第5話 先輩の腕前
なんで先輩は撃ってもないのに
あのお婆さんのことがわかったんだ…。
先輩の姿はもう見えない。
「あとで聞いてみよう。」
俺はライフルを見た。
今日は3発ある。
とりあえず、スコープで色々人を見てみよう。
昨日は比較的近いよく見えるお婆さんを撃った。
今日はもう少し離れてる人を狙ってみよう。
スコープ越しにあたりを見回した。
改めてみると、やっぱり鮮明に見える人が一定数いる。
どう考えても見えやすい人に撃ちたくなると思う。
誰にしようか。
1人の青年が目に入った。
あの子は鮮明に見える。
少し遠いが狙ってみよう。
俺はスコープで照準を合わせた。
「よし。」
ライフルの引き金を引いた。
「バンッ。」
弾丸が光りながら飛んでいった。
「シュッ。」
青年の少し右側を通り抜けた。
そして、少し靄のかかっている人に当たった。
外してしまった。
「やはり距離が遠くなると難しいな。」
「次こそは当ててやる。」
俺はもう一度スコープで照準を合わせた。
さっきは少し右側を通り抜けたので
少しだけ左側を狙った。
俺はライフルの引き金を引いた。
「バンッ。」
弾丸が光りながら飛んだ。
「シュッ。」
青年の少し左側を
通り抜けた。
光の先が追えなかった。
「どこまでいったんだ。」
てかなんで、当たらないんだ。
めちゃくちゃ難しいじゃないか。
もう、今日撃てる弾はあと1発じゃないか。
そもそも前世で銃を撃ったことないので
狙い通りに当てられるわけがないか。
そう思い、青年には申し訳ないが
狙いを近くに変えようとした。
1人の男の声がした。
「おい、お前狙いすぎてんだよ。」
さっき持ち場に行った先輩だった。
もう終わって帰ってきたのか。
まあ、あの先輩だから
どうせ特に人なんか選ばずに
適当に撃ってきたんだろう…。
「狙いすぎってどういうことですか。」
先輩が答えた。
「そのままの意味だ。」
「狙いすぎると当たんねえもんなんだよ。」
なんだろう、この先輩に言われると
全くアドバイスに聞こえない。
「じゃあ、具体的にどうすればいいんですか。」
「狙うんじゃなくて、あいつに当てたいって
心で思うんだよ。」
何言ってんだ、この人。
そんなんで当たったら
誰でも当てれるじゃないか。
また、適当なことを言っているんだろ。
「先輩、精神論が好きなんですね。」
先輩が寝癖のついた頭をかいた。
「はぁ、よく見てろ。」
先輩が銃を構えた。
少しだけ雰囲気が変わった。
流れる様な所作に見えた。
「俺は、今からあのおばさんを狙う。」
そう言うと先輩は静かにスコープで照準を合わせ
迷うことなくすぐに引き金を引いた。
「バンッ。」
光の弾丸がおばさんにむかって一直線に飛んでいった。
「当たった。」
この人、こんなんだけど銃の腕は凄いんだな。
少しだけ先輩を尊敬できそうな気がする。
「ちゃんとみたか、当てたいって思うのが大事なんだぞ。」
先輩が言った。
悔しいが、銃を撃つときは
少しカッコよく見えた。
何せ、撃つまでの一連の動作が綺麗だった。
「あと何発あるんだ。」
「あと、1発です。」
俺は答えた。
「だったら、俺が言ったことを意識して
撃ってみろ。」
確かに、あんたの銃の腕は凄いけど
当てたいって気持ちだけであたるのかよ。
「はい…。」
俺は小さく返事をした。
「誰を狙うんだ。」
先輩が聞いてきた。
「少し遠いですが、あそこの青年がいいです。」
「ああ、さっき外してたやつか。」
もう少し言い方はないのだろうか。
「まあ、狙ってみます。」
先輩が言った。
「違う、狙うんじゃない。」
「当てたいって思うんだよ。」
はあ…まあ腕は凄い人だから
騙されたと思って一度やってみるか。
「わかりました。」
「俺は今からあの青年に当てたいです。」
えっと、狙わずに当てたいと思い
銃を向ける。
そして流れるように引き金を引く感じだったよな。
俺はあの青年に当てたい。
銃を青年に向けた。
流れるように引き金を引いた。
「バンッ。」
光の弾丸が青年に向かって一直線に飛んでいった。
「あっ…。」
「当たった……。」
本当に当たったのだが…。
「ほらな、言っただろ。」
少し自慢げに先輩が言った。
なんだろう。
少し悔しいが
あの青年に当てれたことが
それ以上に嬉しいな…。
「先輩、ありがとうございます。」
「明日もこの感じでやってみます。」
先輩はすこし照れくさそうだった。
「お疲れさん。」
こちらに背を向けて
軽く手を上げて
持ち場に帰っていった。
あれ、あの人まだ撃ち終わってなかったのか。
もしかして、俺のために様子を見にきたのか?
まあ、考えすぎか。
あの人に限ってたまたまだろう…。
「あっ!!」
なんで撃ってないお婆さんのことがわかったのか聞きそびれた。
まあ、明日聞いてみよう…。




