第2章2話 第8部隊の3兄弟
頻度って確保するの難しいですよね。一応週1を目標にしてますがへいきで遅くなります。強く律せるように努めます。
ということ長い目でみてくれるとありがたいです
到着した砦の裏門には大きな人型の豚、オークが3人並んでいた。とんでもない声量のあいさつはそのうちの一人の喉から出た音だった。
「やっときたな。第4部隊の皆々! 待ちくたびれたで!」
「兄貴、我々も来てからまだ1週間でっせ」
「そうやったな。そんな待ってなかったわ。ガハハハッ」
ひと際、声も体も大きなオークがボケなのか天然なのかがいまいちわからない挨拶すると隣にいた2番目に大きなオークがさらりとツッコむ。
「相変わらずですねぇ。ブリックさん。首尾はどうですかぁ」
「バッチリや。絶好調でしょうがないわ」
「何言っとねん兄貴。国に置いてきた奥さんに会えなくて寂しくて食が細くなってるって言っとったやんか」
「意外と繊細なんですねぇ」
「兄貴って意外と可愛いところがあるんやで」
「お前よくも恥ずかしいことを言ってくれたな!」と言ってブリックがウッドを突き飛ばすと衝撃で3メートルほど飛んでいく。
「おっとすまんな。力加減をミスってもうた」
「不意打ちはいかんよ兄貴」とウッドはフラフラと立ち上がる。
「じゃれ合いで怪我をするなんてことはないようにしてくださいねぇ」
「この程度で怪我する奴はうちの隊にはいないわ。ガハハハッ」
その発言をきいたウッドは慌てて効いていない振りをする。実際は結構なダメージがあったがそれを表に出しては男が廃るといった具合だ。
ジーンはやれやれとみている。スカルはするりと3番目に大きいオークの横に行き、話しかけた。
「お前はあの2人の輪に入らないのか」
「兄さんたちの会話のテンポ早いからついていけないんだ」
「そうか。名はなんという」
「えっと……ストロって言います」
「そこのスケルトン! 初めて見る顔やな。ストロに興味を示すとは見どころがあるやないか。お前の名前はなんていうんや」とストロと話すスケルトンに興味をひかれたブリックは会話に割って入り、距離度外視の声量でスカルに話しかけた。
「私はスカル。第4部隊では新参者だから知らないのも当然だろう。一応そこのルイの部下になる」
「ルイさんな。言っておくがこいつはかなり強いぞ。ブリックの兄貴」
「ルイが絶賛するほどか! これは訓練の時が楽しみになってきたわ! ガハハハッ」
ブリックの勢いに押され、ストロは端で縮こまっていた。
「皆さん再会が嬉しいのはわかりますがこんな場所でなく、続きは砦内にしませんか」
ジーンが提案をすると一行はそれに乗っかるように砦の中に移動することとなった。ストロはガシガシと歩く二人のオークの後をついていく。
その姿を見たスカルは砦内に向かう途中でルイに3人の関係性を尋ねた。ルイは何も気にすることなく、3人について話した。
「なんとなくわかったと思うがあの3人は兄弟だ。第8部隊隊長のブリックの兄貴は戦闘力と求心力を兼ね備えた生まれながらのリーダーだな。次男のウッドは木魔法が得意で戦闘力は兄に次いで2番目の実力者だな。聞いた話では第8部隊の事務仕事も担っているらしいからうちのジーンみたいな立ち位置でもあるかもな。3男のストロはかわいいやつではあるがこれと言ってパッとしないやつでよ。あの感じだから戦いも好きじゃないんだとよ。あの兄たちから想像できない弟だよな」
「そうか。聞きたいことは聞けた。助かったルイ」
「だからルイさんな」
砦内に入り、通路を歩くとあちこちから第8部隊所属のオークたちから挨拶が飛んできた。それに対してブリックは規格外の声量で返事をする。そしてルラーやルイたちの姿を見るなり、オークたちは丁寧な挨拶をした。砦内をオークたちは動き回り、防衛の準備に勤しんでいた。
スカルは統率されたオークを見て感嘆する。比較的知性の低いオークは群れることがあったとしてもそこに秩序が存在することはないに等しい。そこにある最低限の秩序は力の差で証明された階級のみとされていた。これはスカルが人間だった時のオークに対する一般的な評価だった。しかし、その評価は一面的評価だったと確信できる風景だった。様々な要因が考えられるがブリックの人柄も大きな要素だと推測できた。
一行は砦内のひと際大きい応接室に入っていき、そこにある円卓を皆で囲んだ。
第4部隊と第8部隊の上層部であるブリックたちとルラーたちは現状を冗談も交えながら話し合った。
