第1章3話 スケルトンは肉薄する
立ちふさがった女騎士は美麗な礼をする。
「まずは自己紹介を。第5部隊副隊長メイ・ナルカミだ。そしてそこに転がっているバカの姉だ。」
オスカルは会釈を行い、メイの自己紹介に反応を見せる。
「礼儀もある。バカライエンよりもよっぽど騎士らしいじゃないか。さきほども言ったが私と勝負をしないか」
オスカルは近くに落ちていた同胞が持っていたであろう剣を取り、構えることでメイの言葉に応じることを示した。
その姿を見たメイは不敵に笑い、腰に携えている刀の柄に手をかける。オスカルはその瞬間に防御姿勢に移行しようとした。正しくは防御姿勢が間に合わなかった。轟音とともに光がオスカルの体の横を通り抜ける。光だと思ったものはメイ自身だった。オスカルの左腕が乾いた音を立てて地面に落ちる。雷を彷彿とさせる剣閃は副隊長にふさわしい力を示していた。
「反応しようとするだけでも凄い。誇っても良い。しかし右手だけでこの私とやりあえるかな」
そうしてメイが再度、構えようとするとその構える手が止まる。そして目の前の光景に息を飲む。
このままではダメだな。奥の手をもう出さないといけないとは。
周囲の魔素がオスカルに収束していく。そして骨が漆黒に変わっていく。やがて漆黒のスケルトンが完成する。眼窩が赤く光る。ぼやっと光り、異質な雰囲気が醸し出される。
オスカルは変化のない剣をちらりと見て投げ捨てた。
剣には影響を及ぼさないのか。この辺りは改善が必要だな。
あっけにとられたメイだったが、これからの戦いを想起し奮い立つ。雷のような剣閃をもう一度オスカルに見舞う。しかし、良い手ごたえが刀から返ってこなかった。腕を落とした一撃と同等かそれ以上の攻撃だったがオスカルは平然と右腕で受ける。その姿にメイは目を見開く。その後も打ち合いをするがメイの攻撃が全く効かない。メイの横薙ぎをオスカルは胴体部分で受けながら、お返しにメイの腹部に拳を突き刺す。その攻撃をメイは後ろに飛ぶことでいなした。そして刀を鞘にしまい声を上げる。
「まさかここまでとは! 私はとても嬉しいぞ」
周りでみているオーガたちは声も出さず、息を飲んでいる。近くで転がっていたライエンも目を覚ましていたが目の前の戦闘に目を奪われて動けずにいた。
「では私の最高をみせよう! 貴様なら受けることができるはずだ」
メイは居合の姿勢を取る。姿勢は低く、体はバチバチと雷を纏い始める。オスカルは右腕に魔素を集中させ、現状の最高硬度で迎え撃つ。
攻撃を受ける姿勢を作るとルイが声を上げる。
「受けるな!」
ルイをちらりと見た後、メイに視線を戻す。まだそこにメイはいる。
先ほどの斬撃と同じかそれ以上なら躱せるような速度でくるとは到底思えない。ここは受けるしか……。
躱すか受けるか一瞬迷った刹那、まだそこにいると思っていたメイがすでに目の前にいた。刀はもう右腕に接触している。刃がゆっくりと右腕に沈み込む。徐々に刃が進んでいく。光速の世界で置いていかれているのはオスカルの体だけだった。思考や視界はメイの攻撃を認識できているが体が動かない。そして刀が右腕を通過し首元に滑っていく。
死が現実を帯びる。
首元に刀が届く寸前で刀が止まった。
「メイ、ここまでだ」
オスカルの横には長髪の男が立っている。その男はオスカルを切り裂こうとしていた刀を3本の指で受け止めていた。




