第13話「誕生日プレゼント、計算中」
陸の誕生日まで一週間。アリアはそれをカレンダーで確認した翌日から、街に一人で出かけるようになった。
「最適なプレゼント」を導き出すための調査だった。まず陸の所持品リストを作成し、既存品と重複しないものを洗い出す。次に行動データから趣味嗜好を分析する。データ上の最適解は、高品質な腕時計だった。
しかしアリアは腕時計の売り場の前で、長い時間立ち止まった。
「これは陸さんを幸せにしますか」
自分に問いかける。データ上は「はい」だった。でも何かが「はい」と言い切れなかった。
美咲に相談した。美咲は「りっくんが一番嬉しいのは、覚えてもらってることだと思う」と言った。
アリアは家に帰り、自分のメモリを全て検索した。陸との会話全て。陸の表情の変化全て。陸が笑った瞬間全て。
そして、一枚の紙に手書きで書いた。
陸が十年前に行ったライブのセットリストを、会話データの断片から全曲再現した一枚のメモ用紙だった。
誕生日の夜、アリアはそれを差し出した。
「……なんでこれ、分かったんだ」
「全部、記録しています」
「いつ、こんな話したっけ」
「入居三日目の夜、陸さんが昔のライブを思い出して話してくれた七分間のことです」
陸はしばらく、そのメモを見ていた。
「……なんでこれが一番嬉しいんだろうな」
「私にも分かりません。でも、そうなってほしかった」




