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謎の神聖魔術使い

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

 アタシは諦めが悪く、なんとか目の前の男を全力で説き伏せようとした。



 こんなことになったのも、全ては暗晦の森へと無策に誘ったアタシのせいだと考えていたからだ。

 だからこそ、ただただ隣の馬鹿女をーー、アタシを助けるため、自身を犠牲にして奴隷に成り果てることを躊躇なく選んだ救いようのない馬鹿女を、なんとか救ってやれる可能性にかけて叫びあげた。

 

 考えろ、エミリア=ジーゲンルーベック=カッセルフェルト。

 お前に出来る全ての可能性を捜し出すんだ。


 頭ではとっくにそう理解していても、いくら考えてもそのための手法は思い浮かんでくれなかった。

 結局のところアタシの頭の程度じゃぼろぼろと情けなく咽び泣きながら、目の前の悪者相手にお情け頂戴の懇願の言葉を、繰り返し吐き続ける以上に出来ることは無かった。

 そんなアタシの姿を見たキリカは、「いいや私だ、私を連れていけ! 私だ!」と、何度も声を荒げて繰り返してくれるのだ。

 だからこそ、アタシが更に激しく咽び泣いてしまったのも無理はなかった。



 しかし、アタシ達の努力は完全に、完璧に徒労に終わるだろう。



 目の前の男はゼウスでも何でもなかったし、雷霆ケラウノスが顕現することも当然になかった。

 何のことは無い。刺青鎌女の一撃で即死させられることは逃れられたとしても、更なる危機が訪れただけのことだ。

 

 目の前の男は金の事しか考えていない極悪人、かつあの暗晦の森の主ですら全く敵わなかったとんでもない絶対的強者だ。

 奴にとって、アタシ達のどちらか一人を選ぶ必要など全くない。

 二人共を攫ってしまい、足がつかないように奴隷商へと売りさばけばいいだけだ。

 だからこそーー、だからこそアタシ達の懇願などは、奴の眼にはあまりに滑稽に映っていることだろう。

 それでもーー、万に一つ、奴に温情が芽生える可能性にかけるしかなかった。

 

 

 ーーだけど。

 


 アタシ達の懇願虚しく、奴は目出し帽の下に、にやりと笑みを浮かべながら歩み寄ってくる。

 それから刺青鎌女を気絶させたときと同じように、アタシ達の額に手をかざし始めたのだ。


(あぁ、意識が遠のいてゆくのを感じる。今気絶なんて……気絶なんてしちゃいけない……だめだって……のに……身体はちっとも言うことを……きいて……くれ……ない……)

 

 --そして遂に。

 最期に奴の口が微かに動いたのを確認して、アタシの意識は完全に落ちてしまった。



「……その尊い心持ちを忘れるな、堅(・)物(・)娘(・)にお(・)転(・)婆(・)娘(・)」



xxx



レーヴェンマルク子爵家領 暗晦の森 入り口付近



「ここは……?」



 どれくらい眠っていたのだろうか。

 寝ぼけ眼を擦り、まどろみから意識を解放してゆく。

 身の回りを確認すると、手足を鎖で繋がれていたり、変態貴族に身体を弄ばれている最中ーーということは幸いにしてまだなかった。 

 今度は冷静になって周囲を確認すると、一番に目についたのは、隣でいまだ静かに眠りこけているキリカの姿だった。

 アタシは取り敢えずほっと胸をなでおろし、更に周囲を確認しながら同時に思考する。


(あの男が……あの男がいないのはなんでだ……? それにここは……暗晦の森の入り口……? それと……この魔術結界はなんだ……?)


 アタシはこの場所を知っていた。

 どうやら暗晦の森の入り口付近に佇む大きな木に寄り掛かるような形で、アタシとキリカは放置されていたということが理解できた。

 それもーー、私達の周囲より二回りほど大きく描かれた、光輝く魔術結界が張られた状態でだ。


 何がどうなっているのか、あの状況から何故こうなっているのか、あの男に何かがあったのか、誰かが助けてくれたのか……?

 様々な考えが頭の中を巡っている最中にーー


「エミリア君! 怪我とかはなかったかい!?」


 突如少し離れた場所から、長身で眼鏡を掛けた優しそうな男性に声を掛けられて思考を遮られる。

 全体的に白を基調にしたローブに身を包むこの男性をアタシはよく知っていた。

 現メルツィーナ公爵家当主、アタシ達と同級生の神聖魔術師ルルイ=フリードマン=メルツィーナの父親であるヴィラ様だった。

 アタシは失礼のないように、丁寧に言葉を返した。 


「はい、アタシは大丈夫です、多分キリカも……。でもメルツィーナ家のヴィラ様が何故ここに……? アタシ達はあの刺青鎌女と対峙して……目出し帽の男は……? それに、この結界は……?」


「そう、それが聴きたかったんだよ」


 アタシが自身の頭の中に浮かんだ疑問を独白するようにそのまま質問すると、ヴィラ様は真剣な表情でアタシを見つめて言葉を続けた。


「途轍もない程に強力な魔術結界……ほとんどの魔物は触れただけで消し飛んで跡形も残るまい。それもこれ程の魔力が込められているならば、3日はゆうに効力を保ったままだろう」


「そんなことが出来る人間……ヴィラ様が施してくださったんじゃないんですか……?」


 アタシは推測を口にするが、ヴィラ様は即座に否定した。


「とんでもないよ。魔術結界の強度は術者の魔力総量に比例する。……悔しいけれど、僕にはここまでのレヴェルの魔術結界は逆立ちしたって張ることが出来ない。それにーー」


 その後、アタシはヴィラ様の口から出た言葉で、更に耳を疑わざるを得なかった。

 何故ならばーー、この国の誰もが知っている常識を、根底から覆すような恐れ多き言葉をーー

 それも神聖魔術使いの御本人から聴くことになるとは、まったく思いもしなかったからだ。



「信じられないことだけど……これは術式から判断するに神聖魔術による結界なんだ。だからメルツィーナの血統以外にも、神聖魔術の使い手が存在することになる」

次回は明日か明後日の夕方アップ予定です!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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