第6話 自信のない青年
翌朝。
俺は持ち場に着いていた。
今日も、先輩はまだ来てないようだ。
お婆さんの件を確認する前に
昨日撃った人をスコープで見てみたい。
昨日撃ったのは
青年と外れて当たった人だ。
もう1発は光が追えなかった。
履歴を出して
スコープで見てみよう。
まずは青年からだ。
なんだ、何かを描いている。
あれは、漫画だ。
何やらそわそわしている。
応募用紙を眺めている。
どうやらコンテストに応募するか
迷っているらしい。
「どうせ、無理ならやってみよう。」
原稿を応募用の封筒に入れた。
どうやら応募するみたいだ。
そのまま封筒を持って家を出た。
直接、出版社へ持っていくようだ。
電車に乗っている。
席は空いている。
座席に座った。
しばらく時間が経った。
青年が電車を降りようとしたところ
足の悪いお爺さんが転んだ。
青年は急いでお爺さんに駆け寄った。
肩を貸して電車の中から駅のホームまで
一緒に出た。
「ありがとう。」
青年がお爺さんからお礼を言われた。
「いいえ、足大丈夫ですか。」
「お気をつけてくださいね。」
青年がお爺さんに挨拶をした。
青年はあたりを見渡した。
「あれ、封筒がない。」
どうやら電車の中に封筒を忘れたらしい。
青年は肩を落とした。
さっきのお爺さんが話しかけてきた。
「どうかしたのかい。」
青年は答えた。
「いいえ、なんでもありません。」
お爺さんに駆け寄った時、
封筒を電車に忘れたなんて
言えるはずもなかった。
お爺さんは、名刺を渡した。
「もし何か力になれることがあったら
連絡しておいで。」
その気持ちだけで十分だった。
どうせ応募してもどうなっていたかなんて
わからない。
そんなことを思っていた。
「お客様、すみません。」
「先ほど、他のお客様が封筒を
忘れていたのを発見してくださり
お持ちしました。」
駅員が封筒を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
「これで応募できます。」
お爺さんが言った。
「ごめんね。ありがとう。」
お爺さんが封筒を見た。
「それ私の会社の住所だよ。」
青年は一瞬、頭が真っ白になった。
「君はもしかして、それを応募しに行くのかい。」
青年は応募しようとした原稿を見た。
「はい…。」
「今回は意を決して応募してみようと思います。」
お爺さんが言った。
「それはよかった。」
「どんな原稿か楽しみですよ。」
青年は少し自信無さげに言った。
「応募したことないので
あまり自信はありませんが。」
お爺さんは言った。
「自信がないなら、やめておきなさい。」
「自信がないものを人に見てもらうのは
よくない。」
「まだ応募期限はあると思う。」
「自信がでるまでやってみなさい。」
「それで初めて、あなたの気持ちが作品に
のるんですよ。」
青年はハッとしていた。
漫画を描きたいのは、好きだからだ。
でも、応募しようと思ったのは
これを誰かに見てもらいたいと思ったからだ。
確かに自信がない。
お爺さんは青年を見ていた。
「ありがとうございます。」
「期限まで自信が持てるようにやってみます。」
お爺さんの表情が緩んだ。
「そうですか。
ぜひ、楽しみにしています。」
「無理はせずに頑張ってください。」
青年はそのまま家に帰っていった。
「あれ、まだ応募しなかったのか…。」
俺はてっきりそのままお爺さんに
原稿を渡して、何かの賞でも受賞する流れになると思った。
まあ、また今度見てみよう。




