な事は言わないし、そのほとんどが夫婦の仲を深めるための、休暇に関する話である。
あまり急な話ではなかったので、嫁の全員が予定を調整し、誰も問題が起きないように休みを取る事となった。
リュカの趣味の一つは馬に関するもので、家族そろっての休暇に遠乗りという選択肢はよくある事だった。
しかし子供ができると、休暇は子供も一緒に遊ぶことが多くなる。
馬の遠乗りでは子供全員が参加する事が難しく、個人はともかく、夫婦だけの遠乗りはここ最近行われていなかった。
久しぶりの遠乗りは、馬に対する熟練度が如実に表れる。
リュカが一番良い馬に乗り時間を割いているため、夫婦の中で一番といえばリュカになる。
嫁の中に限定すると、コレットがまず頭一つ抜きんでている。嫁の中では一番小柄であり、他の嫁よりも自由時間が多いため、リュカに付き合って馬に乗ることも多い。
次いでセレスト、ディアーヌ、マリアンヌの順となるが、この3人に関してはあまり乗馬の腕に差が無い。
忙しく、馬に乗ることが少ないため、差がなくなりつつあるのだ。
遠乗りでは馬を走らせるが、速足程度で、本格的に走らせるという事は無い。
全力疾走など滅多に行わないし、そんな事をすれば馬を潰してしまいかねない。
休暇だけに慌てる事でもないので、走らせても余力を残すのが基本だ。
だが、この日のリュカは、普段は言わない事を言って嫁を驚かせた。
「ちょっと、競争してみないか?」
「リュカ様? どうされたのですか?」
帰り道の途中で、馬に負担をかけるような事を言い出したのだ。
リュカはニコニコとほほ笑み、唐突な話で驚いたディアーヌに、静かに言葉を返す。
「うん。みんな、家にいてばかりで体が鈍っているだろうからね。たまには思いっきり体を動かす事も必要だと思うんだよ。
見た限り、普段から馬を走らせているのはコレットぐらいのようだからね。少しだけ、頑張ってみようか」
乗馬は非常に体力を使う。
馬を全力で走らせるとき、馬だけではなく騎乗者も相応に体力を消耗する。
リュカの提案は突拍子もなく、いきなり言い出すような事ではない。
せめて、前もって話を通しておくような内容であった。
「コレットさんが有利すぎませんか?」
「何事にも得手不得手はあるだろう。公平な条件の勝負である事には違いないからね。そこはそういう物だと納得してほしいな」
マリアンヌもリュカに物申すのだが、リュカはそれを取り合わない。
やはり笑顔のまま、さらりと流すだけである。
コレットやマリアンヌの仕込みではなく、それとは全く関係ない所で、リュカは強引に勝負を押し通した。