現在は防衛準備も着々と進み今日でほぼ完了状態になったそうで、第4部隊が特別やる事と言えば警備ぐらいだった。オークたちは防衛準備と警備の両立でこの1週間働きづめだったこともあり、疲労を取る必要があった。
残る防衛準備は二日後に届く予定の追加物資搬入のみ。たった1週間でここまで仕上げてしまう第8部隊の仕事の早さにはスカルも目を見張った。
「第8部隊の皆様には頭が上がりませんねぇ」
「せやろ。もっと感謝してくれてもええんやで」
「感謝していますよぉ。これならお土産を持ってきたかいがありますねぇ」
「なんやて! 何をもってきたん」
「私が好きなおいしいお酒をお持ちしたんですけど今夜は警備を我々にお任せして休まれてはいかがですかねぇ」
「酒やて?こんな有事に飲めるわけないやろ」
「魔王様からの許可もいただいているんですがねぇ。仕方がないので私たち側で……」
「ウッド、作業停止してすぐに宴会の準備や! 久しぶりの酒が飲め……ゴホン、第4部隊の歓迎会をやるで」
ウッドはブリックの命令を受けて部屋を飛び出していく。ブリックは「酒はどこだ」とソワソワしながら聞いてきた。ルラーが馬車の中にあると伝えると矢のようにブリックが部屋を出ていった。あとでスケルトンたちに運びこんでもらう手筈だったが、ブリックにかかればその必要もなくなりそうである。ここでも第8部隊の仕事の早さが発揮される形になった。あっという間に歓迎会の準備が終わり、砦内のホールには多くのオークが集まった。ルイとジーンの素早い対応で遅れて到着したアンデッドたちを適切な警備配置につかせた。アンデッドで物の味を感じ取ることができるものは限られており、限られたものだけがこの歓迎会に参加した。
ブリックが歓迎会の音頭をとり、歓迎会が始まる。オークたちは久しぶりの娯楽的なイベントに心を躍らせる。葛藤を持つものもいたがブリックがうまく懐柔した。
「楽しむときはとことん楽しまないとな」
「ブリックさんはいつも楽しんでいるように見えますがねぇ」
「そうか? それがわいの性かもしれんな。ガハハハッ」と一笑いしたあと酒を喉に流し込む。むくりと立つと第8部隊と第4部隊の面々とコミュニケーションを取りに練り歩いた。
スカルは端の方で落ち着いて飲んでいたが、周りのオークの視線が刺さり居たたまれなくなってホールを後にした。逃げのびた通路で端に座り込んでいたストロを発見し、声をかけた。するとストロはまるで驚かされたように声を上げる。
「そこまで驚かなくてもよいだろう」
「急に声をかけるからですよ」
「ストロよ。なにをしていた」
「なにもしてないですよ。あのような場が苦手なんです。静かな場所の方が好きです」
「そうか。それはわたしも同意見だ」
それから特に話題を振るわけでもなくストロの横に座り、ゆっくりと酒を呷っていた。反対側の壁には窓があり、そこから夜空が見える。しばらく2人はその景色を黙って見ていた。先に口を開いたのはストロだった。
「どうして僕を気にかけるんですか」
「どうしてそう思う」
「普通は兄さんたちの近くに行きたがるんですよ。スカルさんは僕に話しかけてきたからそう思っただけです……ごめんなさい。自意識過剰過ぎました。忘れてください」
「なんとなくほっとおけなかったのだ。そこに理由はない。気にするな」
「そうですか」
ふたたび、静寂が訪れる。遠くではみんなの騒ぐ声とひと際大きなブリックの声が響いていた。聞こえてくる声の内容はわからないがとにかく楽しさが伝わってきた。また口を開いたのはストロだった。
「スカルさんは強い人だと伺いました。どうしたら強くなれますか」
「なぜ強さを求める。理由がなければそこには虚しさしか残らんぞ」
「兄さんの役に立ちたいんだ。性格的にみんなをまとめたりとはできないからせめて戦いくらいは強くなりたいなって……理由になってるかな」
「理由になっているさ。ただ引っ込み思案なだけだと思っていたが、役に立ちたいと願えるだけの胆力はあって安心した。クフフ」
「なにがおかしいの」
「昔、同じようなことを頼まれたのを思い出してな。馬鹿にしているわけではない。ストロよ。良ければ明日以降で訓練の場があれば強さについて微力ながら力添えしよう」
「ほんと。ありがとう。スカルさんはいい人だね」
「いい人ね。そんな大それたものではないよ」
遠くからストロを呼ぶ声が聞こえた。それがブリックの声だとわかったストロは慌てて立ち上がり、ホールへとかけていく。それをみてスカルはないはずの目を懐かしげに細めていた。




