王宮騎士育成学校⑤
ファランにめっちゃ言われた後、俺は一通り今まで歩いた道を戻って寮に帰った。
「まさか、あんな人に神託を渡すのかよ女神様はよ…」
俺はため息をついてしまった。
多分あいつとは何度かまた会うだろう。
ふと思った。ファランはファラン・ミネルと名乗っていたなと。
名字を名乗っている、という事はどこかの王族なのか、と思ったが、少なくとも俺が知ってる昔の国にはそんな名字はいなかったはずだ。新しい国の姫様なのか、と思う。
その事に関してはターシャに聞こう、と思い俺は朝ごはんを食べに行った。
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朝ごはんを食べた後は学校の支度をし、寮を出ようとしたら、寮の門前にリリムとターシャがいた。
「おはよう。」
「おはようございますウィータ君。」
「ターシャ、リリムおはよう。」
俺らは3人で学校へ向かった。
「だけど、昨日約束なんてしてないのに、良く待ち合わせできたな。」
「ええ。昨日待ち合わせの約束をしたのよ。」
と、ターシャが言った。
「はいっ!ターシャさんは小言で「このままだと…」って言った後に約束してたですぅ!」
「えっ!?リリム!?」
「私は地獄耳なのですぅ、えっへん!」
なんとリリムは心も読める、耳もよく聞こえる凄いやつだった。魔力を使ってないため、単純に耳がいいだけだろう。
そう思うと俺は何か得意なことって言ったら魔力の扱いに才能が特化しているってことくらいだ。
魔力なしの才能はからっきし無い。その関係で昔から勉強は苦手だ。
「すごいなリリムは。」
「いえいえなのです〜。」
「そうだターシャ、ファラン・ミネルって知っているか?」
「え!?」
ターシャは驚いた顔で言った。
「本当にいたんだ…」
ターシャは独り言をブツブツ呟いてた。
「どうしたんだターシャ?」
「いや、ウィータってなんか凄い人だなって思っただけよ。」
「そうか?」
「ええ、とっても。はぁ…」
ターシャはため息をついた。
「どうしたんだ急にため息をついて。」
「いや、なんでもないわ。それでファラン・ミネルのことについて説明するわね。」
「よろしく頼む。」
「ファラン・ミネルはね、新興宗教国ミネルの法王ガラン・ミネルの一人娘なのよ。」
「新興宗教国?」
「ミネルのことも知らないのね…」
「すまん勉強は苦手なんだ。」
「そうなのね…まあいいわ。ミネルはおよそ300年前に出来た新興宗教の国よ。ちなみに新興宗教の神は女神様ぐらいしか分かってないわね。」
「名前も分からないのか?」
「ええ。その宗教、ミネル宗教に入らないと真名は分からないそうよ。」
「ターシャはなんか宗教とかは信じているのか?」
「いいえ。大陸全土の殆どは宗教なんて入ってないわよ。勿論共和国も例外じゃないわ。」
「そうなんだな。てっきり共和国も宗教があると思ったよ。」
「私は目の前に現れてるものしか信じないわ。まあ、都合のいい宗教っていうのは一応所属してるかも。」
「ターシャもか…うちもだよ…」
「まさかの一緒ね。リリムは?」
「は、はい!?」
急に話を振られたリリム。うん、癒される。
「そ、そうでしゅね私はつ、都合のいい宗教かな…」
「あら、リリムも一緒なのね!」
ターシャはリリムの手を掴んだ。
「ふ!え?え!?」
「やっぱり都合のいい宗教って最高だよね!だって自分の好きな宗教とか組み合わせられるし!西の国にあるクリスマス、東の国にあるお正月が来る時が最高だわ!」
ターシャはブンブンとリリムの手を振っていた。
リリムはもちろん、
「ふええ〜!?」
と言いながら半べそをかいている。うん可愛い。
「あ、ごめんリリム。」
ターシャはある程度経ってから手を離した。
リリムはもう
「ふ、ふええ…」
と元気の無い様子だった。あの興奮には朝からは耐えられないよな。
「だ、大丈夫かリリム?」
「う、ウィータ君、私は大丈夫れふ…」
「ターシャ…」
「い、以後気をつけるわよ!」
ターシャは高らかの胸を張り言った。
「それならよろしい。」
「うう、私のバカバカバカ〜」
とターシャは自分の頭を殴っていたのだった。
リリムは俺が肩を貸して登校を続けることにした。
「ご、ごめんなさいなのです…」
「いいや、気にするな。友達、だろ?」
「は、はいそうですね、友達ですね…うへへ。」
リリムの笑顔はとても眩しかった。
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「あー、えー。みんな席に着いたかー…着いたっと。えっと、これから授業を始める、て言いたいところなんだが、少し話がある。」
「なんだなんだ?」
