王女の警護⑦
イアル校長先生にこめかみをグリグリやられた俺は、頭を手で抑えていた。
「いで、ててて…」
「私に変なこと思うからですよ〜」
と俺はこめかみをやられて脳が揺れている感覚に陥っていた。うっ、吐きそう…
「ウィータ…」
とファルコンですら哀れみの目で俺を見ていた。やめろ、俺を哀れみの目で見ないでくれ…
「う、ウィータ君、大丈夫…?」
とラナ先輩は心配そうにしていた。
慈愛の目で見つめていてもう天使にしか見えなかった。天使だな。
「…ぷっ……」
と少し向こうで身体を震わせながら笑っていたイデルマ王女がいた。ぶん殴りたい。
「そ、それで校長先生はイデルマ王女様と仲良しだったのですね。」
とラナ先輩がイアル校長先生に言ってくれた。あっちに目が映ったのは助かる。
い、今の内に平衡感覚を取り戻さなくては…
昔の世界にもやはり平衡感覚を削ぎとることは有効な手段だとされていた。
平衡感覚を削がれている時は魔力の流れが一時的によくわからなくなるからだ。
最強の騎士の俺だって人間だからもちろん例外ではない。
確実に食らってしまう。昔の戦いでは「平衡感覚を崩すのは戦いを制す」とまでと言われたほどだ。
今はどれほど使われているか分からないが。
俺が平衡感覚を治している内にあっちはあっちで盛り上がっていた。
「へぇ、王都に来た邪龍を倒した時に仲良くなられたのですね。」
「ええ。わたしがあと一歩で邪龍のブレスに当たって死にそうな時に、ロリータ服のイアルちゃんがやってきてね…」
「ちょっとやめてよイデルマちゃん〜それはもう3年前の話でしょ〜。ま、まあ、私邪龍討伐をギルドで任されてて何処に邪龍が行くって聞いてまさか王城とは思わなかったわよ。もう王城の壁を垂直走りで急いだわ。そしたらもうブレス撃つ直前で…あの時ほどヒヤヒヤしたこと無かったわ。」
「それでも勝ったのですか?」
「それは勿論イアルちゃんの圧勝です!まさか1発で仕留めるとは思わなかったですけれど…」
「あれより強いモンスターと戦ってきたからね。このくらい余裕よ〜」
と女子トーク(?)を繰り広げていた。
ファルコンは棒のようになっていた。
話に入れないことを悟ったような顔をして静止している。頑張れファルコン…耐えるんだ、耐えるんだ。
▲△▲△▲
一通り女子トーク(?)が終わったところで、
「それではキ・マラの町を案内します。」
とイアル校長先生がさっきとは打って変わって先生モードになっていた。
その後一通りキ・マラの町を巡った。
いつも俺達が見ている場所や、俺が見た事もない場所を巡ってくれた。
まあまあ広かったことから一応キ・マラの町がこの自治区の中で1番の場所だということが分かった。
そして一通り巡り終わった。
「短い間でしたが、警護お疲れ様でした。」
とイデルマ王女。
「いえいえ、私たちも貴重な経験ありがとうございます。」
とラナ先輩。
「俺もいい経験が出来たと思うぜ。まあ、夜中のことは抜きとしてな。」
とファルコン。
「夜中のことって!?何かしたのファルコン君!?」
とイアル校長先生はファルコンの裾を掴んだ。
「いや、俺は手なんて出してねぇ〜!寧ろこっちの王じょ…」
と冷たい視線がファルコンに当たっていた。
ファルコンはそのまま、
「イデルマちゃんに何したの?何したの?」
とやられている。
「イデルマ王女様、私も貴重な体験をありがとうございます。これから強くなって、いつの日かまた王女様の警護をしたいですね。」
と俺。
「皆さんの成長を私は応援しますね!」
と満面の笑みでイデルマ王女は言ってきた。不覚にもキュンとした。
そしてイデルマ王女は馬車に乗り込み、王都へ向かったのだった。
▲△▲△▲
「どうでしたか、イデルマ王女様。」
とガリエーが言う。
「ええ、まあ、とっても良かったわ。」
「しかし、あの私ですらウィータとやらの力のそこが見抜けませんでした。」
「ええ、そうね。よほど強さを隠していると見るわ。」
今回ここに来たの目的は、自治区や町の人達の力を見定めること。
この世界は既に少しづつ何かに侵攻されている。
今王都から各場所に兵士や騎士は連れていくことが難しい。
だから力を見定め、力が弱いところには騎士1人や兵士を1師団送ったりするが、キ・マラ自治区には送らないでいいという結論に至った。
ウィータ…か。
「まさか王宮騎士団隊長である私ですら勝てる自信はありませんでしたけどね。あの二人なら勝てますが。」
とガリエーはため息をつけながら言った。
ガリエーは王都最強の騎士。言ってしまえばこの国最強の騎士。
最強の騎士ってものは強いものに近づけば近づくほど自分たちの強さの程度がわかるようになる。
「ガリエーならあの化け物にあの化け物に何秒戦ってられる?」
と私は聞いてみた。
「持って1秒でしょう。あんなのに勝てる自信なんてありませんよ。」
笑いながら言うが、実際はとても悔しいのだろう。
この国最強の騎士は自分ではないというのがわかったのだから。
「しかし、これでまた目標が出来ましたよ。」
「そうね、それは良かったわ。」
私は化け物を見てこう思った。
彼なら、この世界の災厄に勝てるのではないかと。
次から一応新章(?)予定




