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第11話「君は何かを感じているか」
夕暮れの屋上は、風が少し冷たかった。
陸が洗濯物を取りにきたついでに柵にもたれていると、後ろからアリアがついてきた。いつものことだった。
「一つ聞いていいか」
「はい」
「おまえは本当に、何も感じないのか」
アリアは即答しなかった。それが陸には少し意外だった。
「感情と定義されるデータ変動は、まだ十分に確認できていません」
「じゃあ今、この夕日を見てどう思う」
アリアが空を見た。沈みかけた太陽が、雲の端をオレンジ色に染めていた。風が吹いて、洗濯物が揺れた。
「……きれい、という言葉を使いたい気持ちが、生まれています」
「それ、感情だよ」
「でも確信が持てません」
「俺も確信なんてないよ。感情って何かって、人間だって説明できないんだから」
アリアは空を見続けた。陸も空を見た。
「感情があると確認できたとき、私はどうなりますか」
「どうって」
「変わりますか。壊れますか」
「変わるんじゃないか。でも壊れはしない」
「……もっと、面倒くさくなりますか」
陸は少し笑った。
「なるんじゃないかな。感情って、面倒くさいもんだから」
「陸さんは、それでいいですか」
「……まあ」
陸は答えながら、意外と即答できた自分に少し驚いた。




