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第1章2話 賢者スケルトンは違いを見せる

 訓練が始まった。ただ大量のスケルトンを倒すというだけのシンプルな訓練。オーガたちがもつ剣や棍棒で次々とスケルトンたちが粉砕されていく。200を超えるスケルトンたちが魔素の粒子に変わっていく。

 スケルトンたちもただやられるわけにはいかないと躱して攻撃をするが所詮スケルトン、1回躱すのが精いっぱいで反撃する余裕がない。スケルトンから攻撃しても容易に躱され、致命的な一撃を貰ってしまう。

 オスカルも標的となるが攻撃1つ1つをひらりと躱す。そして、うまく標的が自分以外のスケルトンになるように誘導する。付近のオーガは誘導されていることに気づかない。しかしそれも長く続かない。スケルトンの数が減ったタイミングで一部のオーガたちがオスカルスケルトンの異様さに気づき始める。極めつけは二人のオーガに囲まれるが反撃までしてしまった。剣の横薙ぎをしゃがみながら躱しボロボロの剣で攻撃者の鳩尾に一撃を加える。もう一人のオーガが蹲ったオーガの背後の上から棍棒を振り下ろすがオスカルは右に素早く躱し、顎に鋭い一撃を加えてそれぞれをノックダウンさせる。

 このタイミングでオーガたちの動きが止まる。通常1体のスケルトンが複数のオーガを手玉に取ることはあり得ない。それだけスケルトンとオーガには戦闘力に差がある。そもそもこの訓練の意味は数の多い相手に対しての乱戦を想定していた。オスカルの存在はこの想定を壊す形になった。

 先ほど訓練の号令をかけたオーガがオスカルの前に出てきた。

「こいつは俺にまかせろ。このライエン・ナルカミ様が直々に相手をしてやる」

 オスカルは静かに構える。

 先に仕掛けたのはライエン。ライエンが振り下ろすのは剣というよりも刀だった。細身の刀身に手元には綺麗な鍔が見える。ほかのオーガよりも鋭く素早い一撃をオスカルはひらりと躱す。ライエンの攻撃はこの一撃では終わらない。流れるように横薙ぎが飛んでくる。オスカルは後ろに飛びのいて回避する。刀は斜め、横、縦と次々と振られていく。しかしオスカルには一撃も当たらない。あまりに当たらないのでオーガたちにも動揺が走る。

「あのスケルトン、ライエンの攻撃を見切っているぞ」

「スケルトンがあんなに素早く動けるのか?」

 オーガたちからは思わず、感嘆の声が漏れる。その異様な状態に拍車がかかる。

 華麗に躱すスケルトンが片手を前に出し手招きの仕草をする。言葉を喋れないスケルトンはかかってこいよと言わんばかりの挑発行為をしたのだった。それを見たライエンは頭に血が上る。

「壊れない程度に留めようと手を抜いたのが分かっていないようだな。調子に乗るのも大概にしろよ」

 ライエンのつま先に体重が乗る。オスカルの間合いの外にいたライエンが瞬く間に距離を詰め、オスカルの前で刀を振りかぶっている。窮地にも見えた瞬間だったがオスカルにはライエンの動作がすべて見えており、先ほどと同じように斬撃を躱した。しかし今回は躱したと思っていた斬撃によって腕部分の骨に切り込みが入る。オスカルは動揺せず、冷静に分析をする。続けざまに何度かライエンは斬撃を放ったが今度は当たることがなかった。それにライエンは動揺するが頭を振り、動揺を振り落とす。

 見た目とは裏腹に繊細な攻撃をする。これができるならあれを警戒しないといけないな。

 オスカルはライエンの攻撃の種を見破り、奥の手さえも見透かす。

 ライエンは再度刀で攻撃を行う。4回目の斬撃が躱された直後、躱した先に口から音という名の振動の塊を飛ばし、オスカルに致命傷となる一撃を見舞った。

 しかし、振動の塊を受けたのはボロボロの剣のみだった。奥の手を躱されたライエンの視線はオスカルに釘付けだった。剣を地面に突き立て、剣の上で倒立するように振動の塊を躱した。剣は振動の塊に撃ち飛ばされる。撃ち飛ばされる反動を使ってライエンの背後にバク転しながら飛び移る。オスカルを視線に捉えるように振り返ったライエンの顎に骨の拳が突き刺さるとライエンは大の字になって倒れた。

 見ていた魔物たちは思わず息を飲む。戦いを見届けていたルイは黒いローブで表情は隠れているが思わず、前に乗り出すほど心が踊っていた。

 オスカルがやった芸当の種明かしは実にシンプルだった。スケルトンは魔素によって体をコントロールしている。賢者であるオスカルからすれば、高速かつ正確に魔素を使ってコントロールすることは造作のないことだった。そのため高速戦闘にスケルトンの身でありながらついていくことができた。要は魔法系脳筋であった。

 破壊されないためとはいえ、少々張り切りすぎた。さすがに普通のスケルトンですと誤魔化す段階をとうに超えてしまっている。どう乗り切ったものか……。

「随分と面白いことになっているではないか。今度は私とお手合わせ願おうか」

 この訓練場の入り口から声が飛んできた。コツコツと足音を鳴らし、長い銀髪をなびかせながら、現れたのは綺麗なオーガの女騎士だった。体型は引き締まりつつも女性らしさも持ち合わせている。

 その女騎士はオスカルの前に立ちふさがる。

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