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結果オーライ……?

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「信じられないことだけど……これは術式から判断するに神聖魔術による結界なんだ。だからメルツィーナの血統以外にも、神聖魔術の使い手が存在することになる」



 ヴィラ様が何を言っているのか、とてもじゃないが脳の理解が追い付いていなかった。

 だからこそアタシがヴィラ様の言葉を聴いて、うっと言葉に詰まってしまったのも、至極当然の反応だったと思う。

 口にするヴィラ様自身ですら、いまだ完全に信じ切れてはいないという面持ちだった。

 それほどまでに、アタシの中ではーーいや、耳にすれば全ラドルフシュテット帝国民が疑う言葉。


 神聖魔術とは、神々より与えられた所謂"聖"属性の強力な魔術。

 例えば魔術は火属性、雷属性、氷属性など、それぞれ属性ごとに分類されるが、聖属性は第二種の属性としてそれぞれの魔術に強化付与という形で備わることが多い。


 一般に、一つの属性のみの魔術は単式魔術、二つ以上の属性が付与された魔術を複式魔術と呼んでいる。

 特に聖属性は悪しき魔物の類などには効果抜群で、仮に同程度の魔力を消費した魔術師がいたとしても、単式魔術と複式魔術の違いもあり、その威力は比べ物にならない。

 だからこそ、メルツィーナ公爵家の魔物討伐の戦果は華々しいものであったし、同じ三大公爵家でも単式魔術しか使いこなすことが出来ないでいる斬属性魔術の使い手であるルーデル公爵家、雷属性魔術の使い手であるカッセルフェルト公爵家は各属性の魔術を極めることでしか対抗できなかったのだ。

 

 アタシ自身、喉から手が出る程に欲しかった第二種の聖属性ーーだが、"血統"の違いは努力ではどうしようもない。

 そう思っていた、そう思っていたからこそーー

 いや、思(・)い(・)知(・)ら(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)のを知っていたからこそーー


 だからこそ、ヴィラ様はアタシに諭すように言葉にしたのだろう。

 それに加えて、ヴィラ様の真剣な眼差し、声色、表情ーーもはやどれをとっても、全てが冗談などではないことを物語っていた。

 

 変わらずに真剣な表情を保ちながら、ヴィラ様は自嘲気味に言葉を続ける。


「それもさっきも言った通り圧倒的力量の差……同じ神聖魔術使いだと称されるのが恥ずかしくて仕方ない程にはね。本音を言えば……僕もこんな怪物が存在することをにわかに受け入れたくはない……」


 圧倒的……圧倒的力量の差だって……!?

 同じ神聖魔術師というだけじゃなくッ……!?

 どういうことだ……先程も逆立ちしたって、こんな魔術結界は張れないとおっしゃっていたが……。

 ヴィラ様はこの国で、間違いなく最低でも三指には数えられる程の実力者だぞ……ッ!?

 そんなヴィラ様ですら、桁違いの実力差があると、しかも御本人から言い出すなんて、確実にどうかしてしまっている……ッ!


 アタシはいてもたってもいられず、思わず口をついて言葉が出てしまう。


「そんな……そんな馬鹿なことがありますか! いや、ありうるはずがないッ! 神聖魔術は神々よりの賜物! 先祖代々神々に仕えてきた清らかなる血統、メルツィーナ公爵家にのみ振るうことを許された、悪しき者を穿ち、完膚なきまでに屠り去る聖なる力! メルツィーナ公爵家以外の者がいたずらに術式を組めばたちまちに神々の怒りに触れ、聖なる炎に焼き尽くされてしまうはずです! それに……仮に神聖魔術師が他に存在したとしても、この国で三指に数えられる実力のヴィラ様が到底及ばないなんてこと……ッ!?」


「しかし、現実に起こっているのだから仕方ないさ。皇帝陛下にも報告せねばならない」


「……ッ!?」


 何かを堪える様に、ゆっくりと、丁寧に語るヴィラ様のその姿はーーアタシを黙らせてしまうには十分過ぎたのだ。

 血の気が急速にひいてゆくのを感じる。冷汗が額をたらりと伝って頬にまで到達し、思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。

 ーーそんな化物が存在するのかと、恐らくアタシの顔はこれ以上ない程に青くなっていることだろう。


「……ところで、どうしてあのような場所で二人揃って眠っていたんだい? 二人が行方不明だと知らせを受け、暗晦の森の方面に向かったと聴いて捜索していたんだけど、僕達が発見したときには周囲に変わった様子はなかった。これまでの経緯を聴かせてくれるかい?」


 ヴィラ様の言葉で、はっとアタシは意識を戻した。

 そうだーーもしや、もしや奴が……?

