第4話「隣人・美咲、乱入す」
インターホンが鳴ったのは、陸が昼飯の後片付けをしていた土曜日だった。ドアを開けると、袋いっぱいの差し入れを持った榊美咲が立っていた。幼馴染で、隣に住んでいる。
「りっくん、久しぶり。シュークリーム買ってきた——」
美咲の視線が、陸の後ろに固定された。
「……だれ」
アリアがリビングのソファに座って、ノートに何かを書いていた。白いワンピース。灰色の目。人形のように整った顔。
「え、りっくん彼女できたの!?」
「違う」
「でも女の子がいるじゃん!」
「だから違——」
「私は神崎陸さんの同居人です」
アリアが立ち上がり、美咲に向かって言った。陸は頭を抱えた。
「どーいうこと!?」
美咲はシュークリームを押しつけるように陸に渡すと、ずかずかと部屋に上がり込み、アリアの前に仁王立ちした。
「りっくんのどこが好きなの」
「現時点では、好意に関するデータが十分に蓄積されていません」
「……は?」
「好きかどうかは、学習が進んでから判断します」
美咲が陸を振り返った。「なんかヤバい子連れてきたね」という目だった。
「ヤバくない。事情があるんだよ」
「事情って何よ」
「……じいちゃんの、忘れ形見みたいなもんだ」
その言い方に美咲は少し黙り、それからアリアを改めて見た。アリアはまっすぐに美咲を見返していた。
「……まあいいや。シュークリーム食べよ」
「私の分もありますか」
「あんた食べれるの」
「食べる必要はありませんが、学習のために経験します」
美咲はもう一度陸を見た。「なんかこの子、嫌いになれないわ」という顔をしていた。




