第2章5話 戦場輝く
スカルとストロが現場に着く頃、伝令が届いた。ウルストに勇者一行が参戦。半日で壊滅したという報告だった。
「勇者が現れた際は私たちに戦闘は預けてくださいねぇ。無駄な死はいりませんからぁ」とルラーが伝令に伝えると伝令は綺麗な挨拶をして持ち場に戻っていった。
「皮肉ですねぇ。アンデッドが死を忌避するなんてねぇ」
「そんなことあらへんで。アンデッドだろうが皆、兄弟や。誰が兄弟の死を望むんや」
「確かにそうですねぇ」
ルラーは少し寂しそうな雰囲気で防壁が並ぶ方向を見やった。戦線はついにスタリフに移り変わる。
ルイとウッドは前線が近い防壁に配属されていた。この二人の主な役目は勇者登場時の足止めだった。
「そろそろだな」
「勇者と戦えるなんて嬉しくてしょうがないわ」
「何言ってんだ。当たり前だろ。最強の敵とやれるなんて戦士の誉れだ」
「ダハハ。そうだな」
ウッドは気丈に振舞っていたがその手は震えていた。それが武者震いなのかルイは聞くことができなかった。
「作戦は覚えているか」
「もちのろんや。あんたの隊長や兄貴は砦で待機。ここスタリフで勇者との最初の戦闘をするのがわいらで時間を稼いでのちに隊長が合流やったな」
「そうだ。よく覚えていたな」
「こう見えて事務管理を任されるくらいにはしっかりしてるんやで」
「そうだったな。すまん」
「それにしてもまさか半日でウルストが壊滅するとは思わなかったわ」とイヤリングを触りながら、ぼそりと呟いた。
「おかげで情報が全然そろってないからな。もっと時間を稼いでくれてもいいよな」
「ほんまやで。これでここも半日で壊滅したら魔王様に顔向けできんわ」
「同意見だな。まぁそんなことは無いようにするがな」
「流石ルイやな。ダハハ」
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目の前の光景にスカルは息を飲む。輝く泉の周りは空気に粘度を感じるとさえ錯覚できるほどの濃度の魔素を纏っていた。泉自体からも途轍もない魔素を感じることができた。スカルは驚くと同時に推測が当たったと胸が弾む。
霊峰フルムの頂上には最強の魔物、原初の龍種が存在すると言われている。その龍種が持つ魔素に充てられた雪解け水が流れ、ここに集まっていた。
今の私には必要なものだ。不安要素は払拭された。やることをやろう。
最後と思われるアイアンリザードを討伐したストロがへたれこむとほぼ同時ぐらいにスカルが合流した。
「どこ行ってたんですか。大変だったんですよ」
「よくやったな。この数のアイアンリザードを倒せるなんてすごいじゃないか」
「そんな急に褒めないでくださいよ」とストロは左耳についているイヤリングを触りながらもじもじする。
「大の男がもじもじするもんじゃない。もっと厳しくする必要があったか」
「これ以上厳しくしたら死んじゃいますよ!」
「そうなのか? それにしても素で話せるようになってきたな。その方が接しやすい」
「…………その……ありがとうございます。僕のた」
「気にするな。ここからが本番だ。それにお前のためではない。この戦いに勝つためだ。それにもうあいつが来たかもしれん。早く戻るぞ」とストロの感謝の言葉を遮るように言葉を放つ。ストロの方を見ずに少し照れくささが混じっていた。それを感じたストロも特にそのあと言葉を続けることは無く、返事をしてスカルの後に着いていく。二人は足早に洞窟を抜け、砦への帰路に着いた。
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「シャインソード!」
巨大な防壁を左右に真っ二つに切り裂く光の斬撃が後方に抜けていく。ルイとウッドは斬撃を躱すことができたがその斬撃の威力に息を飲む。