生徒たちはザワザワとし始めた。
「あのー。入ってもらって大丈夫ですよー。」
と、適当にザイガ先生は扉の前にいる人を誘導した。
「あ、はい。」
扉の向こうから現れたのは、男性のエルフだった。
体は中肉中背のように見えるがぎっしりと筋肉がある。これは相当の手練、と思った。
「あーはい。皆さん初めまして。シルフィの国から派遣されたガゼルと言います。以後よろしく。」
生徒たちはもちろんぽかんとしていた。目の前の状況が理解出来ないのだ。
どうして突然エルフが現れどうしてさも当たり前のように接しているのか、と。
「あーこの反応…ザイガ先生詳しい説明生徒たちにしてないでしょ。」
「悪ぃ悪ぃめんどくさかったわ。」
「めんどくさかった、で済まされないことだって世の中にはあるんですよ全く…」
ガゼルは頭を抱えたが、すぐに元に戻った。
「まあ、この先生は先生しては0点だけど、騎士としては100点だから大丈夫だよ。」
「先生として0点ってなんだよガゼル」
「まあそれは置いといて、と。私がなんで派遣されたかと言うと、魔法の勉強ではなく魔術の勉強をしてもらいたいから来ました。」
「魔術とは昔の伝説の魔法のことですか?」
1人の生徒が言った。
「いいや、厳密に言うと魔法と似ているが、そもそもが違って、えっと、例えるなら卵の姿が魔術で、少し手を加えると魔法になる。」
「えっと、魔術は魔法より優れているんですか…?」
また1人の生徒が手を挙げ言った。
ガゼルは、
「まあ、魔法が低コストで弱いとすれば、魔術は重コストで強いってことだな。」
と言った。
卵の例えなんだったんだよ、と突っ込みたくなったが、今の説明に間違いはない。
ラファはきちんと教育をしていたようだった。
えっへん!という声が聞こえたが多分気の所為だろう。
「まあ、俺はこれからその魔術を教えることになった。多分3年間一緒だから、みんな一緒に頑張ってこうぜ。」
「は、はぁ…」
「ガーゼール!説明ありがとよ〜♪」
「ええい、離れろ筋肉ダルマ!暑いわ!」
「ああん!?誰が筋肉ダルマだって〜」
「い、痛い痛い、や、やめろぉ!」
「なら俺様に謝れや!おい!」
「す、すいませんでしたはなしてくだいおねがいします」
「それならよし!」
ザイガ先生はガゼルが謝ったらすぐ話した。
ガゼルは向こうで咳をしている。本当に苦しかったんだな。
「って事で、みんなこれからガゼルと仲良くして言ってね〜♪それじゃ1時限目が始まるな、それじゃあ♪」
ザイガ先生はこう言い残して教室から出てしまった。
「ま、まあ1時限目は俺だから、別に大丈夫だよ。」
と、ガゼルは立ち上がりながら言った。本当に大丈夫なのか…
「ま、とりあえず移動な。庭に出ろ。」
俺達は庭に向かった。
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「みんな外に出たか〜?」
「は、はい…」
「よし、ひ、ふ、み…みんないるな。」
「あの、何をするんでしょうか?」
「ああ、口で説明するより見て説明した方が早いという事で。」
ガゼルは懐から長さ30センチの杖を出した。
「んじゃ、唱えるぞ。」
そう言うとガゼルは目を閉じた。
「はぁ、古より伝わりし風の妖精よ、今こそ我に力を授けたまえ…そよ風達の遊び!!」
するとガゼルの周りからどこからともなく風が吹いてきた。
まるでそよ風達が遊んでいるようなここにのいい風だった。
「ふぅ、まあ、これが魔術だ。魔法との違いが分かったやつはいるか?」
俺は手を挙げた。
「お前か、言ってみろ。」
「はい。魔法と違ったのは魔力の集め方が違いました。魔法は魔力を直接集めて放つのですが、魔術は魔力を流れるようにして集め、そのため魔法より多く集められ、また妖精の力を借りて魔法よりより強力な威力を出すことが出来る…ですか。」
「はぁ、正解だよ。彼の言った通りだよ。流石だね。君、名前は?」
「ウィータです。」
「そうか。ウィータか。覚えておく。」
周りの視線は俺に向かっていた。う、うう恥ずかしい。
「す、すごいわねウィータ…」
「す、すごしゅぎでしゅ…」
リリムとターシャは苦笑いを浮かべながら言ってた。
まあ、魔術全盛期の時代に生きていたんだから、魔法との区別はつけられて当然なわけだ。
だから物知りみたいな目線でみんな俺を見ないでくれ。馬鹿がバレたら俺の学園生活終わるぞ。
まあ、必死に勉強すれば大丈夫か…
そう考えているとガゼルは、
「よし、次にお前たちにさっき俺が使ったのをやってもらおう。」
1秒
2秒
3秒後
「「「「ぇぇぇぇ!?!?」」」」
クラスのみんなはいきなり魔術をやる事になったのだ。
は、春休みの勉強どうしよ…w