 アタシは、すぐに思い出したかのように口を開いて、これまでの経緯をヴィラ様に伝えてゆく。

 そうしてーーアタシ達がピンチに陥り、魔眼使いの暗晦の森の主を更に強力な魔眼でいとも簡単に制したあの変態仮面が現れた場面について話すとーー

 これまで落ち着いて聴いてくれていたヴィラ様が、目を見開いて口を開きだした。


「暗晦の森の主をたった一人で……それも魔眼で身体の自由を奪って……ッ!? と、とにかくエミリア君の話をまとめると、だ。暗晦の森の主をまるで赤子の手を捻るかの如く制した、その……トーリス=ガリノ=マスクマンとかいう目出し帽の少年が手をかざすと同時に意識を失って……気づいたらここにいたと……? いやしかし……到底君が嘘を言っているようにも見えない」


 そこまで話すと、考え込むように黙ってしまうヴィラ様。

 きっと奴の正体について思案されているのだろう。

 ヴィラ様の姿を確認した私は、これまで整理した経緯を踏まえて、恐る恐る口を開いて推測を述べる。


「もしや……奴が神聖魔術使いなんでしょうか……? まさかアタシ達を……何のためかはわかりませんが、悪役の振りをしつつ……本当は……本当は助けてくれたんでしょうか……?」


 アタシの途切れ途切れの言葉に、ヴィラ様はいまだ考え込んだ様子でゆっくりと返答する。


「何の目的か、何が真意かは分からない……。もしかしたら、本当に暗晦の森の主を高く売りさばきたいだけだったのかもしれない。そして暗晦の森の主を魔眼だけで制したのだとしたら、状況的に神聖魔術師はそのトーリス君以外に考えられないだろう。そもそも魔眼というのは己よりも圧倒的格下の魔力量の相手にしか効果はない。まずは魔術師が展開する魔術障壁を抜く。その後、相手の視覚から魔力を送り込むことになるけれど、相手が十分に魔力に対する抵抗力を持っていたとしたら、身体を支配することなど到底できない」


 ヴィラ様は更に言葉を続ける。


「だからこそ、暗晦の森の主になど……常識的に考えれば魔眼が効果などあるはずもないんだ。君達が所属するラドルフシュテット魔術学院の初等部の皆でもわかることだ。……それなのに、即座に身体の自由を完璧に奪ったとあっては……」


 そこまで言葉にして、ヴィラ様は一旦言葉を区切る。

 顎に左手を当てて、しばらく何かを考えるために黙っている様子だったが、やがてゆっくりと口を開いてゆく。


「だが……敵か味方か、いずれにせよその目出し帽の少年に対して、近々大規模な捜索活動が起こるだろう。僕達の、隣国との紛争が絶えないラドルフシュテット帝国民にとって、平和のための戦力強化は知っての通り必要不可欠だ。もしも彼がエミリア君達を助けてくれた神聖魔術師なのだとしたら、更に味方になりうるのだとしたら、是が非でも御国のために尽力して貰わねばならない。勿論、君達を助けてくれた御礼を言うためにもね。ーーさて、御両親が心配しているだろう。事情は僕から伝えておくから、宿舎でたっぷりと叱られてきなさい」


 ヴィラ様はそう言い切った後、いまだ眠っているキリカを優しく抱き抱えて、待機させていた馬車の中へと運んでゆく。

 アタシは後を追うようにして、キリカの隣へと馬車に乗り込みながら考える。

 トーリス=ガリノ=マスクマンーーいったい奴は何者なのだろうか。

 何の目的があって、どうしてあんなことをーー


 そこまで考えた後、隣で眠るキリカにふと視線を向ける。

 安らかな寝顔だ。見ていて全く飽きがこない、整った美しい寝顔。

 やがて沸々と沸き上がる安心感とともに、アタシは満足せずにはいられなかった。

 

 そうだ、そうであるとも。

 紆余曲折はあったが、アタシは結局のところ、ついにこの寝顔を守ることが出来たのだ。

 泣き叫ぶ情けない姿を晒したとしても、何の後悔もあるはずはない。

 そうしてアタシは自然に、満足げな笑みが零れたのだった。

 大切な友達を守れたことだけでーー本当に、本当に心底満足していたのだから。



 --だからこそ。


 

 この後キリカの発言により、あの変態仮面を取り合うことになるなど、夢にも思いはしなかったのだ。

次回アップは明日、明後日予定です!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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