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悪役の思惑

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「なんという痴れ者ダ、興が削がれたワ! もうよイッ! 失せロッッ!!」


 それはキョウカが大鎌を軽々と振り上げ、まさに少年の命を刈り取ろうとした瞬間だった。


「ーーーーッッ!?」


 突如雁字搦めに拘束されたような感覚がキョウカを襲った。

 大鎌を持つ両の腕に力を入れるーー、ぴくりとも動かない。

 踏み込んだ左脚に力を入れるーー、ぴくりとも動かない。

 大鎌を振り上げた姿勢のまま身動きを取ることが出来ず、何が起こっているのか訳も分からず、キョウカが出来たことと言えば、ただただ狼狽してゆくのみだった。


「カッ……ハッ……!? 馬鹿ナ……ッ、動けン……ッ!?」


 そんなキョウカの姿を見て、キリカとエミリアはただただ目を見開いて、困惑することしか出来なかった。

 しかしそんな二人とは対照的にトーリス仮面と名乗った目出し帽の少年は冷静で、一歩、二歩とキョウカの至近距離までゆっくりと歩み寄る。

 そして凶悪な笑みを浮かべながら、ようやくにして口を開いてゆく。


「早く大鎌を振り下ろしたらどうだ? もしくはーー」


 目出し帽の少年は、キョウカの耳元に触れるか触れないかの距離まで口を近づける。

 そして更に一言、残酷に言い放つのだ。



「魔眼で俺の身体の自由を奪ってみてはどうだ?」



xxx



 目出し帽の少年の一言でキョウカは確信する、否、確(・)信(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。


 いやしかし、そんな馬鹿な、そんなことがあり得るわけがない、そんなことが出来るはずがないッ!

 もしそうだというのならば、一体どれほどの……ッ!?


 キョウカはそこまで考えを巡らせた後、恐る恐る震えながら口を開きだした。


「貴……貴様……ッ!? 貴様モ……ッ、魔眼使いカ……ッ!? まさカ……まさカ、それだけで我の魔術障壁ヲ……ッ、抜いたとでもいうのカ……ッ!?」


「ご明察。この目出しマスクは魔眼を通しやすくするのに役立っている。どうしても視線が目元に集中してしまうからな。……さて、魔術障壁を魔眼だけで抜くということがどういうことか、お前程の実力者なら理解できるはずだな?」


 キョウカの中で、確(・)信(・)が確(・)実(・)になってしまった瞬間だった。

 冷汗がだらだらと垂れ始める。頭はこの如何ともし難い現状のせいでまともに働いてくれない。

 いたずらに時は過ぎてゆき、唯一キョウカが出来たことといえば、己の命運はもはや風前の灯火だと理解してゆくことだけだった。


「馬鹿ナ……ッ!? そんな人間ガ……そんなことが出来る人間ガこの国ニ……いヤ、この世にいるものカ……ッ!?」


 いまだ信じられないとばかりに、キョウカは驚愕の表情でそう言ったのだがーー


「そんなことより自分の心配をしたらどうだ? 俺はこれからお前の魔力を根こそぎ奪い尽くして弱体化させた後、奴隷商に高く売りさばくつもりだ。暗晦の森の主がこんな可愛らしい美少女とあっては、変態貴族もお前を散々にいたぶれることに金を惜しまないだろうからな」


 目出し帽の少年の言葉のせいで、無残にも思考を現実に戻されてしまう。


「ヤ……やめロ……やめテ……許しテ……ッ!」


 正真正銘、キョウカにとって初の命乞いだった。

 今まで己が人間を始末する際に、耳に胼胝(たこ)ができる程、散々に聴かされ飽きた言葉。

 揃いも揃って、挑んて来たのは其方だというのに、何故同じ言葉ばかり口にするのだろうかと呆れ返っていたそのつまらない言葉。

 だというのに、皮肉にも逆の立場になった今この瞬間で、まさにキョウカは理解したのだ。

 本当の恐怖に縛られた瞬間、この言葉しか口に出来ないものなのだということをーー



「次にお前が目覚めた時は、見知らぬ家のベッドの上だ。覚悟しておくんだな」



xxx



 目出し帽の少年がキョウカの額に右手をやると、彼女はぱたりとその場で眠る様に気絶した。

 そして一仕事終えた目出し帽の少年は少し息をついた後、今度はキリカとエミリアの方に歩み寄ってゆく。

 一部始終目を見開いて見守っていたキリカとエミリアに、忘れていた恐怖心が再度宿り始める。

 目出し帽の少年はそんな彼女達を嘲笑うかのように、彼女達の顎を右手で持ち上げて、交互に品定めを始めた。

 そうして暫くしてから、満足そうに口を開きだすのだ。


「ほほぉ、成程成程……。暗晦の森の主にばかり目がいってしまったが……お前達もよく見ると飛び切りの上玉じゃないか。しかし、いまだ奴の魔眼の力を跳ね除けられないとは、なんと未熟で出来損ないの魔術師達よ。喧嘩は相手を見てやるべきだったな。まぁ、お前達が身の程知らずだったおかげで、俺の懐は温かくなるんだがな」


「ま……待ってくれ!」


 目出し帽の少年の言葉を聴いて、先に声を上げたのはキリカだった。


「私達がいかに未熟で出来損ないで無謀な行動をとったか、今は痛い程理解しているつもりだ……。それに弱肉強食は世の常だ。弱者である私達がお前に何をされても文句など言えないことも、十分に理解している……」


 キリカは何か決心したように目を閉じた後、更に言葉を続ける。


「だがッ! 隣の雷魔術師だけは勘弁してやってくれないか! 私はどうなってもいいッ! 喜んでお前に身を差し出すッ! お前が望むのなら、どんなことでも言いなりになる! だが彼女は……彼女は私と違って心優しい御両親がいるッ! それにこのラドルフシュテット帝国にとって、どうしても、どうしてもなくてはならない存在なのだ! だから頼むッ! 無理を承知でどうか、どうか私だけで済ませてくれないか!」


 キリカの言葉を聴いたエミリアが即座に叫ぶ。


「ば……馬鹿野郎ッ! それはアタシの台詞だッ! おい変態仮面、コイツの貧相な身体付きを見てみろよッ!? ホントにまともな買い手がつくと思うかッ!? その点アタシは発育も良い! 変態貴族に受けもいいだろうし、だからこそ奴隷商も金を惜しまないだろうぜ! それにコイツは、無骨な親父さんの男手一つで大切に育てられた一人娘だ! そんなコイツを犠牲にして、いやしくも自分だけ助かったとしたら、例え神が許そうが何よりアタシ自身が許さねぇ! だから頼むッ! アタシに免じて、どうかコイツだけは見逃してやってくれ!」


 二人の心からの、身を切るような悲痛な叫びはーー

 想いを赤裸々に打ち明けた啖呵はーー

 その互いを想いあう美しい心持ちは、たとえ悪人相手といえど通用する可能性もあると思わせる程だった。



 --だが。

 これこそが、目出し帽の少年の思惑だったなどとは、彼女達は到底、考えもしなかっただろう。

 そして、彼は内心喜びながら、決して心の内を気付かれないように注意しながら、更に口を開いてゆくのだった。

【追記】

ごめんなさい、0時を少し過ぎたあたりにアップします!


次回は明日夜にアップ予定です!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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