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幸運スナイパー ~人生に絶望した俺が、銃で幸運を撃ってます~  作者: 蝶野摩矢


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第4話 最後の幸運

この世界にも衣食住はあるようだ。


初仕事が終わった後

寮のような場所に案内された。


個室で食堂もあり、

今のところ特に不自由はない。


次の日、俺は昨日撃ったお婆さんを探した。

そもそも昨日見つけた人を

今日もまた見れるのだろうか。


先輩はまだ来てない。


しばらく待っていると

昨日と同じ寝癖をつけた先輩が現れた。


「先輩、おはようございます。」


一応後輩だから挨拶した。


「お前は真面目だな。」

「おはよう。」


あんたが不真面目過ぎるだけだよ。

心で思ったがもちろん言わない。


「先輩、昨日初めて撃ったお婆さんがどうなったか知る方法ってありますか。」


先輩が不思議そうに答えた。


「そんなことを知ってどうするんだ。」


「どうもしませんが、一応初めてですし

どうなったか知りたいんです。」


先輩が頭を掻きながら言った。


「お前は変わってるな。」

「あまりおすすめはしないが

あるにはあるぞ。」


おすすめはしない…。

何か理由があるのだろうか。


「どうすればいいですか。」


「お前の銃を見ろ。」


「そこにお前が撃ったやつの履歴がある。」

「履歴を出した状態でスコープを覗けば

そいつの今が見える。」



「お前は今後数えきれないぐらいの人を撃つ。」

「いちいち撃ったやつを気にするなよ。」


先輩が忠告してきた。

なんとなく言っている意味はわかる気がする。

でも、自分が幸運の弾を当てた人を見るのは

一種の責任のようなものではないだろうか。


それに、初めてだから尚更見たい。


「わかりました。」


俺は先輩に教えてもらったように

銃の履歴を昨日撃ったお婆さんにした。


少しの興味と期待を胸にスコープを覗いた。


あれ、ここはどこだ。

狭い部屋。


お婆さんはどこだ?


スコープを上下左右に動かしながら

お婆さんを探した。


ベッドの上にお婆さんが寝ていた。


口元には呼吸器のようなものがついている。


「病院…。」


俺は少し怖くなった。

昨日撃ったのは幸運弾だ。


なんで病院のベッドで寝ていて

呼吸器なんてつけてるんだ…。


「俺、何かしたか…。」


そう思ったのも束の間、

1人の男がお婆さんの病室に

大慌てで入ってきた。


「母さん…。」

「かあさん…かあさん……。」


50代ぐらいだろうか。

おそらく息子のようだ。

不思議だ、スコープで覗いてるだけなのに

話し声まで聞こえてくる。


「ゆういちかい……。」

「来てくれたんだね……。」


「もう会えないと思ってたよ……。」


「あんたは変わらないね。」

「元気にしてたかい。」


「ああ、元気にしてたよ。」

「母さん、ごめん。俺があの時

意地をはって出ていかなかったら…。」


「そんなこと、いいんだよ。」

「最後にあんたに会えてよかったよ。」


「来てくれてありがとう。」


そうお婆さんが言うと

ゆっくり眠るようにお婆さんは

息をひきとった。



おかしい……。

俺が昨日あのお婆さんに

幸運を届けたはずだ。


なのになんで次の日に死んでんだよ。


俺の当てた幸運を使うことなく

死んだってことかよ。


そんなことってありかよ。


俺は急いで先輩のところへ駆け寄った。


「先輩…。」


「俺が昨日撃ったお婆さんが今日死んだんだけど。」

「俺の弾は幸運弾じゃなかったんですか。」


「なんで幸運になるはずのお婆さんが

俺の弾が当たって死んでるんですか。」


先輩がゆっくり口を開いた。


「そのお婆さんは本当は1人で誰も来ないまま死ぬはずだったんだ。」


「最後に疎遠だった息子に会えて

ありがとうって言えたじゃねえか。」


「それがお婆さんの最後の幸運だったんだよ。」


「そんなのって…。」


幸運、俺が思っていた幸運とは少し違った。

目に見える幸運、宝くじに当たることや

病気が治ったり、難病が早く見つかる様なものだと思っていた。


最後に息子に会える。

それが幸運なのかよ。


俺は今朝、少し期待をしていた。

お婆さんにどんな良いことが起こるのだろうって。


少し悔しかった。

だが、わかったことがある。


幸運は人それぞれなのか。


「先輩。」

「俺、今日何発撃てますか。」


先輩が少し心配そうに答えた。


「お前は、今日から3発撃てる。」


「わかりました。」


俺はライフルに弾3発を込めた。


幸運はちゃんと選んで

当てたい人に当てよう。

そう決心したのだった。


先輩の顔が少し

悲しそうに見えた。


「まあ、あとは気楽にやれよ。」


そう言い残して先輩は持ち場に向かった。


そういえば、なんで先輩は撃ってもないのに

あのお婆さんのことがわかったんだ…。



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