「思わず笑っちゃう威力やな」
「気を抜くなよ。一瞬が命取りだぞ」
「あんたに言われなくても気は抜かへんで」
ルイとウッドの前には4人の人間が立つ。少年に見える金髪の人間。醸し出される雰囲気で勇者ライントだとわかった。そして盾役と回復役と魔術師の4人編成。もちろん勇者一行は1人1人が一騎当千の力を有している。
鎌を振り回し、戦闘前のルーティンをやるルイと両手槌を肩にかけて戦闘態勢を再度作るウッド。
「俺が勇者を貰う。雑魚は任せた」
「かっこいいところ取るやん。まぁええわ。死ぬなよ」
「それはこっちのセリフだ」
ルイが言い終わったタイミングで光がルイに飛んでいく。鎌の柄で受けると勇者ライントがすでに切りかかっていた。光と錯覚していたのは光速で動く勇者そのものだった。光速の攻撃にルイはついていく。瞬きの間に数十の斬撃が飛んでくる。それをなんとかいなし続ける。
ウッドは勇者一行に向かって大量の木々を自身の足元から伸ばし質量で押し潰そうとする。
「俺の後ろに! ウォールシールド!」
盾役が躍り出ると盾を構えてウッドが放った魔法の質量を迎え撃った。木々が盾に当たるとはじかれ、2つに裂けていく。防がれてしまったがウッドはそれに動じない。跳躍して両手槌を3人に目掛けて打ち下ろす。しかし盾役はその攻撃すら許さない。盾を上に向けると3人を覆うほどの大きさの光の盾を生み出し衝撃を受け止めてしまう。
「あかんな。攻撃全然効かへんやん」
「それはどうも」
盾役が軽口をたたくと同時に盾役の隣にいた若緑色の髪を靡かせた少女がウッドに向けて手をかざすと凄まじい風の塊が飛んできた。瞬時に両手槌を盾にしたが一瞬で彼方上空まで飛ばされてしまった。ウッドが空中で見下ろすと豆粒サイズまで小さくなった少女がまだ手をこちらにかざしているのが分かった。
「一番大人しそうな子が一番おっかないやないかい。本気でやらんと一瞬で死ぬやん」
ウッドは魔素を練り上げ放出すると木の鎧を体に纏った。そのすぐあと見えない風の斬撃が数度飛んできたが木の鎧から延びる枝が反射的に弾く。槌に鎧から伸びる枝たちがまとわりつき、槌が数倍の大きさになる。少女の風魔法を鎧が弾きながら自由落下する。そのまま光の盾に巨大な両手槌を振り下ろした。光の盾にひびが入り轟音とともに壊れた。しかしあの3人には攻撃が届かない。光の盾が耐えた刹那に風魔法で後方に引いていた。再び対峙する両者たち。
乾いた音がウッドの後ろを通過する。ルイが来たのだと分かり、姿をみると絶句する。頭蓋骨部分は斜めに切り取られ、すでに左腕を失っていた。立っているのもやっとといった様子だった。辛うじて鎌を右手に持っていたが形勢が悪いのは火を見るよりも明らか。
「ずいぶんとひどい格好やな」
「言ってろ。勇者の野郎、あほが付くほど強い。しかもまだ魔法の1つも使ってないんだから末恐ろしい」
「さすが勇者ってところやな」
勇者はあちらの3人のところへ合流した。
「シルドの盾が割れるのをみたのは久しぶりだね。怪我はない?」
「大丈夫だ。ウィスのおかげで助かった」
「流石だねウィス」
「そんな……私はやることやっただけですよ」と若緑色の髪の少女は赤面する顔を手で隠す。
「ライント怪我してるじゃないですか。治癒魔法をしますね」
「ホーリー気遣いありがとう。でも必要ないから。みんなのために使ってあげて」
ルイは戦闘不能なりかけ、ウッドは全力攻撃でも相手方の僧侶の出番がないぐらいには攻めあぐねている状態。完全なジリ貧状態だった。ライントは2人を見やって、次の算段を立てはじめていた。そしてライントが一歩を踏み出そうとした時、聞き慣れた規格外の音量の声が響き渡った。




